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2026.08.07

【秋山広宣】「ここまでと決めた時が負け」命以外のすべてを失ったどん底から世界へ挑む起業家の執念

経営者、政治家ら各界のトップランナーが一堂に会し「難局をどう乗り越えてきたか」を語り尽くす、日本最大級の変革者カンファレンス「Climbers(クライマーズ)」。その最新回「Climbers X LIVE 2026」が2026年6月、東京ビッグサイトで開催された。今回はその中から、モバイルバッテリー・シェアリングサービス「CHARGESPOT(チャージスポット)」を展開するINFORICH代表取締役 兼 執行役員Group CEO・秋山広宣氏のセッションを一部抜粋してお届けする。きらびやかなステージで秋山氏が語ったのは、かつてラッパーとして挫折し、「命以外のすべてを失った」というニューヨークで、再びビジネスで挑むまでの壮絶な道のりと、“つなぐ”という自身の使命だ。

秋山広宣氏

“つなぐ”という自身のルーツ

熱気あふれる観客を前に、秋山氏は自身のルーツから話を始める。父方の一族は香港で500年の歴史を持ち、中国とイギリスの間で政治に関わってきたという。

「一見華やかな家系に見えるかもしれませんが、イギリス側からは中国の人間、中国側からはイギリスの犬と蔑まれていました。それでも家族は大義のために、香港とイギリスの間をつなぐ立場を取り続けてきました。

だから僕にとって(後の人生やビジネスにも関連する)“つなぐ”というのは、後から作った概念ではなく、かなり深いところで自分のルーツにあったんだと感じます」

ニューヨークで、命以外のすべてを失った

10歳で母の故郷・福島県いわき市へ移住した秋山氏。高校時代にラップを始め、大学進学を機にヒップホップ発祥の地・ニューヨークへと渡り、現地での音楽活動に挑んだ。しかし、そこで待っていたのは大きな挫折だった。

「本当に貧困や、厳しい現実を乗り越えた、マイク1本で戦っているMCたちがいっぱいいる中で、自分は英語でのラップのスキルも不十分でした。ニューヨークは僕にとって完全に負けた場所です。いや、負けどころか、命以外のすべてを失った場所です」

現実を受け止められずに精神を病んでしまい、自殺未遂を繰り返し、1999年のクリスマスに「ほとんど強制送還のように」帰国。言語障害、人間不信、うつ病が重なり、19歳で満足に歩くこともままならない状態になった。それでも病床でこう思った。

「このままでは死ねない。このままでは終われない」

医師に「回復まで3年」と言われるも、必死のリハビリの結果6ヵ月で社会復帰し、再びラップへの挑戦を決意。「25歳までに結果が出なければ何でもするから、そこまでは応援してくれ、信じてくれ」と母に約束し、会社員とラッパーの二足の草鞋で走り続けた。その結果、2007年にユニバーサル ミュージックとの契約を摑む。

「やればできるんだという達成感を得ました。ただ不思議と、(実現できるという)確信は常にありました」

1万円の株が、会社の資本金になった

しかし、2年でユニバーサルとの契約が終わり、事実上の無職に。家計を支えるために日本と香港をつなぐコンサルティング業を起こした。

その頃、ある経営者から「3年で上場するから株を持ってくれないか」と声をかけられ、生活もままならない中で1万円の株を購入した。妻には「なんで訳のわからない株を買ってくるの」と言われたという。

秋山広宣氏

その株は後に6億円になり、INFORICHの資本金となった。

「もう本当にびっくり。何が言いたいかというと、人とのつながりだと思います。その人と一緒に戦いたいと思って、1万円で株を買ったんです。誰とつながるか、誰を信じるか。ここの選択肢が本当に人生を分けていくんだと思います」

「絶対にうまくいかない」と言われ続けた新事業

2015年、INFORICHを創業し、モバイルバッテリーのシェアリングサービスであるCHARGESPOTを展開する。周囲からは「絶対にうまくいかないよ」と何度も言われたという。

「それは信じなかったです。香港でうまくいっている。日本でも絶対に需要があると思って、スピードを上げて展開しました」

かつて香港でコンサルティングを手がけた縁のある企業が次々と導入を決め、展開は加速した。

「結局は人とのつながりで展開できたんだと思います」

コロナ禍も乗り越え、2022年には東証グロース市場へ上場。その後、投資ファンドと組んだMBOに伴うTOBを経て、新たな挑戦としてニューヨーク進出を予定している。

「CHARGESPOTを持って、もう1回ニューヨークに勝ちにいきたい。何度でも、何度でも勝ちたい。負けるというのは、諦めるということしかないと思っています」

講演の最後、秋山氏はステージ上でラップを披露し、この日の話全体を貫く力強いメッセージとして締めくくった。数々の絶望を乗り越え世界へと挑む起業家の力強い言葉に、東京ビッグサイトの会場からは惜しみない拍手が送られた。

秋山広宣/Hironobu Akiyama
香港生まれ日本育ち。2007年にユニバーサルミュージックで3ヵ国語を駆使したアーティストとして活躍。2012年に香港に移り住み、福岡県香港駐在事務所顧問、2014年にマザーズ上場をしたIGNIS設立時の海外事業室長など、日本企業の香港誘致、M&Aなどのクロスボーダービジネスのコンサルティング業を担う。2015年にINFORICHを創業。現在CHARGESPOTをグローバルにサービス展開。

TEXT=Re|vent編集部(Sansan)

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