ART

2026.03.17

横尾忠則、会田誠らも登場。“美術に接近”するためのコミュニティ「ビジュツヘンシュウブ。」とは

「ビジュツヘンシュウブ。」というコミュニティの企画、運営している。ただ、美術館で鑑賞するよりも深く美術に近づくためにはどうしたらいいか。一つの方法として、取材者の目で見る、接するというのはどうだろうという提案。

横尾忠則さんの成城のアトリエにメンバーで訪問。前半は僕と対談形式で話をして、後半は出席者全員が横尾さんに質問。それに気さくに答えてくれた。

美術記者のように、アートに近づく

1年ちょっと前くらいからだけど、「ビジュツヘンシュウブ。」と名付けたコミュニティをつくって、活動をしている。つくって、と言うか、コミュニティという仕組みをつくって、それを運営していくプロの人たちがいて、僕はそこでメンバーに提供できることを探し、それを実現することを役割としている。

「2025年大阪・関西万博」にて、落合陽一さんのシグネチャーパビリオン「null²」を「遠山正道×鈴木芳雄 連載『今日もアートの話をしよう』」の鼎談で訪れたとき、コミュニティメンバーも何人かはるばる来阪。
「2025年大阪・関西万博」にて、落合陽一さんのシグネチャーパビリオン「null²」を「遠山正道×鈴木芳雄 連載『今日もアートの話をしよう』」の鼎談で訪れたとき、コミュニティメンバーも何人かはるばる来阪。

具体的には、アーティストの人たちとの直接の交流、編集者やギャラリストを招いた、あるいは彼らの仕事場に出向いてのトークイベントを行っている。ときには僕が「2025年大阪・関西万博」や「ひろしま国際建築祭」の取材に行ったときに一部のメンバーが現地まで同行してくれたりした。

アーティストの会田誠さんのアトリエにおじゃまして、会田さん特製の鍋をメンバーでいただいた。ありがたき会。
アーティストの会田誠さんのアトリエにおじゃまして、会田さん特製の鍋をメンバーでいただいた。ありがたき会。

最初、自分がコミュニティの中心になったとき、何ができるか、メンバーの人たちは何をメリットに集まり、参加し続けてくれるかと考えた。自分の特徴としては、古典的な美術から現代アートまで触れる機会が人より多くて、知識も積み重なっていること。そして、雑誌から始まり、書籍やウェブメディアを編集する仕事をやってきたことだ。

だから、美術が好きな人や美術にもっと接近したい人のためになることをやるのがいい。それを、これまでメディアを通じてやってきたけれど、コミュニティという新しいプラットフォームでやれば可能性が広がる。いや、コミュニティというのは特別なものではなくて、メディアの進化した形なのかもしれないとも僕は解釈している。

京都とヴェネツィアの2拠点で活動するガラスのアーティスト、三嶋りつ惠さんと対談トーク。東京都庭園美術館での展覧会のタイミングで来てくれた。
京都とヴェネツィアの2拠点で活動するガラスのアーティスト、三嶋りつ惠さんと対談トーク。東京都庭園美術館での展覧会のタイミングで来てくれた。

僕も展覧会に自主的にぼちぼち通うようになったのは高校生くらいから。だから、美術ファンになって50年くらいが経った。出版社に就職してある雑誌の編集部でたまたま美術のページの担当になって取材して原稿を書いたり、寄稿を依頼したりするようになって40年くらいが経った。おかげさまで普通の人より多くの美術作品を見て、美術業界の内側の人(アーティスト、キュレーター、ギャラリスト、コレクター、さらに裏方の人なども)に接する機会がある美術業界の近くに居続けて、楽しい日々だ。

コミュニティといえば、友人の起業家、遠山正道さんも「新種のimmigrations」を運営していて、もともとそれに僕も参加していた。彼はコミュニティを「小さな国」のようだとして、メンバーをそこの「住人」にたとえている。ビジネスとカルチャーの両方に長けた彼らしい視点とアイディアによる、豊かで刺激的な幸せ溢れる日常の再分配を目指している。それはちょうど現実社会で我々は税金を納め、それによってより良い社会をつくり、健康で文化的なライフを送る仕組みのように。

遠山さんのコミュニティ「新種のimmigrations」とはしばしば合同のイベントをやっていて、これは北軽井沢のTanikawa House(建築:篠原一男 オーナー:遠山正道)を訪れたとき。
遠山さんのコミュニティ「新種のimmigrations」とはしばしば合同のイベントをやっていて、これは北軽井沢のTanikawa House(建築:篠原一男 オーナー:遠山正道)を訪れたとき。

