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2026.07.10

見城徹×藤田晋「経営にも人生にも、近道なんてものはない」圧倒的な結果をだし続けるふたりのファイナンス論

GOETHEとファイナンスプラットフォーム「FINCHI」がタッグを組み、新メディア「GOETHE Finance powered by FINCHI」を創設。ビジネス界で圧倒的な実績を持つリーダーたちは、M&Aや投資などの「ファイナンス」をどのように捉え、活用しているのか。その最前線の思考に迫る記事の連載を通じて、日本における「ファイナンス」をカルチャーとして定着させていく。今回は、見城徹、藤田晋の特別対談の後編。共著2冊の執筆から約15年。その後も交流を重ね、各領域で圧倒的な結果をだし続けているふたりが、現在の仕事への矜持、投資への考え方、経営者に必要な哲学について、改めて語り合った。(前編はこちら

ファイナンスについて語る見城 徹と藤田 晋
この企画の写真は、遠隔シャッターを用いてふたりが自分たちで撮影している。今も読み継がれるふたりの共著に、『憂鬱でなければ仕事じゃない』(講談社+α文庫)、『絶望しきって死ぬために、今を熱狂して生きろ』(講談社+α文庫)がある。

投資の判断基準は「分野」と「人」にあり

見城 投資やM&Aの話は、自分のところにも毎日話が来るけど、藤田の場合は僕の比じゃないはず。特にスタートアップからはすごいんじゃない?

藤田 そうですね。数としてはとても多いと思います。

見城 社内に投資専門の部隊がいるんだよね。

藤田 私が今関わっているのは、サイバーエージェントの投資事業本部である通称「藤田ファンド」と、子会社の「サイバーエージェント・キャピタル」のふたつです。

見城 どういった基準で投資の是非を判断するの?

藤田 大雑把に言えば「分野」と「人」ですね。伸びている分野でイケてる経営者がいれば、たいていはなんとかやってくれるという感覚があるんです。仮にひとつの事業で失敗しても、他で立ち直ろうとする。なので、私のなかではビジネスモデルの優先度は非常に低いんです。

見城 「分野」と「人」か。そこは自分も同じだね。

藤田 仮に「ものすごい出版社を作るので出資を」ということだと、分野自体の成長という意味では難しいじゃないですか。

見城 幻冬舎をつくった30年以上前でも、「絶対に失敗する」と言われていたからね。今の時代ならAIやロボット、医療といったところかな。僕もそういう話を聞くのが好きだね。ワクワクする未来があるじゃない。

――一方で、「人」には何を求めているのでしょうか。

藤田 経営者として優秀かどうかよりも、さっきもお話しした「イケてる」というニュアンスなんですが、これは言語化が難しいんです。例えば「みんなに応援される」とか、「話題性がある」というのもポイントにはなる。でもそれだけではなくて、本当に感覚的で。

見城 僕がいつも言っているのは「善良、真心、誠実、正直」、そして「謙虚と感謝」。どれも平凡な言葉だけれど、経営はもとより、生きるうえでの王道だと思っていること。だから相手からこのうちのふたつくらい、特に「善良さ」が垣間見えることがあれば、「この人のために」と思うきっかけにはなる。あとは相手の企業風土も大事。血液も細胞もまったく異なるような企業とは、そう簡単に一緒にはなれない。実際に自分も失敗したことがあるからね。

ファイナンスについて語る見城 徹
見城徹/Toru Kenjo
1950年静岡県生まれ。慶應義塾大学卒業。角川書店を経て、1993年に幻冬舎を設立。五木寛之『大河の一滴』、石原慎太郎『弟』をはじめ、数多のミリオンセラーを世に送りだし、「出版界の奇跡」と評されている。『編集者という病い』『たった一人の熱狂』他、自著のヒット作も。

投資がブランドをつくり、成功率を上げることも

――そうした基準で行った投資の成功率はどのくらいですか。

見城 もちろんうまくいかないものもあるけれども、思わず化けるものもあって、感覚としては7割くらいな気がするね。

藤田 私の場合は特に「藤田ファンド」での成功率は高いと思います。注目の起業家や会社へ投資ができているからかもしれません。投資も"ブランド”のような部分があって、例えば「見城さんが投資をした企業」となれば箔がつくわけですよ。

