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2026.08.31

ジャパネット髙田社長が、総事業費1000億円を大胆に投じた決断の裏側にあるもの

GOETHEとファイナンスプラットフォーム「FINCHI」がタッグを組んだメディア「GOETHE Finance powered by FINCHI」。ビジネス界で圧倒的な実績を持つリーダーたちは、「ファイナンス」をどのように捉え、活用しているのか。その最前線の思考に迫ることで、日本における「ファイナンス」をカルチャーとして定着させていく。今回は、今年創立40周年を迎えたジャパネットホールディングス代表取締役社長兼CEOの髙田旭人氏を取材。通信販売を基盤に、旅行、放送、スポーツ、地域創生へと事業を広げ、長崎スタジアムシティには総事業費約1000億円を投じるなど、大胆に見える決断の裏には、どのような経営とファイナンスの哲学があるのか。

ファイナンスについて語る髙田紙

ジャパネットの長崎と世界への挑戦、ファイナンスは経営者の「武器」である

長崎県佐世保市の小さなカメラ店から始まったジャパネットは、2026年で創立40周年を迎えた。売上高約2908億円(2025年12月期連結売上高)、今や、誰もが知るテレビ通販の最大手だ。近年はスポーツ・地域創生事業にも注力しており、2024年10月に開業した大型複合施設「長崎スタジアムシティ」は、民間主導の地域創生につながる取り組みとして、大きな話題を呼んだ。こうした成長を牽引しているのが、ジャパネットホールディングス代表取締役社長兼CEOの髙田旭人氏である。

「現在のジャパネットグループは8つのカンパニーで構成され、16のグループ会社があります。事業の二本柱は、セールスメディアカンパニーや顧客サービスカンパニーが担う『通信販売事業』、そして、サッカークラブのV・ファーレン長崎やバスケットボールクラブの長崎ヴェルカを運営するスポーツカンパニーと、スタジアムやイベントを運営する地域創生カンパニーが担う『スポーツ・地域創生事業』。さらにこの両方にまたがる形で、旅行を扱うトラベルカンパニー、キャッシュレス端末などを手がけるイノベーションカンパニー、BS10などを運営するコミュニケーションカンパニーなどが有機的に結びついています」

なかでも、稼ぎ頭でありグループの成長を牽引し続けてきたのが、通信販売事業だ。

「投資やM&Aという手段を使って新規事業に挑戦する際、元手となっているのは、通販事業で上げた利益です。幹となる通販事業が好調なおかげで、スポーツ・地域創生、そして旅行や放送といった各事業への挑戦が実現できています。正直に言えばまだ赤字の事業もありますが、通販以外の事業もいずれは自走できる状態を目指しています」

ファイナンスについて語る髙田紙

髙田旭人/Akito Takata
1979年長崎県生まれ。東京大学卒業後、証券会社を経てジャパネットたかたへ入社。バイヤー、コールセンター、物流など主要部門の責任者を歴任し、2015年にジャパネットホールディングス代表取締役社長に就任。通信販売事業に加え、スポーツ・地域創生事業にも取り組み、現在はホールディングスを含む7社の代表を務める。

1000億円の資金を投じ、民間による地域創生へ挑戦

数ある新規事業のなかで最大の投資となったのが、総事業費約1000億円を投じた「長崎スタジアムシティ」である。JR長崎駅から徒歩10分。約2万席のサッカースタジアムのほか、アリーナ、ホテル、商業施設、オフィス棟を備える大型複合施設の建設は、ジャパネット主導の民設民営による地方創生事業だ。

「この事業の発端は、経営難に陥ったV・ファーレン長崎の完全子会社化でした。また長崎には平地が少なく、中心部に広大な土地を確保することが難しいのですが、思いがけずとある工場跡地が売りに出されました。サッカーチームがあるのなら、本拠地となるスタジアムを造りたい。アリーナも併設し、バスケチームも作ろうということで長崎ヴェルカを創設しました。つまり、最初から巨大な構想があったわけではないんです」

これまでの地域創生の取り組みの多くは官民連携で行われ、補助金に頼ることも珍しくなかった。しかし髙田氏はそのような常識に、敢えて挑んでいった。

「当時はまだ、民間だけでスポーツ・地域創生事業を成立させた例はほとんどなく、それなら行政に頼らずやってみよう、と。『サッカーで収益が取れる民間投資のスタジアム』という事例ができれば、当社のみならず日本全体にとってのリターンになるとも考えました。また、長崎は日本の西端ですが、大陸も含めればアジアの中心に近い位置にありますから、地の利もあると踏みました。人、文化、食といった魅力を見つけ、磨き、全国へ伝えるという通販事業と同じ思想で地域創生に取り組める自信がありました」

事業費は当初想定していた500億円をはるかに超え、最終的に約1000億円へ膨らんだ。資材価格の高騰に加え、スタジアムの屋根、ジップライン、天然温泉など、施設の価値を高める設備を追加していったためだ。

「部分最適で考えると、設備の追加は見送るという判断が妥当でしょうが、通販と同じように、お客様に最高の体験を提供する施設を造りたかった。しかも、こういった施設は何十年も使えますから。年単位で考えて論理的に数字を見極めれば、これらの設備は絶対にあったほうがいい。最後は定量と定性の両方、つまり数字・論理と感覚の掛け算で投資を決めました」

ジャパネットが描く非上場企業の投資戦略

約1000億円という莫大な投資を可能にしたのが、創業者であり前社長でもある父、髙田明氏が貫いた「無借金経営」という強みだ。強固な財務基盤を土台に、借入約600億円と手元資金約400億円で賄った。

「無借金経営だったからこそ、臆することなく投資に挑戦できたという点では、父に感謝をしています。しかし一方で、必要な時に借入をして、レバレッジを効かせるのもまた経営です。当時はまだ金利が低く、私も30代でしたから、万が一失敗しても巻き返せる。そう思えたことも決断の後押しになりました」

もう一点、この投資を可能にしたのは、ジャパネットが非上場企業であること。株主の意見に左右されないという強みを持つ。実際、同プロジェクトでは短期的な利益に縛られず、25〜30年という長期的な初期投資の回収を想定している。とはいえ、これだけの金額を費やすことに迷いや恐怖はなかったのだろうか。

「重要なのは金額ではなく、リスクをコントロールできるかどうか。失敗した場合に社員を路頭に迷わせるようなリスクは取りませんが、走りながら修正でき、失敗しても会社が潰れないのであれば、1000億円でも投じるべきです。日本の投資は、リスクにばかりフォーカスしすぎる傾向がありますが、本来は成功した時の期待値にも同時に目を向けるべきでしょう」

開業から約1年で延べ来場者数は485万人に上り、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)ベースで単月黒字化を達成した。スポーツ観戦に訪れる観客数も順調に増え、その熱気と歩調を合わせるように、長崎ヴェルカはBリーグを制し、V・ファーレン長崎はJ1昇格を果たした。

「たしかに彼らの活躍は喜ばしいことですが、スポーツカンパニーはまだ赤字。社員には、『このチャンスを生かしてマネタイズしなければいけない』と言い続けています。社員も努力をして地域創生に取り組んでいるからこそ、しっかりと利益を出して黒字化させ、持続可能なビジネスにしなければいけない。長崎スタジアムシティも、通販事業と並んでグループを支える存在に育てたいと考えています」

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TEXT=林田孝司

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