CAR

2026.09.22

新型エルグランドは、アルファードの牙城を崩せるのか?【試乗】

すっかり存在感が薄くなっていた日産エルグランドが16年ぶりにフルモデルチェンジ。試乗して、デザイン、快適性、パフォーマンスを確かめた。

新型エルグランドは、アルファードの牙城を崩せるのか?

ゴージャスではなく和モダンなデザイン

本連載で5月にお伝えしたように、日産エルグランドが16年ぶりにフルモデルチェンジを受けた。その時の記事でも記したように、日産エルグランドは大型ミニバンのパイオニアでありながら、販売成績では後発のトヨタ・アルファードに大差をつけられている。

日産エルグランドの失地回復はなるのか? 試乗してみると、どうやってアルファードとの差別化を図るのかという、日産の狙いがはっきりと見えた。

新しい日産エルグランドの車種構成はいたってシンプルで、パワートレインは排気量1.5ℓの3気筒エンジンとモーターを組み合わせたe-POWERのみ。エンジンは発電に専念、前後2基のモーターが4輪を駆動する。

シートレイアウトは前席から2・2・3の7人乗り仕様。グレードによってシートと内装の素材が異なるだけで、走行メカニズムやシートアレンジメントに関しては全グレード共通となる。

新型エルグランド
全長×全幅×全高は4995×1895×1970mmで、トヨタ・アルファードとの比較だと全長は同じで45mm幅広く、25mm背が高い。サイズではひけをとらなくなったどころか、やや上回る。

トヨタ・アルファードの場合は、「あの顔だから乗りたい」と「あの顔にだけは乗りたくない」という意見がまっぷたつに分かれる。対して日本の伝統工芸である組子から着想を得たという日産エルグランドのフロントマスクは押し出しが控えめで、落ち着いた印象を与える。

和モダンな雰囲気はインテリアにも共通していて、シンプルかつ上品にまとまっている。素材の手ざわりも繊細で、ゴージャスとは異なる上質な路線を狙っている。

新型エルグランド
「紫檀-シタン-」と呼ばれる品のよいインテリアカラーが、盛るのではなく引き算の美学で構成したインテリアの持ち味を強調する。

走り出してまず体感するのは、モーター駆動ならではの段差のないシームレスな加速感だ。大柄のボディが、ほぼ無音で滑らかに速度を積み増していくフィーリングは独特だ。

「e-Pedal」と書かれたスイッチをオンにすると、アクセルペダルを緩めた時の減速Gが強くなる。エンジン車のエンジンブレーキが強力になる感覚で、慣れるとブレーキを踏むことなく、アクセル操作だけで自在に速度をコントロールできるようになる。

このあたりのモーター制御技術は、世界にさきがけて日産リーフという量産BEVを世に送り出した日産の経験のなせる技だろう。よく練られた電動パワートレインは快適であることに加えて、新しい乗り物を運転しているという実感にもつながる。

エバることより、穏やかな時間を大事にする方に

高速道路で感じるのは、静粛性の高さ。たとえば本線への合流など、アクセルを強く踏む場面ではエンジンが高回転まで回って発電に努めているはずだけれど、音や振動の高まりを意識させない。

高性能の遮音ガラスや、オーディオのノイズキャンセリングシステムと同じ原理で作動するアクティブノイズコントロールなど、遮音対策は万全で、しかも最新のe-POWERは従来比で振動を約40%の減らすことに成功しているという。

新型エルグランド
エンジンで発電し、100%モーターで駆動するe-POWERは進化を重ね、新型エルグランド用はノイズも振動も大幅な低減を果たした。

興味深いのはワインディングロードでの優雅な振る舞いで、背高ボディなのに大きく傾くことなく、思い描いたラインをきれいにトレースする。

路面のコンディションに応じて素早くセッティングを変える電子制御式サスペンションと、4輪それぞれに適切なトルクを配分し、必要に応じて各車輪にブレーキもかけるe-FORCEという4駆システムが、効果的に作動している。

新型エルグランド
4輪をモーターで精緻にコントロールするe-FORCEという日産独自の駆動システムは、ドライバーには新しいファン・トゥ・ドライブを伝え、後席乗員には快適性を提供する。

2列目シートを試すと、まず前席よりシートの位置が高いシアターレイアウトによって見晴らしがいいことに気づく。ドライバーズシートで感じた圧倒的な静粛性は2列目でも変わりない。というのも日産エルグランドのアクティブノイズコントロールは、1列目、2列目、3列目それぞれのエリア毎に作動しているからだ。

静かさとともに感心したのは、無重力状態で脱力した姿勢が体への負担が少ないというNASAの知見を基に開発したゼログラビティシート。短時間しか試すことはできなかったけれど、楽な姿勢をキープできることはよくわかった。

新型エルグランド
腰の部分と肩口の2箇所でリクライニングするのが特徴のゼログラビティシート。

トヨタ・アルファードの2列目シートとの比較だと、静かさとシートの出来のよさはエルグランド、重厚で落ち着いた乗り心地や豪華さではアルファード、といったところか。狙いがまるで異なる2台なので、比較検討した時に、迷う方は少ないと予想する。

日産エルグランドで好ましいと思ったのは、穏やかで上品な内外装のデザインと心地よいドライブフィール、 そして2列目シートの居心地のよさと、1本の串が通っているように感じたことだ。デザインからパフォーマンスまで、一貫した世界観がある。

新型エルグランドの受注は好調とのことで、こういうテイストの大型ミニバンを待っていた人も多かったのだろう。アルファード一強をひっくり返すのはハードルが高いけれど、オルタナティブの役割を果たすポテンシャルは秘めている。

新型エルグランド
日産エルグランド
全長×全幅×全高:4995×1895×1970mm
ホイールベース:3000mm
パワートレイン:e-Power(1.5ℓ直列3気筒ターボエンジン+前後モーター)
駆動方式: 4輪駆動
燃費:16.8km/ℓ(WLTCモード)
価格:¥6,897,000〜(税込)

問い合わせ
日産自動車お客様相談室 TEL:0120-315-232

サトータケシ/Takeshi Sato
1966年生まれ。自動車文化誌『NAVI』で副編集長を務めた後に独立。現在はフリーランスのライター、編集者として活動している。

TEXT=サトータケシ

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