見城 いや、それこそ「藤田が投資した」となれば、周囲も一気に集まってくるでしょう。

藤田 確かにそれはあって、「藤田ファンド」から出資を受けた時点で注目が高まり、成功率が上がる要因にもなります。

見城 まあ、でも投資をしないことでの失敗もあるよね。とある企業から出資の相談を受けた時に、藤田に相談したら「やめておいたほうがいいですよ」と止められたことがあって。

藤田 その後一気に株価が上がって、それを根に持っているっていう話ですよね?

見城 そう(笑)。今でも金額まで覚えてるよ。

藤田 本気で見城さんのことを思って止めたんですよ(笑)。

――ファイナンスの流れとして、IPOの基準が厳しくなったこともあり、事業を売却して「EXITする」と言う経営者も増えています。

見城 「EXIT」という言葉だけ取りだすと違和感があるけど、事業が評価されて、さらに挑戦するための手段としては、正当性のある行為だと思いますよ。

藤田 私としては、M&Aで売却するという手法が受け入れられ始めたのは、とてもよい傾向だと思います。最近も元AKB48の小嶋陽菜さんの事業売却に対して、世の中的に「すごい」となりましたけれど、あれが「すごい」と認められるような国であってほしいです。

見城 あれはたいしたものだね。ただそれと、自分の会社や事業に熱狂しているのかどうかは、また別の話だとも思う。

藤田 そうですね。社長から会長になった私自身の今の目標は「承継後もさらにぐんぐん伸びる会社をつくること」。あくまで自分のスタンスですが、買って終わり、売って終わり、ではなく、今後も成長できる基盤もつくれて初めて、経営者としての成功だと思っています。

見城 藤田は本気で100年企業を目指しているからな。僕の場合は、僕がいなくなっても幻冬舎は残るけれども、まったく別の会社になると思っています。だってそこに僕はいないんだから、仕方がないんですよ。

ファイナンスについて語る藤田 晋
藤田晋/Susumu Fujita
1973年福井県生まれ。青山学院大学卒業後、インテリジェンス入社。1998年にサイバーエージェントを設立し、2000年に当時史上最年少26歳で東証マザーズ上場。現在は代表取締役会長として、コンテンツ開発の指揮を執る。近著に『勝負眼 「押し引き」を見極める思考と技術』がある。

たった一人の熱狂からしか素晴らしいものは生まれない

――最後に、まさに挑戦を始めたばかりの経営者たちへ、激励の言葉をお願いします。

見城 やっぱり「善良、真心、誠実、正直」、そして「謙虚と感謝」。これに尽きます。経営にも人生にも近道などなくて、これらをやり切れば道は拓ける。あとは自分の本のタイトルにもした『たった一人の熱狂』ですね。すべてのオリジナルなもの、素晴らしいものは、たった一人の熱狂から始まるんです。

藤田 私は、結局は自分がイケてるということを手を替え品を替え、証明するしかないと思っているので、諦めずに頑張ってほしいですね。

見城 "圧倒的努力”をしないまま諦めたらダメですよ。僕と藤田の本のタイトルにあるように『人は自分が期待するほど、自分を見ていてはくれないが、がっかりするほど見ていなくはない』んだから。

藤田 あの言葉は真理ですよね。文庫化する際に『絶望しきって死ぬために、今を熱狂して生きろ』というタイトルに変わりましたけど(笑)。

見城 単行本をだした直後に、間違ったな、と(笑)。タイトルを変えることは本にとって大きなこと。でも間違いを認めて、変えること、そして自らも変わっていくこともまた、経営者には必要なことですよ。

――見城徹×藤田晋のファイナンス対談、前編はこちら――

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――「サイバーエージェント」と「幻冬舎」は、ファイナンスプラットフォームFINCHIに資金提供者として登録しています。

COMPOSITION=江森康之

TEXT=日野 淳

PHOTOGRAPH=見城 徹、藤田 晋

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