PERSON

2026.03.15

一番重要なのは、患者の表情を見ること。マスク着用を義務付ける今の医療はよくない【大村崑×和田秀樹④】

「元気ハツラツ! オロナミンC」と、崑ちゃんの声が響くと撮影現場は一気に笑いで温まる。94歳にして、現役。笑いに涙の混じる筋金入りの“話芸”に和田秀樹も思わず感激~! 元気に長生きしている大先輩にその秘訣を聞く人気連載、大村崑4回目。【対談記事はコチラ

一番重要なのは、患者さんの表情を見ること。マスク着用を義務付ける今の医療はよくない【大村崑×和田秀樹④】

好きな人の物を持つ

大村 僕が元気でいられる理由は、もう一つあると思っていましてね。精神的なものなんだけど。僕は、お守りを大事にしてるんです。

和田 お守りってどんな?

大村 自分の好きな人の物を身に着ける。これが僕を守ってくれてると思っているんです。例えばこの腕輪は兵庫の門戸厄神のご住職が生前に愛用していたものです。

和田 ああ、門戸厄神。僕が通っていた塾がその近くにあったので知っています。有名なお寺ですね。

大村 はい。そこのご住職が僕を可愛がってくれましてね。お寺の階段を上がったところに提がっている大きな提灯にも「大村崑」と名前が入ってる。そのぐらい深いお付き合いをさせてもろうてね。

和田 そうなんですね。

大村 そのご住職が亡くなったとき、僕は檀家代表で弔辞を読んだんです。涙が止まらなくてね。寂しいし悔しいし。その帰りしなに、お嬢さんが僕を追っかけてきて、「これはお父さんが昨日まで着けていた物です。父は大村さんが大好きだったんで、もらってあげてください」と言ってくれたんですよ。それを持ってからね、僕はケガも病気もしなくなったのよ。不思議でしょ。

和田 なるほど。僕もわりとそういうことは信じていまして。

大村 そりゃよかった。精神科の先生に聞いてみたいと思ってたんですよ。

和田 守ってくれると信じるのがいいのかもしれませんね。

大村 ご住職の腕輪だけじゃなく、いろんなお守りを持ってます。この名刺入れには僕を生んでくれた母親の写真が入っています。僕が子どものころ、親父がチフスになって死に、家族は離散したんです。僕は親戚の伯父さんに預けられた。そのときから母を忘れないよう、この写真を持ち続けているんです。

和田 大村さん、お母さんとよく似てますね。

大村 似てるでしょ。ほかにもね、このポーチには嫁さんの写真を付けてます。薬や大事な物を入れるポーチなんだけど、やっぱり僕を守ってくれるのは嫁さんだからね。

和田 いい写真ですね。

大村 きれいでしょ、嫁さん。この小さな袋もお守りです。マネージャーのお母さんが作ってくれたの。僕より2つ年上の96歳。肺病を患ったりして体が弱かったんだけど僕と付き合ってから元気になってね。「お互い長生きしよう」って元気の競争をしてるんです。

和田 そういう心の支えって、やっぱり大事だと思うんです。

大村崑
大村崑/Kon Omura
1931年兵庫県生まれ。昭和30年代、テレビ軽演劇『やりくりアパート』『とんま天狗』などの主演を務め一世を風靡する。大塚製薬オロナミンCのCMで国民的タレントとして地位を確立。現在は講演活動に全国を駆け回りながら、映画にも出演。著書に『崑ちゃん90歳 今が一番、健康です!』など。

医師は心を支えていない

和田 日本人は医者の言うことを信じすぎていて、もはや宗教のようになっている。だけど医者は数値だけを見て、患者さんの不安になることばかり言うでしょ。それが患者の元気を奪っていることに気づかない。

大村 ホンマにそうやね。僕のマンションにも病院があって、曜日ごとに違うお医者さんが通ってくる。なかにはひどい人もいてね。僕が診察室に入っていくでしょ。でも顔を見ない。パソコンの画面見たり本を読みながら「どうしました?」って聞く。明らかに失礼でしょ、これ。

