バーニーズ ニューヨークのセットアップに身を包んだ時、装いに滲むのは、年齢でも肩書でもない、その人が重ねてきた生き方そのもの。選ばれし4人のリアルな言葉から、今の時代に必要なカッコいい大人の現在地を探る。

志を追い続ける大人の姿 未来を示す、成熟の品格
U-NEXT HOLDINGS 代表取締役社長CEO・宇野康秀
日本を代表するコンテンツ企業・U-NEXT HOLDINGSの代表取締役社長CEOとして、多彩な事業を率いてきた宇野康秀氏。20代で独立・起業し、その後、父の事業を継承・発展させながら、結果を出してきた経営者が考える“カッコいい大人”とは、どのような存在なのだろうか。
「志を持って生きている人。周囲に優しくできる余裕を備えている人。そして、自分にストイックであり続ける人でしょうか。何かを成し遂げるための明確な指針があり、ブレない人には、やはりオーラを感じます」
幼い頃から偉人伝に親しみ、高校時代は本田宗一郎や松下幸之助、盛田昭夫ら創業経営者の生き方に強く惹かれた。その憧れは今もなお、自らの仕事観の核にあるという。
「社会の一員として、会社は何をなすべきか。技術が進化し、価値観が変わり続ける時代に、未来をより快適で心躍るものへと進めていくことが、自分の使命だと思っています」
リーダーに必要なのは「道を示し、自ら前を進み、背中を見せること」。趣味でもある登山にも似たその感覚は、先の景色を経験則で捉える、一流の経営者ならではの哲学でもある。
「かつては、服に無頓着な男をカッコいいと思っていましたが、今は装いも生き方の一部だと思っています」
そう語る宇野氏が、この日、着こなしたのは、上質なカットソーをインナーに合わせた、シングルブレストの軽やかなセットアップだ。ほどよく力を抜きながら、なお志を追い続ける姿に、成熟した大人の男の品格が滲む。

Yasuhide Uno
1963年大阪府生まれ。1998年に大阪有線放送社(後のUSEN)代表取締役に就任。2010年にUSENからU-NEXTを分社化。2017年よりUSEN-NEXT HOLDINGS(現U-NEXT HOLDINGS)の代表取締役社長CEOに。社内の服装規定は自由。トップが率先して実行。
強さとともに中心に進む、若き王者のクールな哲学
プロ車いすテニスプレーヤー・小田凱人
撮影は、英ウィンブルドン選手権で2連覇を果たし、帰国した翌々日。激闘の疲れを感じさせず、ダブルブレストのセットアップを身につけてカメラの前に立つ小田凱人選手は、弱冠20歳とは思えないほどの貫禄を漂わせていた。
「僕が思うカッコいい大人のイメージは、偏りがなく、どんなものでも自分らしく見せられる人。スタイリッシュな服を着れば誰でもある程度はカッコよく見えます。でも、本当にカッコいいのは、なんでもない服であっても内側から滲みでる力で、魅力に変えられる人だと思います」
テニスにおいては強い選手こそが一番カッコいい。しかし同時に小田選手は、車いすテニスという競技そのものを、多くの人が観たいと思う存在へ変えていきたいのだと語る。
「自分がこの競技を始めた10歳の頃に思い描いていた場所まで来た実感はあります。それでも自分としてはまだ、全然足りていないと思うんです。練習、トレーニング、食事、そして競技の見せ方。まだまだ試せることはいくらでもありますから」
彼が目指すのは、単にランキングの頂に立つことではない。「頂点にいても中心にいない選手もいる。だから僕は頂点とともに、シーンの中心にいることです」ときっぱりと言い放つ。何かを起こす人は、いつだって真ん中にいる。ネイビーのセットアップは、頂を極めながらなお進化の途中にいる俊英に、フレッシュな表情を添える。若く、強く、さらに中心を目指そうとする姿こそ、次代のカッコよさを物語っている。

