35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第186回。連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは……
「エッチ スケッチ ワンタッチ」みたいなもの!? 語呂がいいけど一体?
オンライン英会話の授業で先生にこんな宿題を出されました。
「3日間、どんなに短くてもいいから英語で日記を書くこと」。
日本語でも日記なんて書いたことがないし、宿題がでるなんて嫌だなと怠惰な私は思ってしまいました。
渋い顔をしている私を見て先生はこう言いました。
That would be easy-peasy.
最後のフレーズの意味がよくわからず、聞こえたまま、「イージー……? ピージー……?」とオウム返しをしたら笑われました。
easy-peasy(イージーピージー)=すごく簡単、超余裕
という意味のスラングでした。
子供相手に使うような言葉でもあり、「ほらこんなの簡単でしゅね〜」というような、簡単すぎて若干おちょくっているような意味合いもあるみたいです。先生は「日記なんて簡単だよ」と言いたかったのでしょう。
そういえば、語学学校で初級クラスにいた時も「主語がYouの時につくbe動詞はなんでしょう? areですね、はいイージーピージー!」と先生が簡単すぎる問題を出す際によく言っていたのを思い出しました。
日記を書くことは私にとっては母国語でもそんなに簡単なことではないため「全然easy-peasyではない。そもそもeasy-peasyのpeasyってなんだ」と、少しイラついて先生に返してしまいました。
先生いわく、peasyに特段意味はなく、「イージーピージー」でリズムがいいから、ということでした。
「ちなみに、easy-peasy lemon squeezyとも言うのよね。これそういえば一体なんなのかしら……」と先生も自分で言っておいて困惑し始めました。
「イージーピージー レモン スクイージー……?」
Squeezyは「絞り出せる」という意味の形容詞ですから「easy-peasy lemon squeezyは『絞り出せるレモンは簡単』」というような意味不明なフレーズになっています。そもそもなんでいきなりレモンが出てきたのかもわからず、二人で沈黙してしまいました。
後日、どうにも気になった先生が、easy-peasy lemon squeezyの語源を調べてみたそうです。これは1950年代に「easy with Sqezy(イージー ウィズ スクイジー)」というフレーズを掲げた食器用洗剤の広告からきているのではないか、と教えてくれました。
「このSqezy(スクイジー)というのが商品名で、『容器を絞って中の洗剤をお皿にかけておくだけ、あとは水で流せば洗い物終わり』というような洗剤みたい。Squeezy(スクイジー/絞り出せる)という意味の形容詞をもじった商品名なのね」
ということ。
この洗剤は別にレモンの香りはしなかったようで、どうしてレモンがくっついてきたのかはやはりよくわからないようでした。けれど確かにeasy with Sqezy(イージー ウィズ スクイジー)の語呂はいいし、「絞る」といったら「レモン」という連想も簡単なので、誰かしら言うようになったのかもしれません。
easy with Sqezy(イージー ウィズ スクイジー)→easy with lemon Sqezy(イージー ウィズ レモン スクイジー)→easy-peasy lemon squeezy(イージーピージー レモン スクイージー)と変化して、最後にeasy-peasy(イージーピージー)だけ残ったということでしょうか。なんだか意味がわからないけど、語呂がよくて時代を超えて残っている言葉なのかもしれません。
そういえば、幼い頃「エッチ スケッチ ワンタッチ」という謎のフレーズが流行っていたのを思い出しました。語呂が良くて小さい子が叫びやすいフレーズでした。しかもその応用編「エッチ スケッチ ワンタッチ お風呂に入ってアッチッチ」というのもあった気がします。CMでもなかったと思うので、結局あれがなんだったか定かではないのですが、easy-peasyもそういうことなんでしょうか。
けれどeasy-peasyには少なくとも「簡単」という意味があります。「エッチ スケッチ ワンタッチ」にはなんの意味もなくただひたすら「語呂がいい」だけで押し切っているフレーズなので、また違うのかもしれませんが……。
なんにせよ英語でも日本語でも、「語呂がいい」「言いやすい、なんだか言いたくなる」言葉は長く残るのだなとなんとなく感じたレッスンでした。
ちなみに、’90年代後半頃でしょうか、おそらくお酒のCMで「できたて飲むか、藤原紀香」というフレーズがあったのも朧げながら思い出しました。どなたか覚えている方はいらっしゃいますでしょうか……。
連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは……
35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者による英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。