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2025.12.10

祝70歳・郷ひろみ「周りがインフルエンザでも、僕だけは大丈夫」元気の理由は、高いコレステロール値!?

60代は黄金期、70代は白金期と語っていた郷ひろみが、2025年10月18日、70歳を迎えた。デビューから54年、今なお輝きを放つ秘訣はどこにあるのか。老年医学の権威・和田秀樹との対談で見えてきたものとは?

郷ひろみ氏と和田秀樹氏

年齢は目安でしかない

去る2025年10月18・19日、70歳を記念して開催された武道館コンサートは、それぞれ異なるセットリストで全70曲を披露。自身のパフォーマンスはもちろん、演出にもいっさいの妥協をせず、常に最高の“郷ひろみ”を求め、全身全霊を尽くしたステージは、2日間で2万人の観客を沸かせた。昭和・平成・令和と日本芸能界を牽引してきた郷ひろみが、実年齢を超越しているのは誰の目にも明らかだ。そんなスーパースターと、35年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる精神科医、和田秀樹が対談。心身ともに若さを保つための条件や心構えについて語り合った。

郷ひろみ(以下郷) 初めまして、郷ひろみです。お目にかかれるのを楽しみにしていました。

和田秀樹(以下和田) こちらこそ、対談相手に指名いただき光栄です。よろしくお願いいたします。郷さん、70歳になられたんですよね、おめでとうございます。

 ありがとうございます。あっという間に70代を迎えてしまいました。僕自身は、あまり実感がないんですが(笑)。

和田 僕が日頃から主張し続けているのは、単に長生きすればよいわけではなく、実年齢よりも若々しくあるのが大事だということ。郷さんは、そのお手本のような人。「頑張れば郷さんのようにいつまでも若くいられる」と、同年代や少し下の世代にも希望を与えていると思います。

 ありがとうございます。でも、実は僕、年齢のことはあまり考えていないんです。

和田 それが素晴らしいんです。日本は人口の29.4%を65歳以上の人が占めている世界一の超高齢社会。経済や文化が停滞しているのはそのせいだという風潮がありますが、現代のシニア層は驚くほど若い。年齢はあまり関係ないんですよ。

 年齢はひとつの目安でしかない。僕はそう思っているんですよ。人それぞれ考え方も体力も置かれている状況も違うので、その考えを押しつけるつもりはありませんが。

和田 人は誰でもいずれ死を迎えます。シビアな言い方ですが、その確率は60歳より70歳、70歳より80歳と、年齢が上がるにつれて高まるもの。だからこそ、今日をいかに生きるか、今をどう充実させるかに目を向けてほしいと思います。

 同感です。先生のご著書を拝読し、おこがましいですが、僕と考え方が似ているところが多いなと感じました。過去があるからこそ今の自分があるので大事にしないと、とは思いますが、固執はしたくない。僕が見ているのは、“今”が80%、“将来”が20%。昔の楽曲を過去のものにしないためにも、今を輝くしかないと思っています。

和田 そのとおりです。年をとると、将来に不安を抱き、“死”に意識が向きがちですが、そんなことは考えず、今やりたいことをするのが一番。年をとればなおのこと、明日はわからないのですから。

ジャケットを広げる郷ひろみ氏と和田秀樹氏
郷ひろみ/Hiromi Go(左)
1955年福岡県生まれ。1972年、NHK大河ドラマで芸能界デビューし、同年8月、歌手デビュー。「お嫁サンバ」をはじめ数多くの楽曲をヒットさせ、50年以上にわたり、日本を代表するポップスシンガーとして君臨。『黄金の60代』などの著書もある。

和田秀樹/Hideki Wada(右)
精神科医・幸齢党党首。1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業後、同大附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー等を経て、和田秀樹こころと体のクリニック院長に。『80歳の壁』『幸齢党宣言』など著書多数。

信念を曲げないのは気丈な母の影響

和田 郷さんのお母様は92歳にして、非常にお元気だとか。

 元気すぎて、周りが困るほどです(笑)。母と妹とのマシンガントークはすさまじくて、僕は口をはさめず、じっと聞いているだけ。僕は両親の出身地である福岡県で生まれ、4歳の時に父の転勤で上京したんですが、母からは常に「九州の男」とけられて育ちました。芸能界デビューのきっかけになるオーディションの時も、会場を目の前に怖気づいて「やっぱりやめる」と言ったとたん、「アンタは九州の男なんだから、一度決めたことは最後までやり遂げなさい」と言って、頰をパーンとぶたれて(苦笑)。おかげで今、郷ひろみとして活動できているわけですから、母には感謝しています。

