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2026.02.12

総死亡率が一番少ないのは血圧160の人、認知症が一番少ないのはなんと血圧185の人だった【医学常識のウソ④】

2025年、製薬企業との利益相反の医師が多い日本高血圧学会が血圧の治療目標値を“年齢に関係なく”「130/80mmHg未満」に下げると発表した。これにより高血圧との診断を受け、薬を飲む人の激増が予想される。本当にそれでいいのか。“医学常識のウソ”に鋭く切りこんだすべての国民必読の対談、4回目。【他の記事はコチラ】

和田秀樹
和田秀樹/Hideki Wada
精神科医・幸齢党党首。1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業後、同大附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー等を経て、和田秀樹こころと体のクリニック院長に。当対談連載をまとめた『80歳の壁を超えた人たち』をはじめ、『80歳の壁』『幸齢党宣言』など著書多数。

健康診断の弊害

和田 僕は健康診断に問題があると思っていて。

大櫛 やっぱり。私もです。欧米では健康診断なんてない。国民に対して一律の検査をして異常を見つけることは、一部の効果もあるけども、病気の罹患率と死亡率の低下にはならず、医療費高騰や薬害など副作用の方が大きい、という結果になりました。

和田 いらない治療、危険な治療に誘導することになるし、国民に健康不安も与えます。

大櫛 英国、フランス、ドイツ、カナダ、オーストラリアなど10ヶ国以上で健診の効果を検討した結果、効果より副作用のほうが大きいと、健診をやめた国が多いんです。

和田 血圧だって健診で計れば高めに出ますからね。

大櫛 はい。健診や医療機関で血圧を測ると、普段より高くなる人が多いんです。この現象は「白衣高血圧」と言われています。緊張して一時的に血圧が上がるだけなのですが、健診ではそれを「高血圧」と判定する。これは問題でしょう。

和田 2025年の日本高血圧学会の診断基準は診察室血圧で「130/80未満」でしたよね。

大櫛 そうです。

和田 僕は患者さんに「病院で測ると血圧は普段より10くらい上がる」と言っています。血圧が高いと患者さんは心配するからそう言って安心させます。

大櫛 いい先生ですね。ところが今回の基準は診察室血圧で「130/80未満」です。

和田 普段「120/70」くらいの人も高血圧に判定される可能性が出てきてしまう。

大櫛 日本高血圧学会は「診察室血圧」と「家庭血圧」の基準値を分けて示した。家庭血圧は「125/75未満」としました。だけどね、家庭での血圧測定って難しいんですよ。不正確な場合が多い。市販の血圧計の約80%は精度が不確かなまま販売されているという調査報告があるほどです。

和田 だから医療機関で測る。するとそんなに高くない人まで高血圧にされてしまう。

大櫛 なにがなんでも高血圧の患者を増やすんだという狙いが透けて見えるようです。

和田 めちゃくちゃですよね。

大櫛教授
大櫛陽一/Yoichi Ogushi
東海大学名誉教授・大櫛医学情報研究所所長。1947年徳島市生まれ。大阪大学大学院工学研究科修了。大阪府立の複数病院で研究をした後、1988年より東海大学医学部教授。2012年より現職。著書に『高血圧の9割は正常です』『長生きしたければ高血圧のウソに気づきなさい』『「血圧147」で薬は飲むな』など著書多数。

百寿者の研究に学ぶ

和田 百寿者の研究は、慶応大学が行った有名な研究ですね。

大櫛 そうです。私は総合健診医学会の70万人の健診データを分析していたんですが、そこでは80歳以上のデータが集まりにくいんです。

和田 80歳を超えるとなかなか健診は受けませんからね。

大櫛 はい。健診を受けないし、もともとの人口も少ない。だから一応データはあるんだけど、統計解析して意味を持つほどのデータにはなりにくい。ところが慶應の先生たちが100歳以上の長生きな人のデータを集めてくれたんです。一人一人訪問して丹念に聞き取り調査をした非常に貴重なデータです。

