約5年ぶりに再開した、エイベックス会長松浦勝人による連載。現代を生きる数寄者が語る、社会のこと、仕事のこと、遊びのこととは。【その他の記事はこちら】

税金の仕組みがおかしい
納得できないことがある――それは「税金」。税金を払うとか、高いとか、そこはルールなので文句を言っても仕方がない。でも、算出方法が納得できない。
かつて持っていたクルマは、今はほとんど売ってしまっている。以前は毎日1台ずつのペースで買い集めていたけど、結局は売ってしまう。買い集めては売り払うということを何年かおきに繰り返している。
でも、1台だけ売らずに残しているクルマがあった。購入金額は5億円。限定車で世界に数百台しかないというクルマ。なんで売らなかったかというと、相場価格がどんどん上がっているから。今では8億円ほどになっているため、売ると3億円くらいの利益が出る。
これはもちろん譲渡所得になる。僕は経営者、株主としての収入もあるから、総合課税で最高税率の45%が適用されて、住民税10%と合わせて、3億円の55%を税金として支払わなければならないことになる。
ただし、投資用に購入したクルマは、5年以上保有すると譲渡所得税が半分になるという優遇措置がある。普通なら3億円の55%で約1.65億円の譲渡所得税がかかるところ、5年以上保有して売却すると、課税対象が半分になるので、税金は8000万円程度で済むことになる。
僕の周りに“5億円するクルマを5年以上持って売った人”がいないので、勝手にそう思っていたんだけど、税理士事務所に確認したら、どうも計算方法が違うかもしれないと言われた。「その5億円のクルマは減価償却しておく必要があったかもしれません」と言うのだ。
減価償却は細かなルールがたくさんあって複雑だけど、仮に耐用年数6年で、毎年1/6ずつ減価償却していくとしよう。すると、5年所有したこのクルマは5年間減価償却をして、残存価値は8300万円ほどになる。
そして、ここが問題なんだけど、売った利益は、普通は売却価格から購入価格を引いた分、ここでは3億円になると考える。ところが、税務署はそう考えなくて、残存価値8300万円のものを8億円で売ったのだから、7.17億円が利益になると考え、これが課税所得になり、そこに税金がかかる可能性があると言うのだ。
ということは、7.17×0.55×1/2=1.97億円が税金となる。これじゃあ、利益のほとんどを税務署に持っていかれてしまうことになる。
これはまあ、そういうルールなら仕方ないのだけど、このクルマは僕個人で買っている。会社ではなく個人の所有物だから、確定申告する時に減価償却なんかしてこなかった。
僕がこれまで減価償却してきたのなら話はわかる。毎年、このクルマの減価償却分8300万円は経費として認められるので、その分、僕個人の所得税が軽減される。その上で売却する時に、これまで経費として算入してきたんだから、残存価値をベースに利益を計算しろというのであれば筋が通る。でも、個人だから減価償却などせずにきたのに、売る時になって急に減価償却したものとして税額を計算するって、おかしくない?
これが、売却した日が5年に1日でも足りなければ短期譲渡となって、税率の55%がまるまるかかる。残存価値は2年残っているとして1.66億円、売価は8億円だから、利益は6.34億円。これで譲渡所得税を計算すると、6.34億円×55%=3.49億円。あれ? 僕は3億円しか儲かってないのに、売ったら3.49億円も税金取られちゃうの? さすがにおかしくないか、これ?
“おかしなこと”はたくさんある
税理士に相談したら、過去、同様のことが問題になり裁判にもなっているのだと言う。その判例を探して送ってきてくれたんだけど、読んでも何が書いてあるかわからないし、今、AIに読ませて勉強しているところ。
じゃあさ、5億円で買ったクルマが3億円でしか売れなかったら、2億円分は損失計上できるのかと言ったらそれはできない。残存価値8300万円だから「利益が1億円以上出てますね」と言って、そこに税金がかかることになる。
「税金の仕組みがおかしい」と思っている人は多いと思うし、実際、こういうおかしなことがたくさんあるんだろう。でも、税金について何か言うと、問題にしているのとは全然違うところで炎上することがある。「そんなにお金があるなら、被災地に寄付してください」とか、もっとひどいことまで言われたりする。だから、みんなそれが怖くて余計なことは言わないようにしているんだと思う。でも、僕は言ってしまうけどね。だって、おかしいもん。
松浦勝人/Masato Matsuura
1964年生まれ。エイベックス会長、音楽プロデューサー。24歳でエイベックス創業、ユーロビートブームの発信源となる。浜崎あゆみ、TRFなどのプロデュースを手がけた。
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