和田 失礼というかダメです。でもそういう医者が多い。

大村 僕の次に診察に入ったおばあさんがね、ぼろんちょに言われてるのが聞こえてきた。おばあさん、しょんぼりと診察室から出てきてね。可哀想でしょ。僕は頭に来たから受付の人に「どないなってんねん。ここの医者は」と言いに行った。そしたら「あの先生、評判悪いんですよ」と。埒が明かないからマンションの支配人に事情を話しにいきました。

和田 何か変わりましたか。

大村 そのお医者さん、いなくなりましてね、今は院長先生が診てくれます。やっぱりいいですよ。胸の音聞いて、背中トントンして、喉ちんこ見て。お医者さんに触れてもらうだけで気持ちが楽になるのよ。

和田 でしょうね。

大村 肺のレントゲンもね、前に撮った写真と今撮った写真を並べて「全然変化がないので心配ありませんよ」と言ってくれる。ふーっと楽になってね。

和田 本来はそれが一番大事なんですよ。患者さんを元気にするのが医者の仕事ですから。なのに「薬飲まないと死にますよ」と脅したり、この数値じゃ長生きできないと不安にしたり、そういう医者が多いんです。

大村 そうそう。

和田 僕はあんまり薬が好きじゃないんですが、仮に薬を出すときでも「これ飲まないとダメですよ」みたいな言い方はしません。「これ飲んでたら長生きできるし大丈夫だから」と安心する言い方をしますね。

大村 いい先生やね。

和田 僕らの頃の医学部は患者さんとの接し方みたいなものを教えてもらってたんです。だけど今の若い医者は全然教えてもらっていないみたいです。医学の世界は、まず教育を変えるべきだと僕は思っています。

和田秀樹/Hideki Wada
精神科医・幸齢党党首。1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業後、同大附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー等を経て、和田秀樹こころと体のクリニック院長に。当対談連載をまとめた『80歳の壁を超えた人たち』をはじめ、『80歳の壁』『幸齢党宣言』など著書多数。

教わるのではなく学ぶ

大村 その通りやね。だけど本人に学ぶ気がないとどうにもならん。芸人も同じでね。先輩に教わるというより、先輩の技術を盗んで、自分の体の中に入れて商売するわけです。僕らは藤山寛美の芝居を見たり、いろんな人の芝居を見て、真似て、自分のものにした。

和田 教わるのではなく学ぶんですね。

大村 そう。今僕が森繫久彌や藤山寛美の芝居をしても、「それは人の真似やろ」と言う人は誰もいない。本人、死んじゃってますからね。それにたとえ先輩の技術を盗んでも、大村崑がやれば色が変わり、大村崑の芝居になるんですよ。

和田 いい話ですね。

大村 芸人はみんな先輩の芸を盗んで持ってますよ。だからお医者さんでもどんな商売でも、先輩の技を盗んで自分のものにしたらええんですよ。

和田 おっしゃる通りです。今の医者の悪いところは電子カルテばかり見て、患者さんのことを見ない。患者さんを元気にしている医者もいるんですが、そのやり方を見ようともしない。

大村 学ぶ気がないんやね。

和田 もちろん向上心のある医者もいるんですよ。だけどコロナになってから、どこの病院もみんなマスクをするでしょ。医者もするし、患者もマスクをする。そうなると顔が見えないんです。僕は精神科医ですが、一番重要なのは、患者さんの表情を見ることです。それと、こっちがまずニコッとして、患者さんを安心させてあげることです。マスクをしてると、この両方ができません。

大村 そりゃ困りますね。

和田 はい。だから僕はマスクをしないし、患者さんにも外すように言います。マスク着用を義務付ける今の医療は、医者のためにも患者さんのためにもよくないと思いますけどね。

※5回目に続く

TEXT=山城稔

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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