GOETHEとファイナンスプラットフォーム「FINCHI」がタッグを組み、新メディア「GOETHE Finance powered by FINCHI」を創設。ビジネス界で圧倒的な実績を持つリーダーたちは、M&Aや投資などの「ファイナンス」をどのように捉え、活用しているのか。その最前線の思考に迫る連載を通じて、日本における「ファイナンス」をカルチャーとして定着させていく。今回は、公認会計士合格者占有率66.7%(令和7年度実績)と業界No.1を誇るCPA会計学院の代表・国見健介氏を取材。資格取得支援の先に目指すのは、日本経済を再起動させるための「会計インフラ」の構築だ。

数字を立体的に捉える、経営の伴走者へ
「日本の会計教育には、根深い構造的課題があるんです」と国見氏は語りだす。会計ファイナンスに関わる道を志す多くの人間が最初に触れるのは「簿記」、すなわち記帳のルールだ。
「借方・貸方といった仕訳から入る教育は、どうしても『作業』としてのイメージが先行し、ビジネスの本質的なダイナミズムを見えにくくしています」
国見氏は、会計スキルには「3つのレベル」があると考えている。第1段階は、証憑(しょうひょう)に基づいた仕訳。すなわち請求書や領収証を見て、複式簿記に借方・貸方などの記載を迷わずできるレベル。第2段階は、数字を追うだけでなく、それが意味する取引の構造を平面図としてイメージしながら処理できるレベルだ。そして彼が理想とする第3段階は、ビジネスの現場で起きている「立体的な動き」を数字に置き換えられるレベルである。
「請求書ひとつにも、その後ろにはさまざまな部署の多くの業務があり、さらにその業務の上には会社としての事業計画があります。例えば、ウェブマーケティングに関する請求書一枚にしても、それは単に取引先への支払を意味するだけではありません。
そこには事業計画の実現に向けてマーケティングの観点から必要な打ち手の検討がなされ、その結果、どんな広告を打ち、顧客にいかなる価値を届けることができたのか、というストーリーがあるのです」
ひとつの支払の元になった施策が、自社のブランディングや売上にどう貢献したのか、「実態を有機的に理解したうえで、数字を立体的に捉える必要があります」と国見氏は続ける。
「こうした『立体像』を理解してこそ、経営チームに対して数字のストーリーで未来を語ることのできる会計ファイナンス人材たり得る。そういう人材が、成長し続ける企業の経営には欠かせないと思っています。だからこそ私は、ただ資格試験に合格する人を増やすだけではなく、ここで学んだ人が社会に出て活躍する道筋をつくることも使命だと捉えています」

1978年東京都生まれ。CPAエクセレントパートナーズ代表取締役。慶應義塾大学在学中に公認会計士試験に合格。2001年にCPA会計学院を設立し、徹底した受講生支援により圧倒的な合格実績を築き上げる。現在は「人の可能性を広げ人生を豊かにする応援をします」というミッションのもと、学び・キャリア・人材交流を通じた生涯支援に取り組む。また、スポーツビジネスの支援など、会計ファイナンスの力を活かした社会変革にも精力的に取り組んでいる。
地位の均衡を打破。優れたCFOの経営者マインド
国見氏が直面しているのは「日本の公認会計士には、経営チームの一員になるという意識を持つ人が少ない」という現実。これはいったいなぜなのだろうか。
「日本の企業金融を振り返ると、高度成長期においての企業は、銀行からの融資を中心に置き、財務諸表を正確に作成し、監査を受ける仕組みさえ機能していれば、自ずと成長できたんです。そのなかで公認会計士は『経理と監査』に集中していればよかった。
しかし、この『経理と監査』に特化した構造が、現代においては日本企業の足枷になっていると私は考えています。
なぜなら、立体的に数字を捉えられることが重視され、経営に対する当事者意識を持つ高度なファイナンス人材を育成する環境や仕組みが構築されなかったからです」
その背景には、「日米の公認会計士試験制度の違いが生む『競争環境』の差もあると思われます」と国見氏。米国公認会計士(USCPA)はアメリカ本国を含む全世界で毎年7~8万人が受験し、うち1~2万人が合格しています。一方で、日本は合格率約7%、合格者数が1,600人程度という極めて狭き門。そのせいか、この「狭き門」を突破した瞬間に、ある種の安住に陥ってしまう人も少なくないという。
「私としては、経営者に『公認会計士は専門知識はあるけどね……』と言われるのが最も悔しいんですよね。そこには今お話しした理由などがあるにしろ、会計ファイナンス教育に携わる者としては現状を変えていきたいと思っています」
それゆえ国見氏は、会計ファイナンスを志す人材に対して、自らを「公認会計士」という職能以前に「経営チームの一員」と定義するマインドセットへの変換を求めている。
「優れたCFOは、たまたまバックグラウンドが会計ファイナンスであるだけで、その本質は経営者そのものです。攻めと守りのベストバランスを常に模索し、企業価値向上にコミットする。こうした人材が組織の序列において上位に位置し、経営を牽引できる文化を醸成することこそが、私たちの使命です」

志で未来を創る。真の会計プロの覚悟
国見氏が挑むのは、経営にコミットできる知識とスキルとモチベーションを持った会計ファイナンス人材、すなわち「真のCFO」たり得る人材を増やすことだ。
「この領域のプロフェッショナルがレベルアップすれば、日本中の組織の生産性を10〜20%は向上させられると確信しています。その実現に向けて弊社では、1,700本以上の会計実務やファイナンス実務などを学べる動画を無料開放する『CPAラーニング』や、CFOの活躍支援と次世代CFO育成を目的としたCFOコミュニティの運営など、会計ファイナンス人材を持続的に支援する体制作りを加速させています」
そして国見氏の活動は、資格試験の合格者のみならず、惜しくも届かなかった「ポテンシャル層」の支援にまで及ぶ。
「資格が必要な業務以外であれば、彼らの可能性は無限にあります。学んだ知識を武器に事業会社で覚悟を持って挑戦する人材を増やすことも、業界の裾野を広げるうえで不可欠。私たちはそうした人材と企業をつなげるサービスも行っています」
こうした地道な挑戦が、やがて組織や社会を動かす大きなうねりへと変わる。国見氏が見据えるのは、単なるキャリア支援の次元を超えた、日本経済の再起動だ 。
「明治維新や戦後復興を支えたリーダーたちが抱いていたような、20年、30年後の社会をよりよくしようという『志』。それを現代の会計ファイナンス人材に再び呼び起こしたいのです。
高度な専門性を、誰のために、何のために活かすのか。自らの職能を社会に還元しようとする覚悟こそが、停滞していると言われて久しい日本の経済状況を打ち破る鍵となるはずです」
国見氏の挑戦は、日本国内に留まらない。現在はインドやASEAN諸国への展開も見据え、グローバルな「会計ファイナンスのインフラ企業」を目指している。外貨を稼ぎ、アジア全体の発展に貢献する。その壮大なビジョンもまた、彼自身の「経営者としての志」の表れだ。
「会計ファイナンスの力が新たな価値と共創を生む。私たちは、その未来を支えるために不可欠なインフラであり続けます」
国見氏が描く未来図は、志を持つ「数字のプロ」たちが経営の羅針盤を手に舵を切った時、確かな現実へと変わるだろう。

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