僕もコミュニティで、自分が感じている日々の充実感をお裾分けできればいいのではないかと考えた。そうだ、「お裾分け」や「再分配」がコミュニティの役割かもしれない。美術と編集に関するコミュニティをつくることで、僕が今まで蓄えてきたこと、それは知識だったり、経験だったり、人脈だったりによるメリットを「お裾分け」できるかもしれない。

それは取材者という立場で対象に相対する機会があったり、アーティストやキュレーターに展覧会のことをじかに深く聞くことができたからだ。普通の美術ファンでいるよりも美術との距離が近くいられたからだ。美術が好きでもっと美術に親しみたいという人の願いの手助けをするコミュニティにしようと考えたのである。つまり、美術との距離を縮めるため、美術の取材者のような立場で美術に接することにしようということ。「みんな、美術記者になろうよ」である。

だから、コミュニティを編集部に例えることにした。そしてメンバーは美術記者になって、美術に接していくことで、より充実した美術ファンになる、ますます美術にハマっていくというわけだ。(そんなのはゴメンだ。一定の距離を保っていてこそ、正しい「ファン道」、あるべき趣味だという意見もわかる)。

小山登美夫ギャラリー京橋をメンバーで訪れて、そこで小山×鈴木対談。小山さんと鈴木は40年近くの長いつきあい。ビジュツヘンシュウブ。ではトークイベントを「編集会議」と呼んでいる。
小山登美夫ギャラリー京橋をメンバーで訪れて、そこで小山×鈴木対談。小山さんと鈴木は40年近くの長いつきあい。ビジュツヘンシュウブ。ではトークイベントを「編集会議」と呼んでいる。

そういうわけでコミュニティの名前を、美術を扱う編集部という設定にした。目立つように全部カタカナにして、最後マルをつけて「ビジュツヘンシュウブ。」しかもロゴは2行にしてみて、変なところで折り返してみた。

『Numéro TOKYO』統括編集長 田中杏子さんを招いての「編集会議」。大盛況ですぐに2度目を開催。2度目は会場を居酒屋に設定して、飲食しながら会話をする会にした。
『Numéro TOKYO』統括編集長 田中杏子さんを招いての「編集会議」。大盛況ですぐに2度目を開催。2度目は会場を居酒屋に設定して、飲食しながら会話をする会にした。

これはまだうまく実現してないのだけれど、ここ自体が外部に発信するウェブメディアを持って、展覧会レビューなどを掲載していけば、書き手となるコミュニティメンバーが取材者になって、持ち回りの書き手による美術ブログが成立すると思った。そうすれば、個人ブロガーを記者内覧会などに受け入れてくれる美術館ならメンバーが取材に行ける。まさに記者の立場で展覧会を見るのである。もちろん取材のノウハウが必要なら教えたり、出来上がった原稿を僕やコミュニティ運営メンバーがチェックして、世に送る。

東京都写真美術館「総合開館30周年記念 ルイジ・ギッリ 終わらない風景」開催のタイミングで森岡書店の森岡督行さんを招いてのトークイベント。
東京都写真美術館「総合開館30周年記念 ルイジ・ギッリ 終わらない風景」開催のタイミングで森岡書店の森岡督行さんを招いてのトークイベント。

コミュニティを始めて、半年くらい経ったところで、既存のメディアと連携することができて、それは今も継続している。『ノジュール』というJTBが発行する、旅と暮らしを応援する定期購読雑誌の美術欄を僕とコミュニティメンバーで書かせてもらっている。他にもこのコミュニティの活動に注目して、協働できそうな動きも出ている。

月刊『ノジュール』JTBパブリッシング発行

コミュニティとしても1年ちょっと。知名度もまだまだだし、メンバーも理想の人数には遠い。従来のメディアのように多くの読者、視聴者獲得を目指すものではもちろんないにしても、それ自体がメディア的な性格を持つにはまだまだメンバーが少なすぎるし、もっとメンバーが増えたら実現すること、やりやすいこともあるなぁとも思いながら、このコミュニティ「ビジュツヘンシュウブ。」を育てているところだ。

コミュニティはいつでも入会退会可能、興味のある人は「ビジュツヘンシュウブ。」とは、を読みにきてほしい。

Yoshio Suzuki
編集者/美術ジャーナリスト。雑誌、書籍、ウェブへの美術関連記事の執筆や編集、展覧会の企画や広報を手がける。また、美術を軸にした企業戦略のコンサルティングなども。前職はマガジンハウスにて、ポパイ、アンアン、リラックス編集部勤務ののち、ブルータス副編集長を10年間務めた。国内外、多くの美術館を取材。アーティストインタビュー多数。明治学院大学、愛知県立芸術大学非常勤講師。

TEXT=鈴木芳雄

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