35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と日本人含め各国人からお叱りを受けつつ、覚えたフレーズの数々。下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。「人のEnglishを笑うな」第53回!
オーストラリア英語での強烈なジャブ
ロックダウン期間を少しでも有効に使わなければと、オンラインの語学学校に通い出しました。
私の英語の先生は2名のオーストラリア人で、これまで習ってきたイギリス英語とは若干の違いがありますが、私のような初心者~中級者のレベルで学ぶのは英語の基本ばかりなので、大きな違いに戸惑うことはあまりありません。まだ行ったことのないオーストラリアに思いを馳せながら、英語のレッスンを受けています。
しかしながら60代の女性教師は初日「私はオーストラリア人なので、イギリス英語はいったん忘れてくれ」と、意外に高圧的でした。おとなしく「はい、わかりました」と伝えたところ、彼女はこう言いました。
OK my happy little Vegemite.
さっぱり意味がわかりませんでした。いや、 「Vegemite」がなんのかは、イギリスに住んでいるので知っています。これはトーストに塗ったり、スープに入れて食べるオーストラリアの発酵食品で、イギリスでは同様の商品「Marmite」というものが売られています。見た目は真っ黒いジャムのようで、匂いが大変強烈、これを「美味しい」と言っている外国人を私は知りません。
その後、 “happy little Vegemite”がなんなのか、質問できるような自由な雰囲気もなくレッスンは終了し、後日別の30代オーストラリア人女性に聞いたところ、彼女は爆笑しながら教えてくれました。
happy little Vegemite = かわいい子、よい子
オーストラリアで主に「歳をとった人が子供に使う」ようで、この場合は「わかったわね、いい子ちゃん」というような意味だったのでしょう。
1950年代の「ベジマイト」のコマーシャルで子供たちが「happy little Vegemite」という歌を歌ったことから来ているフレーズだそうです。
37歳になっても「いい子ちゃん」と言われたことと同様、いきなり初日からオーストラリア独特の表現を教師がぶっ放してきたのには驚きました。
ちなみに「ベジマイト」はこの30代女性教師にとってもソウルフードだそうです。「独特の味だけど、くせになるの。未来に残したいオーストラリア文化の一つね」。強烈な匂い、見た目、中毒性のある発酵食品、これはおそらく日本でいう「納豆」的な位置づけなのだと思われます。
オーストラリアでは海に「Tバック」を持っていくのは当たり前!?
最初に「オーストラリア英語とイギリス英語の違いに戸惑いはない」と言いましたが、それでも、決定的に意味が違う単語に出会うことはあります。
60代のこの女性教師は、長い海岸がビル群のすぐ前にある風景が有名な、ゴールドコーストの出身です。彼女が昔働いていたオフィスからもすぐに海岸に行けたということで、こんなことを言っていました。
I used to bring thongs to the sea every day.(海に毎日thongsを持っていったものだわ)
イギリスにいるので、“thong”が何か知っています、単語自体は「紐状の」という意味ですが、「Tバック」のことも指す単語です。
以前、イギリスのGU的な格安洋品店「プライマーク」で下着を買おうと思ったら、なぜか “thong”しか見当たらず、
I’m looking for pants except thong(Tバック以外のパンツを探しているのですが)
と聞いたことがあるからです。ちなみに、アメリカ英語で「パンツ」は、いわゆる「ズボン」のことを指しますが、イギリス英語では「下着」を指します。
だから当然「毎日仕事帰りにTバックの水着を海に持って行っていたのか、大胆だな」と思いました。
しかしよく聞いてみると、
thongs = ビーチサンダル
オーストラリアでは、ビーチサンダルのことをこう言うのだそうです。複数形の「s」が入ってるのも納得です。先生は決して水着の種類まで教えてくれていたわけではなかったのです。
イギリス英語とアメリカ英語では「ビーチサンダル」のことを“Flip flops”と言うため、おそらくネイティブ同士でも混乱してしまう単語かと思われます。
今の世界の状況では、多くの語学学校が、リアル教室を閉めてオンラインに切り替えており、それはすなわち「どこにいても、海外の語学教室に通うことができる」ということです。ちなみにオーストラリアと日本の時差は1時間しかないので、「日本にいながらオーストラリア留学」はそんなに難しいことではないかと思います。リアル留学に比べて格段に費用も安いですし、時間をやりくりすればリモートワークの合間にも授業を受けられるかもしれません。私は日本に帰っても、ぜひこの方法で英語の勉強を続けていきたいと思っているので、しばらく「オーストラリア英語」も学んでいく予定です。
MOMOKO YASUI
ロンドン在住編集・ライター。1983年生まれ。男性ライフスタイル誌、美術誌、映画誌で計13年の編集職を経て2018年渡英。英語のプレスリリースを読むのに膨大な時間がかかって現在、仕事が非効率。
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