日産エルグランドが間もなく、16年ぶりのフルモデルチェンジを受ける。日産復活の切り札と期待されるニューモデルの見どころを紹介する。

ライバルとの直接対決は1対60の大敗
ビートルズとローリング・ストーンズ、巨人と阪神、ラファエル・ナダルとロジャー・フェデラーなどなど、古今東西、注目されてきたライバルは数多い。そのなかでも、これほどまでの大差がついてしまった例は少ないのではないだろうか。それは、日産エルグランドとトヨタ・アルファードのライバル対決だ。
2025年の販売台数を見ると、アルファードの8万6959台に対してエルグランドは1426台。約60倍もの大差がついている。まさに月とスッポンだ。
けれどもエルグランドの名誉のために言っておくと、ラグジュアリーな大型ミニバン市場は、もともとエルグランドが開拓したものなのだ。
1997年に登場した初代モデル(当時の名称はキャラバンエルグランド/ホーミーエルグランド)は、商用車ベースの簡素なワンボックスが主流だった大型ミニバン市場に新風を吹き込み、その大柄なボディはブルーオーシャンを悠々と泳いでスマッシュヒットを記録した。ちなみに、初代アルファードのデビューはその5年後、2代目エルグランドが発表されたのと同じ2002年だった。
1990年代後半の時期の日産は経営的に苦境に立たされており、1999年にカルロス・ゴーンがCOOに就任してからV字回復を果たしたけれど、高付加価値で利益率が高いエルグランドのヒットがなかったら、さらに深刻な事態に陥っていたかもしれない。少し大げさに表現すれば、初代エルグランドは日産の救世主だった。

前置きが長くなったけれど、この日産エルグランドが16年ぶりにフルモデルを受け、間もなくニューモデルとして登場する。エルグランドの逆襲はなるのか、再び日産の救世主となるのか。新型エルグランドの注目ポイントを紹介したい。
和モダンのデザインとファン・トゥ・ドライブで対抗
正式な市販モデルにさきがけて公開されたプロトタイプを見ると、新型エルグランドの第一のポイントはサイズアップだとわかる。特に全高を90mm以上も高くしたことが目を惹くけれど、これは「ライバル車に見下されているのがイヤ」というユーザーの声を反映したものだという。全幅も40mm以上も拡大、結果としてサイズは全長4995mm、全幅1895mm、全高1975mm。対するアルファードは全長4995mm、全幅1850mm、全高1935〜1945mmだから、体格ではひけをとらなくなった。
デザインで意外だったのは、フロントマスクの“コワオモテ”感が控えめだったことだ。押し出しの強いアルファードに対抗すべく、もっとアグレッシブな表情にすることも予想できた。けれどもミニバンの強い顔がエスカレート、インフレ気味のいま、日産はそこでは競わない方針のようだ。
フロントマスクは日本の伝統工芸「組子」がモチーフで、ボディサイドのゆったりとした面の構成と繊細なディティールの組み合わせは日本庭園から着想を得ているという。この上品な和の路線が大型ミニバンのユーザーからどのように評価されるのか、非常に興味深い。
特別なプライベートラウンジを目指したというインテリアの仕立ても品が良い。大型液晶パネルや凹凸のない静電式スイッチが新しいモノ感を演出するいっぽうで、色艶のよい内装素材や間接照明がいいモノ感を伝えてくる。
メカニズムで注目したいのは、パワートレインをハイブリッドシステムと電動4輪駆動の組み合わせだけに絞ったことだ。
発電に特化したエンジンと駆動用モーターを組み合わせるe-POWERは、新型エルグランド用に設計され、省燃費と静粛性が大幅に向上しているという。
前後のモーターが4輪のトルク配分を瞬時に最適化するe-4ORCEという電動駆動4輪制御技術がもたらす圧巻のコーナリング性能は、同社の電気自動車である日産アリアで証明されている。
つまり日産は、e-POWERとe-4ORCE、そして状況に応じて4輪の減衰力を変化させるインテリジェントダイナミックサスペンションの組み合わせがもたらす新種のファン・トゥ・ドライブで、新型エルグランドの差別化を図るつもりだ。

条件が許せばハンドルから手を離すハンズオフ走行が可能になる、日産自慢のプロパイロット2.0/プロパイロットは、さらに機能を追加して装備されるから、これも特長になるはずだ。
いずれにせよ、アルファードと兄弟車のヴェルファイアがほぼ独占しているこのセグメントに対抗馬が現れるのは、ファミリーカーとして使う層にとっても、ショーファーカーのユーザーにとっても慶事であるはずだ。正式発表を楽しみに待ちたい。

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サトータケシ/Takeshi Sato
1966年生まれ。自動車文化誌『NAVI』で副編集長を務めた後に独立。現在はフリーランスのライター、編集者として活動している。






