英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第372回。今回は、血がたくさん出る作品が苦手なのに映画鑑賞会で『キル・ビル』を観ることになった時、友人が言った“Are you squeamish?”。

血や注射の針が苦手な私
先日、英語ペラペラの帰国子女宅で、映画鑑賞会をすることになりました。
愛蔵のジブリ映画DVDを持って彼女の部屋に行ったところ、彼女はサブスク動画サービスで、クエンティン・タランティーノの『キル・ビル Vol.1』の画面を用意して待っていました。
私は、血がたくさん出る映画が苦手です。これまで雑誌の仕事で、どうしても見ないといけないことはたくさんありました。そういう時、画面に刃物が登場した時点から薄目になるという方法でなんとか切り抜けてきました。せっかくの休日ですが、本日もこの薄目で乗り切らないとならないのでしょうか。
私がしょぼんとした顔をしていたのを見て、彼女はこう言いました。
Are you squeamish?
「アーユー スクイーミッシュ?」と聞こえました。
意味がわからないうえに、日本人同士なのに突然英語を使われたことに混乱しました。まぁ日頃から彼女は私の英語の先生をしてくれているので、新しい単語を教えるいい機会だと思ったのかもしれません。
Squeamish=血や生々しいものに弱い
英英辞典には「ダメだな、と自分が思ったものを見ると、気分が悪くなったりすること。極端にそれを恐れる人」というような説明がされています。転じて上記のような意味になるのだそうです。
また、単に「怖い」というより、苦手なものに「うっ」となってしまうような感覚で、こんなふうにも使えるそうです。
I’m squeamish about needles.
(針が刺さるところを想像すると、ゾワっとなる)
針とか先が尖ったものが苦手な人も多いと思います。私は血も苦手なのですが、まさにこのようなタイプです。小さい頃は病弱でよく点滴に繋がれていたにも関わらず、大人になって健康体になったら、突然に針がこわくなり、こんなふうに想像するだけでゾワっとするようになってしまいました。
ちなみに、ケンブリッジの英英辞典にはこのような例文もありました。
Many cooks are squeamish about putting live shellfish into boiling water.
(生きた貝などを熱湯に入れることに抵抗を感じる料理人は多い)
辞書のわりには独特な例文だと思いましたが、確かにさっきまで元気に砂を吐いていたアサリを熱湯の中で煮出す時、南無阿弥陀仏を唱えたい気持ちになります。料理に慣れている人でも、そういう罪悪感みたいなものを感じるのでしょうか。
「スクイーミッシュだからさ、キル・ビルはやめようよ」
そう言ったにも関わらず、彼女は再生ボタンを押しました。
実はタランティーノ作品は何度か見ていますし、血の出方がものすごく派手なので、もはや「生々しい」ともかけ離れていることは知っています。最初の流血シーンでは「うっ」となるものの、薄目にならず頑張って10分くらい見ていると、慣れてきます。結局最後はポップコーンを食べながら見ていました。私はsqueamishというのには大げさなのか、それともタランティーノがエンターテイナーとして偉大なのか、たぶん後者なのではないかなと、思った次第です。

