色褪せないスタイリッシュなフォルム。1976年にスイスの高級時計マニファクチュールが発表した「インヂュニア SL」をデザインしたのは、世界的時計デザイナー、ジェラルド・ジェンタであった。時計の歴史に名を刻む名デザイナーが「インヂュニア」に込めた思いを、俳優・鈴木伸之がドラマチックに表現した。

それぞれの時計に物語がある
一体型ブレスレットを備えたラグジュアリーなスポーツウォッチ「インヂュニア」。その礎を築いた「インヂュニア SL」は1976年に発売された。5本のビスでケースに固定されたベゼル、ピュアなフォルム、磨き抜かれた上質のステンレススチールは、貴金属のようなきらめきを放つ。
50年の時を経てもなお、完成度の高さを感じさせるその腕時計は、IWCを代表するコレクションへと進化、多くのバリエーションを世に送り出している。鈴木伸之さんも撮影を通して「インヂュニア」の魅力を感じたようだ。
「一見すると派手なデザインではないですが、上品で特別な存在感がある。触れると、強く印象が残る時計だと思いました。今日は3本のインヂュニアを身に着けて表現したのですが、どれも違うスタイルに仕上がり、しなやかに主張するのを感じました。
それぞれの時計(モデル)に物語があって、その後に会う人やシーンを想像したくなりました。持ってみると程よく重みを感じるのに、着けると手首にフィットして、自然な着け心地。ケースが薄いのがその理由なのですね。とても考え込まれた時計だと思います」

天才時計デザイナー、ジェラルド・ジェンタ
不変の魅力を放つ名作「インヂュニア SL」が誕生した1970年代は、スイスの時計業界にとっては苦難の時期だった。日本で生まれた安価で正確なクオーツ時計が、スイスの高級機械式時計の市場を崩壊の危機にまで追い込んでいた“クオーツショック”の時代。1868年に創業した老舗ブランド、インターナショナル・ウォッチ・カンパニー(IWC)も例外ではなかった。
危機感をおぼえた当時の経営者は、起死回生を図り、ひとりの時計デザイナーに白羽の矢を立てた。その名はチャールズ・ジェラルド・ジェンタ(1931–2011)。のちに不世出の天才時計デザイナーとして多くの腕時計デザインで歴史に名を残す男が手がけたのは、1955年に発売されていた耐磁性能を重視したエンジニア用のツールウォッチ「インヂュニア」のリデザインだった。
当時、機械式時計のデザインといえば、貴金属や宝石を用いた“華やかな装飾”が主流。そんな中、シンプルに機能美を追求した「インヂュニア SL」は意匠、構造、装着感のすべてにおいて革新的なモデルだった。
それは1970年代のインヂュニアから着想を得た、今秋発売された50周年記念モデル「インヂュニア・オートマティック 40 “50TH ANNIVERSARY”」「インヂュニア・オートマティック 35 “50TH ANNIVERSARY”」を見れば、ジェンタがいかに先進的なデザイン思想を持っていたかを窺い知ることができるだろう。
5本のビスやケース一体化ブレスレットは、50年経って色褪せるどころか、デジタル全盛の今日においてもモダンかつラグジュアリーな雰囲気を放つ。

時代が変わっても色褪せない魅力

鈴木さんが撮影で着用した3本の「インヂュニア」もしっかりとジェンタの思いを受け継いでいる。
セラミックという新しい素材を用いた「インヂュニア・オートマティック 42」、小ぶりなケースにダイヤモンドをあしらい、よりラグジュアリーな雰囲気を纏った「インヂュニア・オートマティック 35」、そしてIWCのウォッチメイキングの技術力の高さを感じさせる「インヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41」。
それぞれが異なる個性を持ちながら、いずれも「インヂュニア」らしさを失っていない。時代が変わっても、素材やディテールが変わっても、ひと目で「インヂュニア」だとわかる唯一無二の存在感。このコレクションがジェラルド・ジェンタの代表作のひとつに数えられ、IWCはもとよりスイスの腕時計業界にとってもエポックメイキングな存在だったことを改めて納得させられる。

目の前の現場に全力で臨む

ドイツ語でエンジニアを意味する「インヂュニア」は、IWCにとって大きな意味を持つ。
日本語に訳すと、エンジニア=技術者、エンジニアリング=工学となるが、IWCではそこに「革新」という意味を含めているという。決して歩みを止めることなく、自らを磨き続ける。創業158年という歴史に敬意を払いつつ、未来へと進化をし続けるIWCのブランドとしての矜持がそこにあると言っていい。
2010年にデビュー、俳優として研鑽を重ねてきた鈴木さんもその姿勢に共感する。
「時間は決して巻き戻ることがない。その瞬間瞬間に自分の持つすべてを出し切ることを意識しています。その役のためにできる準備をし、台本を読みこみ、撮影の現場では自分が感じたことを素直に表現する。うまくなりたいとか、成長したいとか考えることはありません。どんな現場も一期一会。そこにしかない時間、人との縁がある。同じ作品、同じスタッフ、共演者でも、同じ時間がかえってくることはない。だから目の前の現場で全力を出す。それを続けることでしか、自分を高めることはできないと思っています」
声高に己を主張することはない。当たり前のことを当たり前にやる。IWCは約160年にもわたってそれを続け、比類なき技術とオリジナリティを持つ時計ブランドとなった。「インヂュニア」はそんなIWCの特徴を最も感じることができるコレクションといえるだろう。

鈴木伸之/Nobuyuki Suzuki
1992年神奈川県生まれ。2010年、舞台『ろくでなしBLUES』で俳優デビュー。主な出演作に、映画『桐島、部活やめるってよ』、『東京リベンジャーズ』シリーズ、『サラリーマン金太郎』、『ミステリー・アリーナ』などがある。2026年12月11日より主演を務める映画『羊の皮を着たケモノ』が公開予定。
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