和田 素晴らしい研究ですよ。

大櫛 百寿者研究の中に血圧と自立度に関するデータがありましてね。血圧を4段階に分けて、それぞれの自立度を比較するんです。すると血圧の高い人ほど点数が高い。自分でできることが多いんです。逆に血圧が低い人は自立度も低い。明確にデータに現れているんです。

和田 やっぱり血圧が元気の素ということですよね。

大櫛 それはもう間違いないでしょうね。具体的な血圧で言うと、上の血圧が90~124の群は自立度35。125~139の群は自立度43。140~155の群は自立度48。156~220の群は自立度57。低い群と高い群ではまるで違いますからね。

和田 100歳以上の人だけでなく、他の高齢者にも当てはまります。自立度はもう少し高くなるのかもしれないけど。

大櫛 実はね、アメリカの医師会雑誌でも同じような調査が報告されています。調査対象者の平均年齢は74.5歳ですが、1万7000人のデータが集まりました。

和田 興味深いですね。

大櫛 やはりアメリカでも、血圧の高い人のほうが死亡率は低い。認知症になる人も少ない、という結果が出ました。

和田 なるほど。

大櫛 総死亡率が一番少ないのは血圧が160前後の人たちでした。だけど認知症が一番少ないのはなんと185前後の人たちだったんですよ。これは2022年に発表された調査報告です。

和田 高齢者医療に長年従事してきた僕の実感とも一致しています。薬で血圧を大きく下げている人は、やはり認知症にもなりやすい。元気がなく自立生活も困難になりやすいんです。

日本の医学界は間違いを正そうとしない

大櫛 アメリカの医師がおもしろいのは、実際に薬を減らしてみたことです。

和田 血圧の高い人のほうが元気だと統計が示しているなら、わざわざ薬で下げる必要はない、という発想をする。

大櫛 アメリカには退役軍人のための病院が多数あるんです。そこで降圧薬を飲んでいる1万2000人に対し、「継続して飲む群」と「薬を減らす群」に分けて追跡調査をしました。すると薬を減らした群のほうが、認知機能が低下しにくいことがわかりました。これは2024年のデータです。

和田 日本にもね、柔軟な病院はあるんですよ。1990年代半ばの話ですが、青梅慶友病院という長期入院の老人病院がありましてね。

大櫛 有名な認知症の病院ですね。

和田 そうです。当時「入院医療の定額制」というものができましてね。それ以前は「出来高払い」だったので、薬をたくさん使うほど病院は儲かったんです。でも定額制なら薬を使わないほうが儲かる。というわけで、この病院では薬を3分の1に減らしたんです。

大櫛 なるほど。

和田 これだけ聞くと悪徳病院のように思えるでしょ(笑)。でも薬を減らしたら、寝たきりの人が歩きだしたんです。

大櫛 そうなるでしょうね。

和田 青梅慶友病院の医院長はそれを講演会などで話すんです。薬を減らすと元気になる人が多いですよと。そしたら薬を減らす老人病院が増えて、日本中で寝たきりの人が歩きだすみたいな状況が見られたんです。

大櫛 柔軟に対応したいい例ですよね。

和田 ところがね、そういう事実があるにもかかわらず、それを基に研究をしようという大学病院の医者がいないんですよ。

大櫛 少ないでしょうね。だけど浜松市では私の知ってる菅野剛史先生(元浜松医科大学副学長)が顧問をされていましてね。高齢者の施設に入るときはすべての薬を一回やめる、ということを基本にしています。それで症状が出て必要と認めたら薬を戻していく。薬を見直す医療をしているんです。

和田 そういう人が増えてくるといいですけどね。医師は一度、虚心坦懐に統計データと向き合ってみたらいいと思うんですよ。それこそ大櫛先生の研究も百寿者の研究も素晴らしい統計データがたくさんあるんだから。学ばないのは損だと思いますけどね。

※5回目に続く

和田秀樹と大櫛教授

TEXT=山城稔

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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