「夢と金」の関係に真正面から向き合い、数々の常識を覆してきた西野亮廣氏。変わり続ける時代のなかで、変わらずに夢を追い続けるために必要な技術と覚悟を記したビジネス書最新刊『北極星 僕たちはどう働くか』が話題だ。後編では書籍発刊の際にも活用された事業投資型クラウドファンディングの詳細とともに、投資してもらうためには結局、何が一番問われるのかについて生の声を聞いた。(前編はコチラ)

手法と覚悟の両方を説く『北極星』から学ぶこと
西野氏は、すでに2つのプロジェクトで事業投資型クラウドファンディング(以下CF)による資金調達を果たしている。そのひとつは、2026年3月に発売したビジネス書『北極星 僕たちはどう働くか』。これまで『革命のファンファーレ』『夢と金』などのビジネス書で、自身のビジネスに関する思想や手法を公開してきた西野氏が、「お金」「心」「販売・集客」にまつわる現在の知見を余すことなく凝縮した、決定版というべき一冊だ。初版10万部の制作・宣伝費用1億2000万円を調達した。
「いろいろな人が携わって本ができるのに、出版社だけに売れ残りのリスクが偏っている現状をどうにかしたかったんです。そこで、CFという仕組みを使い、出資者とリスクを分担したらどうだろうかと考えました」
リターンは向こう5年間の印税による利益の分配。「出版革命」ともいえるスキームはもとより、〈僕がここで本に書かなかったら、日本は、重大な選択肢を失ったまま、この先、5年10年過ごすことになる〉との想いで記された実践的なノウハウが話題を呼んでいる。もうひとつ、『北極星』以前にも、西野氏は事業投資型CFによって業界の構造的な課題に対する打開策を示している。そこには、自ら話題をつくり出すことで、事業投資型CFの存在を一気に世の中へと知らしめる意図もあった。
その事例こそが、「映画プペル」シリーズの2作目となる『映画えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』だ。国内の映画製作は、複数の出資企業が製作委員会を組織し、リスクとリターンを分散させることが一般的。しかし、委員会に対する配慮によるクリエイティブへの影響や、クリエイターへのリターンの目減りといった懸念が指摘されてきた。そこで西野氏は、製作費の約半分を事業投資型CFで募り、わずか34時間で4億8000万円を調達。これは、国内における事業投資型CFで過去最高額である。
「なぜこんな金額を集められたのか、自分でも知っておきたくて、投資してくださった何名かに聞いて回ったんです。そこである投資家の方から言われたのは、『これまでも西野は、お金の使い方を徹底的に透明化してきたから、信頼が置ける』ということです。それと、『西野だったら、最後はなんとかするだろう』と。実際に、今回のリターンは、劇場の興収だけではなく、『プペル』というIPを用いた事業の売上に応じて、向こう10年間にわたり分配する、という形にしています。時間をかけてでも帳尻を合わせようという僕の覚悟が、投資をしてくださったみなさんに伝わったのだと思います」

1980年兵庫県生まれ。芸人・童話作家。絵本では『Dr.インクの星空キネマ』『えんとつ町のプペル』ビジネス書では『革命のファンファーレ』『夢と金』『北極星 僕たちはどう働くか』など、ヒット作多数。原作・脚本・製作総指揮を務めた『映画 えんとつ町のプペル』(2020)は、日本アカデミー賞をはじめ、多数の映画賞を受賞。ブロードウェイでは、2025年に舞台『OTHELLO(オセロ)』 の共同プロデューサーを務め、週間興行成績3週連続1位を記録。『キャッツ 〜THE JELLICLE BALL〜』にも共同プロデューサーとして参画し、第79回トニー賞3部門を受賞。2026年3月に最新作『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』が日本全国で公開された。
長期的なリターンへ神様に与えられた課題
こうして公開された『映画 えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』だが、初動の観客動員数は前作を大きく下回った。「一作目が国内総動員数196万人のヒット作となっただけに、世間からは『大コケ』『爆死』なんて言われて。それは正直、むかつきましたよ(笑)。『なんで分かってくれないんだ!』『こんなにいい作品なんだから、見なさいよ!』って」
しかし、その苛立ちも「3日もすれば終わり」。西野氏はもともと決まっていた舞台挨拶に加え、自身が作品を鑑賞する劇場と時間を告知しての「同伴鑑賞」など、全国を奔走しながらPR。その結果、封切り後しばらく経っても、各地の二番館での上映や、地方の施設での上映イベント、観客が声を出しながら作品を楽しむ応援上映が催されるほか、「復活上映」を行う映画館も登場するなど、息の長い広がりを見せている。
「初動が不振と聞いて、神様から課題を与えられている気がしたんですよ。前作では、コロナ禍での封切りという大きな壁があったんですけれど、今回は公開まで順調すぎるくらいに順調で。それがいざ封切られたら出足の不調。ああ、これは、新しい謎解きだな、と。『封切り時の評判次第で成否が決まる、博打のような日本の映画興行をなんとかしろ』という謎解きなんだなと。やったろうやないか、ですよ」
その「謎解き」に答えを見つけることは、「最後はなんとかするだろう」という投資家からの期待に応えることにつながる。それは同時に、西野氏自身が、『プペル』を愛され続けるIPに育てるための長期投資を行うことになるのだという。
「ある子どもが、『プペル』を人生で初めてのお気に入りキャラクターにしてくれれば、将来的に、その子を巡るIPの競争相手は不在になる。重要なのは、どのIPよりも先に『プペル』をお気に入りキャラクターという"ポケット"に入れてもらうことです。だから、何かのタイミングで子どもたちに作品を見てもらえるよう、日本全国、どこかの映画館や市民ホールなんかで、いつでも自律的に『プペル』が上映され続けている状態をつくろうとしているところです。目先の利益は狙わずに、ということです」

「僕がここで本に書かなかったら、日本は、重大な選択肢を失ったまま、この先、5年10年過ごすことになる。」
――24万部突破のベストセラー『夢と金』から3年の間に、日本人の誰も経験していないビッグスケールの挑戦から得た知見を、すべて本書に詰めこんだ!西野亮廣のビジネス書史上、ブッちぎりの最高傑作。(幻冬舎刊、1,980円)
自分が何者かを語りデカい夢を見せろ
西野氏は、こうして出資者からの期待を背負いながら、自らのクリエイティビティを追求してきた。それと同時に、ベンチャー企業への投資や、年間10社以上に対するコンサルなど、さらなる成長を図る企業へのサポートも行ってきた。その経験から言えるのは、「投資という形で応援を得るには、最後は『人』がものを言う」ということだ。
「そのビジネスモデルが成功するかどうかなんて、結局のところ誰にも分からない。だったら、こいつならやってくれそうだ、と思わせてほしい。そのために語るべきは、戦略ではなく『あなた』自身です。世界をめざすならなおさら。ブロードウェイと日本の決定的な投資文化の違いも、そこにありました。向こうの投資家には、僕の作品ではなく、西野亮廣という『人』だけを見て、出資するかどうかを決める人もいました。やっぱり、出資する人間は、デカい夢を見せてほしいんですよ」
だからこそ、自分という「人」を売り込むことに、どん欲であれ。西野氏はそう提言する。
「やりたいことを実現するためならば、"サイコパス"にでも何にでもなってくださいよ、と。嫌われたくない。こんな風に見られたら嫌だ。そんな自己保身は捨てて、可能性をつかむために、ひたすら売り込み続ける。それが、自分の目標に誠実であるということだと思います」
西野亮廣「エンタメ×お金」の軌跡
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