Tokito Oda
2006年愛知県生まれ。10歳から車いすテニスを始め、世界jr.ランキング1位を最年少で達成。世界4大テニス大会に加え、2024年パリパラ五輪では史上最年少で金メダルを獲得。年間グランドスラムがかかる9月の全米オープンも期待大。
利他の精神に根を張って内面から輝く、男の流儀
松葉屋(TRADMAN'S BONSAI)代表取締役社長・小島鉄平
「自分が思うカッコいい大人というのは、“愛”を持っている人です。相手を思いやること、自分を大切にすること、モノを愛でること。その根底には、日本人が古くから大事にしてきた利他の精神があると思います」
TRADMAN'S BONSAI代表として、日本の文化である盆栽を現代の感性で国内外に発信する小島鉄平氏。何十年、時に何百年と生き続ける盆栽は、一代で完結するものではない。水をやり、光を与え、枝ぶりを見極めながら、日々の手入れを重ねる。その積み重ねによって、次世代へと受け継がれていく。その営みは「愛がないと続かない」と小島氏は力説する。
「若い頃に憧れたカッコよさは、今よりもっと表面的なものだったと思います。しかし、家族を持ち、仲間と出会い、盆栽と真剣に向き合うなかで、大切なものは変わっていきました。人の佇まいもまた、見える部分だけでは成立しないもの。盆栽の美しい造形を支えるのは、土の中に張った根っこです。人も同じように、見えない内側がしっかりしていなければ、外見はいずれめくれてしまうものだと思っていますから」
日々徳を積み、ここぞと定めた場所に、しっかりと自らの根を張ること。それこそが、どんな服を着ても、内面から滲みでるオーラとなる。40代を迎え、ダブルブレストのセットアップも自然と身体になじむようになった。軽くしなやかな着心地が、責任ある大人の感性にさり気なく寄り添って見える。新たな可能性を感じさせる装いの奥に、小島氏ならではの愛と美意識が息づいている。

Teppei Kojima
1981年千葉県生まれ。アパレルショップでのバイヤーを経て、2015年にTRADMAN'S BONSAIを結成。翌年松葉屋を設立し、代表取締役社長に。著名ブランドとのコラボレーションや、空間プロデュースを多数手がける。
有限の時間を力に変える若きリーダーの突破力
タイミー 代表取締役・小川嶺
10代で起業を志し、2018年にタイミーを開始。「スキマバイト」という新語も生み、現代の働き方の可能性を切り拓いてきた、タイミー代表取締役の小川嶺氏。その根底にあるのは、“時間は有限”という強い実感だ。
「18歳の時に、祖父の死に立ち会えなかった経験から、自分もいつか死ぬ存在であり、限られた時間で、何を成すのかを考えるようになりました。その意識が、起業家としての現在の自分へとつながっています」
目指すのは、AIやロボットが進化する時代に、人が人らしく働き、個々の可能性を開花させる環境をつくること。限られた時間をどう設計し、どう社会に役立てるのか。その問いは、タイミーというサービスの思想にも重なる。上場を経て、1,500人規模の組織を率いる現在も、小川氏本人に到達感はない。「もっと大きな山に挑みたい」と語るその姿には、若いリーダーらしい推進力がある。
「カッコいい大人とは、日々を楽しみ、活力に満ち、今取り組むことを120%の熱量で語れる人だと思います」
そう語る一方で、これからの時代に必要なのは、ロジックだけでなく恩義や仁義、人情といった情緒だとも続ける。この日の装いにも、そんな遊び心や人間味が滲む。「普段はなかなか選ばない色ですけどね」と語るブラウンのセットアップに身を包み、色気のあるブラックシャツの襟元にイタリアブランドのニットタイを締め上げる。好奇心のままに、新しい自分を発見する。その挑戦する姿こそ、小川氏が考えるカッコよさの本質なのだ。

Ryo Ogawa
1997年東京都生まれ。立教大学在学中にアパレル関連サービスを起業し、事業転換を経て2018年にジョブマッチングサービスのタイミーをローンチ。代表取締役として、社会問題の解決を目指ながら、事業と向き合っている。
問い合わせ
バーニーズ ニューヨーク TEL:050-3615-3600

