経営者、政治家ら各界のトップランナーが一堂に会し「難局をどう乗り越えてきたか」を語り尽くす、日本最大級の変革者カンファレンス「Climbers(クライマーズ)」。その最新回「Climbers X LIVE 2026」が2026年6月、東京ビッグサイトで開催された。今回はその中から、デジタル証券代表取締役CEOの山本浩平氏と、フリーアナウンサーの加藤シルビア氏夫妻のセッションを一部抜粋してお届けする。熱気に包まれた東京ビッグサイトのステージで2人が語ったのは、約4年半の歳月をかけて金融ライセンスを取得するに至った道のりと、未知のチャレンジを夫婦で支え合った唯一無二の日々だ。

個人投資家が納得して選べる金融商品を、自分で作る
デジタル証券が目指すのは、ブロックチェーン技術を用いてデジタル化した有価証券を投資家間で直接売買できる仕組みだ。例えるなら、昔は本を売りたいと思ったら古本屋に頼む必要があったが、現在はフリマアプリを使えば個人間で売買できる。山本氏は株式や有価証券にも同じ変化を起こしたいと語る。
そもそも、なぜこの事業を立ち上げたのか。山本氏は金融庁・財務省に勤務していた時代を振り返りながら語る。
「金融にいると、家族や友達から『いい商品を教えてください』と言われるんですよ。でも、正直わからない。だったら自分がいいと思う商品を作れば、自信を持ってすすめられるかなっていうのがきっかけです」
育児の合間を縫って事業構想を練る日々
妻である加藤氏が明かしたのは、“起業をすすめたのは自分”だったという事実だ。当時の山本氏は金融庁を退庁し、それまでのキャリアを活かし、弁護士として金融関係の法規制に対する窓口として活動していた。

「話を聞いているうちに『窓口になるんじゃなくて自分で作った方がいいんじゃない』という気持ちになって。その後、夫婦でいっぱい話し合いましたね」
コロナ禍で外出もままならない時期、クルマの中で子どもを寝かせながら壁打ちを重ねた。加藤氏が最終的に「これだ」と感じたのがデジタル証券のビジネス構想だったという。
「事業について聞いた時に、シンプルだなと思ったんです。ブロックチェーンを使った新しい証券のマーケットプレイスで、みんながもっと自由に好きな商品を選んで売買できる。それなら私も欲しいかなと思ったんです」
4年半、ライセンスが取れない
会社設立は2020年11月。金融ライセンスを取得できたのは2025年5月と、4年半もの時間を要した。ブロックチェーンを用いた斬新な事業モデルは、金融庁にとっても未知の領域だった。
「金融庁もわからないんですよね。野球を見たことがない人が審判としてジャッジしなきゃいけない感覚です。ルールブックはある。でも、どうやればいいかわからない。だから、『ブロックチェーンってこんな風に動いているんですよ』というところから説明するわけです」
そう話す山本氏が、多くの壁に直面しながらも歩みを止めなかった理由を「雨乞い理論」と称して説明した。
「雨乞いって、雨が降るまでやめないんですよ。理由はないですけど、僕は(金融ライセンスが)もらえると思っていた。みんなが不安そうな顔をしていると『やめていいですよ』って伝えたこともあります。『俺は1人になってもやるから』って」
「絶対取れる、取れるまでやるから」
加藤氏も、山本氏から金融ライセンス取得の見通しをたびたび聞いていたと明かす。
「気になって聞いても、『絶対取れる、取れるまでやるから』という言い方と力強さで、そこから先は何も聞けなくなるんですよ。本当に自分の中で信じ込んで、なおかつ行動が伴っていたから、ああ、きっと取れるんだろうなって。どんなに周りの状況が不安でも、一回待って、ちょっと賭けてみようかなという気持ちになりました」
司会からの「ビジネスにおける信頼とは何か」という問いに、山本氏は“出発点”の重要性を語った。
「正しいことをしているという出発点がないと、信念も一貫性も(保つことは)無理なんですよ。シルビアのことが好きだから結婚するわけじゃないですか。そこに邪念があったら口説けない。
金融庁を口説くのも、お客様の資金をお預かりするのも、自分は正しいことをしていて、なんでやめなきゃいけないんですかという迫力。それを信念と呼ぶのかもしれません。やっぱり何か新しいことを始める時、人を説得する時に、すごく大事だなと思います」
講演の終盤、山本氏は東京ビッグサイトの観客席を埋め尽くす聴衆に向けて言葉を贈った。
「ロッククライミングって、上しか見てないじゃないですか。下を見て落ちるようなことはない。最後、死ぬ時は下を見ちゃうのかもしれないけど、その高さがわかれば、いい人生だったなと思うんじゃないかな。皆さん、1人1人が自分の人生の主人公です。自分なりのドラマチックを自分で見つけていくのが人生かな、と思います」
山本浩平/Kohei Yamamoto
デジタル証券株式会社代表取締役CEO。東京大学法学部卒、慶應義塾大学大学院法務研究科修了。2011年9月に司法試験合格後、同年12月に金融庁入庁(法務区分)。金融庁・財務省で勤務し、金融庁退職後、弁護士登録。2020年11月にデジタル証券を創業。岡山県出身、 4児の父。
加藤シルビア/Sylwia Kato
フリーアナウンサー。お茶の水女子大学理学部物理学科卒業後、2008年にTBSテレビ入社。「はなまるマーケット」「朝ズバッ!」など情報番組で経験を積み、「Nスタ」では報道番組のメインキャスターを務めるなど、情報・報道の両分野で幅広く活躍。一橋大学大学院で国際・行政修士を取得。2025年に独立し、現在はフリーアナウンサーとして、企業トップや有識者との対談進行、カンファレンスやイベントの司会・登壇など幅広く活動中。