和田 そうした気丈さも、お母様の若さの秘訣でしょうね。

 僕は整理整頓をするのが好きなんですが、先日も、テーブルの上にあるものを片づけようとして、母から「九州の男がそんなことしちゃいかん!」と怒られたんですよ。「そんな時代じゃないよ」と言っても、母は絶対に曲げない。時代や周囲がどうであれ、自分の信念を貫く人なんですね。僕も、その影響は大きく受けていて、マイペースというか、他人からどう見られても、自分が正しいと判断したこと、心地よいと信じることを実行するタイプだと思います。

和田 「自分はこうしたい」という意欲があるのは、非常に大事なこと。年をとると、歩こうとしなければ歩けなくなるし、考えようと思わなければ頭が働かなくなる。若々しくいるためのポイントは、意欲・栄養・免疫力なんですよ。

コレステロール値が高いほうが元気でいられる

和田 郷さんは、免疫力も高いようにお見受けします。

 そうですね。周りがインフルエンザにかかっていても、僕だけは大丈夫ですから。ただ、毎年人間ドックで、「やせているわりにコレステロール値が高い」と指摘されていて。

和田 まったく気にする必要はありませんよ。コレステロールは免疫細胞や男性ホルモンの材料ですし、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンを脳に運ぶのにも関わっているので、シニア世代は、数値が少し高いほうが元気でいられるんです。そもそもコレステロールは食事によるものが1/3で、残り2/3は体内でつくられます。つまり、体質的なものが大きいということ。おそらくお母様もコレステロール値が高いんじゃないでしょうか。郷さんはお父様似だとおっしゃいますが、その若々しさは間違いなくお母様譲りだと思います。ところで、食事はしっかり摂っていますか?

 長年腹七分目を心がけているので、量はそれほど多くないかもしれません。

和田 タンパク質はしっかり摂ったほうがいいですよ。肌や髪、筋肉の材料になりますから。

 なるほど。勉強になります。

和田 睡眠はどのくらい?

 7、8時間です。いろいろ試した結果、夜10時に寝て朝6時に起きるのが、一番コンディションがいいと気づきました。夜中2時に寝て朝10時に起きるのでは、同じ8時間でも体調がまったく違うんですよ。

和田 体内時計に合っていて、とてもよいですね。運動も定期的にされているとか。

 月・水・金にパーソナルトレーニングを受けています。身体を鍛え始めたのは20代後半だったので、もう40年くらいになりますね。「郷ひろみでいるためにやっている」と思われているようですが、もともと身体を動かすのは好きなんです。ゴルフの時もカートには乗らず、歩くくらいです。

和田 素晴らしい。週3回以上身体を動かすのが理想で、特に歩くのはいいんですよ。

 気持ちがいいという理由で歩いていたのですが、健康にもプラスなんですね。ゴルフ場はアップダウンがあるので、足の裏でそれを感じるのも大事かなとは思っていましたが。

和田 足の裏に刺激を与えると脳も活性化しますからね。セロトニンの分泌を促進し、うつ予防にもなるんですよ。

あっという間に過ぎる=充実している証拠

和田 郷さんは、『黄金の60代』という本を書かれていますが、60代、いかがでしたか?

 僕は大器晩成型だと信じていて、「成功は60代から始まる、つまりこれからが黄金期だ」と思っていたのですが、あっという間でしたね。

和田 そう思えるのは、充実していた証拠ですね。

 60代に限りませんが、いくつになっても日々成長はあるなと感じていますね。時代に合った考え方や生き方があるので、若い人からもおおいに刺激を受けています。

和田 自分の人生に納得がいっておらず、それを周囲や時代のせいにするなど被害者意識が強い人は、周りの言葉に耳を貸せません。郷さんの心の柔軟性は、自分の信じた道を歩んできた、納得感のある生き方をしている人ならではでしょう。

 そういえば、20歳になる前に、「歌か踊り、どちらにするかはっきりして」とよく言われました。当時は歌とダンスは住み分けがされていたので。でも、僕は口では「はい」と言いながら、両方続けました。どちらもうまくなりたかったから。その結果、今の僕がある。そう考えると、信念を貫くことを教えてくれた母のおかげですね。本人からも、「ひろみは素晴らしいね。でも、そのアンタを産んだのは私だからね」と、しょっちゅう言われています(笑)。

和田 つくづくシニアのお手本のようなお母様です(笑)。

 先生のお話を参考に、貫くべきところは貫き、柔軟に変えるべきところは変えて、これからも今を輝かせる生き方をしていきたいと思います。

白金の70代 5箇条

1.意欲を持ち続ける
2.ゴルフは歩く
3.タンパク質を摂る
4.年齢のせいにしない
5.見栄を張る

背中合わせに座る郷ひろみ氏と和田秀樹氏

TEXT=村上早苗

PHOTOGRAPH=中村和孝

HAIR&MAKE-UP=猪狩友介(郷ひろみ氏)

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