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2026.06.13

93歳でもクルマの免許更新テストが高得点の理由とは【和田秀樹対談⑤】

93歳の現役最高齢トライアスリート・稲田弘さんと和田秀樹さん。肉体の壁、医療の壁を超えて走り続けるふたりの“超人”対談。稲田弘5回目。【対談記事はコチラ

93歳でもクルマの免許更新テストが高得点の理由とは【和田秀樹対談⑤】
稲田弘/Hiromu Inada
現役トライアスリート。1932年大阪市生まれ。早稲田大学卒業後、NHKに勤務し、社会部記者として活躍。70歳でトライアスロンに初挑戦。2011年に78歳でアイアンマン世界選手権に出場し、2012年、2016年、2018年の3回、年代別世界王者タイトルを獲得。現在も現役選手。著書に『やれば出来る92歳のアイアンマン、世界を駆ける』。

運動を続けたから今がある

和田 今日、稲田さんのお話を聞いて、やっぱり運動と栄養が長寿の秘訣だと再確認できました。

稲田 だけど先生、僕は運動を年齢の割にやりすぎてると思うんです。どうなんですか。

和田 そこはわからないんです。やりすぎて関節を痛めるお年寄りもいるし、稲田さんのように大丈夫な方もいる。全ての人に当てはまる法則はないんです。稲田さんは元々体が強いのかもしれませんね。ただ、結果論から言うと運動を続けてきたから今の筋肉があることは間違いない。筋肉年齢は40~50代を維持しているはず。そうじゃないと、トライアスロンはできないはずだから。

今日できることを明日もできるようにすればいい

和田 年を取れば誰だって衰えます。稲田さんのような超人も例外ではありません。そこで大事なのは、衰えるのはしょうがないとして、いかに最小限に留めるか。基本的に老化予防って、今日できることが明日もできることなんですよ。

稲田 ああ、わかります。僕もできるだけ衰えを食い止めて、現状維持をしたい。そのためにはどうすればいいかを日々考えてます。トレーニング中もずっと考えてるわけですよ。

和田 素晴らしいです。

稲田 ここの筋肉が弱ってると感じたら、どうすれば鍛えられるかと考える。今使ってる筋肉とか骨とかをずっと考えてるわけですよ。おかしな話だけどね。

和田 そうやって考えたり気づいたりしたことは、ノートなどに記録したりするんですか。

稲田 はい。どんどんメモをします。人から聞いていいなとか、必要だなと思うこともね。

和田 さすがです。失礼ながら、ご高齢の方は忘れやすくなるのでメモはやっぱり大事だと思います。「忘れちゃった」で終わらず次の行動につながりますからね。それも長寿の秘訣でしょうね。

メモをして実践する。「身体強化参考メモ」の威力

稲田 テーブルの上にあるノートがあるでしょ。

和田 「身体強化参考メモ」と書いてある(笑)。中を見てもいいですか。

稲田 どうぞ。

稲田弘のノート

和田 ずいぶん書き込んでますね。さすがNHKの記者さん。

稲田 いやいや。これね、肺のトレーニング。心肺機能を上げるにはどうすればいいか、とかね。

和田 すごいね。(ページをめくりながら)足裏、太もも、腸活、筋持久力、いろいろありますね。

稲田 教えてもらったり、考えたりしたことを、その都度書き留めるんですけどね。

和田 長生きの秘訣なんていうのも書いてある。「101歳になる」と。これは目標ですか。

稲田 書いたときは、そう思ったんでしょうね(笑)。

和田 もっといきそうですね。

稲田 それはわからないけど。でも2年前にね、首の骨を折ったんですよ。自転車から転落して頸椎骨折。そのときに割と早く退院できたので、医者が「あなたは110歳まで生きられる」と言ってくれてね。僕が「110歳までしか生きられないの」と言い返したら、看護婦さんが大笑いして(笑)。だけど僕の体はけがしても、比較的早く回復してくれるんですよ。

和田 回復の早さは個人差もあるし、骨折した部位にもよります。でも、年を取ると回復しづらくなる理由は、ベッドに長期間寝て落ちた筋肉が、元に戻りにくくなることです。

稲田 年を取ると、筋肉がなかなかつかないんですよね。

和田 おっしゃる通りです。若いころはちょっと運動して肉を食べていれば筋肉はすぐにつきます。だけど年を取ると、リハビリをしてもなかなか戻らない。

稲田 僕は回復が早いです。

和田 長年のトレーニングと食事の賜物でしょうね。筋肉の細胞の修復や再生が早いのだと思います。

稲田 なるほど。筋肉を意識して使ってるのもいいのかもしれませんね。

和田 そうだと思いますよ。

稲田 例えばね、ペダリングしてるときに、脚の外側の筋肉をメインに使っていて、内側の筋肉はあまり使ってないとかね。で、練習中にそう思い付いたら、内側の筋肉を意識して使ってみるんです。すると本当にペダリングが楽になったりするんです。それがね、ものすごくうれしい。何かが込み上げてきて、思わず叫んだりすることもありますよ。「やったー!」とか「これだ!」とかね。

和田 喜ぶのも健康にいいんですよ。免疫力がグーンと上がる。

和田秀樹
和田秀樹/Hideki Wada
精神科医・幸齢党党首。1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業後、同大附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、和田秀樹こころと体のクリニック院長に。35年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『80歳の壁を超えた人たち』『幸齢党宣言』など著書多数。

工夫すれば進化し続けられる

稲田 工夫すれば、この年になってもまだ進化できる。そんなふうに思いましてね。

和田 すばらしい言葉ですね。若いころとは筋肉の具合も変わってきます。例えば、年を取るほど階段を下りるのが怖くなる。それは階段を下りるときに使う筋肉のほうが先に老化するからです。理由がわかったら足を鍛えればいい。スクワットをしたり歩いたりね。そうやって考えて工夫することが大事だと思います。

稲田 僕は歩くときに、わざとバーン、ガーン、カンカンと歩くんです。骨というのは刺激を与えないと、すぐダメになっちゃいますから。だから時々、意識的に刺激するんです。

和田 本当にすごい(笑)。

稲田 考えること自体、頭の老化防止になると思うってるから。

和田 おっしゃる通りです。

漫然と過ごさず変化に気づく

稲田 僕はね、大学のときにコーラスをやってまして。それからずっと歌を続けてきたんです。あるときメンバーの一人の声がおかしいと気づきましてね。その人に話を聞いたら、耳が聞こえにくいんだと。

和田 聞こえにくくなると、音が取りにくくなるんですよね。

稲田 そう。どうやらイヤホンで音楽を聴いていたのが原因らしい。ずっと大きな音量で聴いていたから耳がやられちゃった。だから僕はね、それ以来、テレビの音量を下げるようにしました。やっと聞き取れるぐらいの小さな音でテレビを見てるんです(笑)。

和田 (笑)。すごすぎます。

稲田 それとかね、自動車の免許更新で高齢者は認知機能検査とかいろいろやるでしょ。すると試験官の人が驚くんですよ。夜間の視野がすごいって。結局、トライアスロンをやってるからですよ。夜中に自転車で走るから、自然と鍛えられるんでしょうね。

和田 そうでしょうね。稲田さんがすごいのは、筋肉だけではなくいろんな機能を多岐にわたって鍛えているところです。老化というのは、いろいろな機能が全体的に落ちてくることだから。

稲田 トライアスロンをやってるおかげですね。いろんな意味で鍛えられている。

和田 それは間違いないです。

※6回目に続く

TEXT=山城稔

PHOTOGRAPH=鈴木規仁

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