GOETHEとファイナンスプラットフォーム「FINCHI」がタッグを組んだメディア「GOETHE Finance powered by FINCHI」。ビジネス界で圧倒的な実績を持つリーダーたちは、「ファイナンス」をどのように捉え、活用しているのか。その最前線の思考に迫ることで、日本における「ファイナンス」をカルチャーとして定着させていく。今回は、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』(以下、ソニック)をはじめとする世界的IPを育て、ゲーミングなど新たな成長領域にも挑むセガサミーホールディングス代表取締役社長グループCEOの里見治紀氏へのインタビュー後編。IPへの投資と同様に人材への投資も大切にしている里見氏。ファイナンスの力も駆使しつつ、企業価値と感動体験の最大化を目指すセガサミーには、「世界平和」という大きな夢があるという。(前編はコチラ)

採用も育成も投資。ファイナンス視点で挑む
新しいIPや事業を生みだすのは人の力。里見氏は、人財への投資にも力を注ぐ。
「投資というと、設備や機械を買うことだと思いがちです。しかし、新卒ひとりを雇うことも、定年まで40年在籍すると考えれば、数億円規模の投資に匹敵します。トップの一番重要な仕事は、社員のモチベーションを上げること。例えば稲盛和夫さんは『人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力』と説いています。能力があっても、熱意がなければ十分な結果は得られない。それどころか、熱意が0なら仕事の結果も0になってしまいます。私の父をはじめ多くの創業経営者は、部下の力を最後のひと握りまで引きだすことが上手いんですよね。僕は同じことはできないので、それを仕組みにしたいと考えました」
その仕組みのひとつが、企業内大学「セガサミーカレッジ」の立ち上げだ。
「僕が2008年にMBA留学の準備をしているとき、出願書類には『学んだことを生かして社内ビジネススクールを立ち上げる』と書いたんです。弊社には海外留学支援制度がありますが、全員がMBA取得のために留学できるわけではありません。ならば、社内で学ぶ機会を準備すればいい。自ら手を挙げて参加するプログラムから、里見塾、治紀塾、未来塾など、次世代の経営を担う人財を育てる選抜型のプログラムまで用意しています」
こういった学びの場に加えて、働きやすさを支える制度も整えてきた。副業制度の「JOB+(ジョブプラス)」や、今後本格化する介護離職を見据え、会社の承認を得ればフルリモートに近い働き方が可能な制度などだ。これらの人財投資が実を結び、従業員モチベーションサーベイや、就職人気ランキングで理系・文系ともに上位入りを果たすグループ会社も出てくるなど、目に見える成果が表れている。

1979年東京都生まれ。明治学院大学卒業後、国際証券でIPOコンサルティング、フェニックス・キャピタルで企業再生業務に従事。サミー、セガ、Sega of Americaを経て、2012年UCバークレー校経営大学院(MBA)修了。グループ各社の社長などを歴任し、現在はセガサミーホールディングス代表取締役社長グループCEO。
上場企業の経営者として難しい決断を引き受ける
優れた人財による事業開発に加えて、M&A、事業譲受、合弁会社の設立、業務提携などを組み合わせて事業を広げてきたセガサミー。「自社がベストオーナーであるか」を判断の根底に持ち、それは手放す判断にも向けられる。
象徴的なのが、2012年に完全子会社化したフェニックスリゾート社。里見氏自身も取締役会長として関わり、コロナ禍の厳しい時期を乗り越え、2023年3月期と2024年3月期には2年連続で営業黒字を達成した思い入れのある事業だ。
「譲渡の打診があったのは、初めて黒字化したタイミングでした。手を挙げたのはホテルに特化したプロファンドで、僕らが保有し続けるよりも、彼らのほうが次の成長を担うベストオーナーであると判断しました」
譲渡に対し、反対の声もあったが、里見氏は説得を重ねた。
「上場企業として株主や資本効率に対する社会的責任から逃げることはできない。コロナ禍での構造改革時も、『会長だったらこんな判断はしない、治紀社長だからこんな厳しい判断をするんだ』という声が聞こえてきました。それでも、経営者はやらなくてはいけない。フェニックスリゾートの売却でも、最後は全社員の前で僕が自分で説明しました。それはつらいですよ。でも、『経営者として一番つらく難しい仕事こそ、自分でやるべき』というのが父の教えです」
企業価値を高め感動の先に平和を描く
社長就任以来、「持続的な企業価値の最大化」を掲げてきた里見氏。ただし、その企業価値は、時価総額と同じ意味ではない。
「ステークホルダーのうち、僕が最も大事だと思っているのは従業員です。従業員がいなければ製品を作れない。製品がなければ、お客様も、取引先も、株主も、ファンも満足させられないんです。従業員がいて、取引先がいて、お金を払ってくださるファンがいて、残った利益を株主へ還元する。その価値の総和が広がることが、企業価値の最大化だと考えています。株価や時価総額は、そのひとつの指標でしかありません」
ファイナンスは、その価値の総和を広げるための手段だ。手元資金で賄える投資もあれば、機会を捉えて一気に勝負をかけるため、外部から資金を調達することもある。いつしか訪れる“その時”に備え、調達余力にも目を配る。
「普通社債は発行していますし、社債市場からあとどれくらい調達できるのかも見ています。また銀行とは、必要な時に一定額まで借り入れられる融資枠『コミットメントライン』という形で、借り入れできる枠を設けています」
その先に目指すのが、同社のミッション・パーパスにもなっている「Captivate the World 感動体験を創造し続ける~社会をもっと元気に、カラフルに。~」だ。里見氏は、「社員が一番感動するのは、お客様が喜ぶ姿を見た時。それが、作る人の感動になり、次の作品を生む力につながる」と語る。では、その感動体験の先にある社会とは何か。里見氏は「少し格好よく言うと、エンタメは究極的には平和産業だと思っています」と話し、こう続けた。
「争いが起きたら、エンタメは最初に隅へと追いやられます。衣食住と安全があってこそのエンタメだと。しかし、『ゲームをしたいから争いはやめよう』と思わせるくらいの面白いゲームがあれば、我々は平和維持にも貢献できる。そして、世界が平和であればあるほど、エンタメのマーケットは広がる。それくらいの力がエンタメにはあります。ビジネスの力で、社会をより平和で豊かにしていきたいですね」

セガサミーHDのファイナンス5大トピック
2004年 セガとサミーが経営統合
共同株式移転によってセガサミーホールディングスを設立。異なる収益構造を持つ両社がひとつのグループとなり、現在の「安定CFを成長投資へ回す」構造の出発点に。
2013年 インデックス(現・アトラス)の事業を譲受
デジタルゲーム事業などを譲受し、アトラスがグループ入り。グループの主力IPのひとつ「ペルソナ」シリーズなど、IPポートフォリオが拡大する重要なM&Aとなった。
2017年 韓国初のIR施設「パラダイスシティ」を開業
韓国のパラダイス社との合弁で、韓国初のIR施設を開業。カジノやホテルなどを一体運営し、ゲーミング領域での事業ノウハウを蓄積した。
2018年 東京・大崎のオフィスに本社機能を集約・移転
国内に点在していたグループを新オフィスに集約。事業連携やシナジー創出環境を整備するとともに、オフィス内に約400坪のコワーキングスペースを設置。スタートアップ企業等の事業支援にも取り組む。
2025年 GAN、Stakelogicを買収し、「第三の柱」への投資を本格化
GANを約151億円、Stakelogicを約209億円で取得。オンラインゲーミングのプラットフォームとコンテンツを獲得し、「第三の柱」構築へ資本を投下した。
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