35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。英語力ゼロレッスン「人のEnglishを笑うな」第83回!
みんな大好き!? チェリーの入った言葉
life isn’t a bowl of cherries
外国人の方に日本語を教えるレッスンをオンラインでしていたら、あるイギリス人生徒がレッスン中、吐き捨てるようにそう言いました。日本語がとても上手なのに、本音をいう時は英語になってしまう生徒さんです。
「人生は、サクランボがいっぱい入ったボウルではない?」と直訳してもまったく意味がわからなかったので、日本語レッスンにかこつけて、日本語で説明してもらいました。
life is a bowl of cherries=人生は素晴らしいことばかり
という意味のフレーズだそうで、主にそれを否定してネガティブな表現で使うことが多いとのこと。生徒さんが言った “life isn’t a bowl of cherries”は「人生、素晴らしいことばかりじゃないんだ」ということのようです。意味がわかった途端、「人生、薔薇色ってわけじゃないんだぜ」とキザな感じで言う渡部篤郎さんが頭に浮かびました。仲村トオルさんでもいいです。
ちなみにその生徒さんは、日本での就職が決まっていたのですが、このコロナ騒動で日本に渡れず、4ヵ月以上も仕事をスタートできない状態なのだそう。グレてそう言いたくなる気持ちもわかります。
サクランボがたくさん入ったボウルが「素晴らしいこと」に喩えられるなんて、英語圏の人はそんなにサクランボが好きなのかな? と思って調べてみると、確かにcherryを使った諺(ことわざ)、たくさんありました。
cherry on the cake=なにかを完璧にする最後の一手
もともと最高だったものに、さらにいい条件が加わって、パーフェクトになる、というニュアンスの言い方だそうです。いい意味でのダメ押し、というところでしょうか。
こんなふうに使われるようです。
Having all of you here for my birthday has really been wonderful, and this thoughtful gift is the cherry on the cake.
(みんなが私の誕生日に集まってくれてとても嬉しい。さらにこんなおもいやりのこもったプレゼントももらえるなんて!)
誕生日パーティに来てくれるだけでうれしいのに、プレゼントでさらに誕生日が完璧になった! といったシュチュエーションかと思われます。ケーキを作っていて、最後の仕上げにチェリーをのせ、美味しいケーキをさらにかわいく完璧にした、そんなイメージのフレーズでしょうか。
なるほど、cherryは常にポジティブな意味なのか、と思ってほかにもフレーズを探していたら、こちらに行きあたってしまいました。
pop someone's cherry
あまり覚えなくてもいいフレーズですが、「誰かのヴァージンを奪う」という意味でした。男性でも女性でも使えます。ここまで調べてきて“cherry”はとてもいい印象のワードだったのに、なぜいきなりこういう意味に!? とびっくりしましたが、ちょっと考えたら「あ、これがチェリーボーイの語源か……」と気がつきました。ちなみに「チェリーボーイ」は日本発祥の言葉として、英語の俗語辞典にのっていました。カタカナ言葉が逆輸入されていったかたちかと思われます。
Illustration=Norio