歌舞伎町No.1キャバ嬢から、年商約35億の会社経営者へ。美容クリニック、飲食、コスメブランドなど複数事業を手がける愛沢えみりは、現在38歳。仕事にすべてを懸けてきたキャリアの裏側には、「出産」という大きな決断の壁と、“母として生きる選択”があった。働き方・結婚観・子育てを「いつか」ではなく自分軸で捉え直し、人生を“設計するもの”として生きる彼女が語る、人生のリアルとは。

幸せは“いつか”ではなく設計するもの。自分軸で定義し、自分にプレゼンする
伝説のキャバクラ嬢としてかつて歌舞伎町で名を馳せ、現在は美容クリニックや飲食店、化粧品ブランドなど5つの事業を手がける経営者・愛沢えみりさん。
キャバクラ嬢としても、そして経営者としても、常に結果を出し続けてきた彼女が、その手法と人生を切り拓くためのマインドを綴った著書『運命は自分でつくる』を上梓した。
本書は、寝食を忘れて仕事に没頭するあまり、プライベートを顧みず、「人生、間違えたかも」と後悔した30代前半のエピソードから始まる。
昔からいつかは大好きな人と結婚して、その人との子どもを産んで幸せな家庭を築きたいという夢を持っていましたが、現実はまったく追いつきませんでした。気づけば、誰にも選ばれることもなく、誰かに頼ることもままならない状況。表では華やかにしながらも、裏では孤独な思いを抱えていました。
『運命は自分でつくる』
「いつかは結婚して子どもがほしい」。そう思いながらも、その“いつか”は、日々の忙しさのなかに埋もれ、気がつけば年齢を重ねている――。そんな人は少なくないだろう。
愛沢さん自身も30代前半でそのジレンマに苛まれ、一度立ち止まって自分自身を整理してみたという。その過程で「自分はどうしても子どもがほしい」という人生の優先順位が明確になったと著書で明かしている。
現在38歳。選択的シングルマザーとして2人の子どもを育てる母となった今、「いつかは〜」と考えて先延ばしにしていたことは、甘えだったと言い切る。
「仕事なら、短期の目標、長期の目標を立てて、やるべきことを逆算して進めていきますよね。人生でもそれはやらないといけなかったんです。なんとなく、素敵に生きていたら恋をして結婚して、子どもが生まれて幸せになれる――そんなふうに思っていました。
でも、それっておとぎ話なんですよ。おとぎ話は現実には起こらない。だから結婚したいなら、どんな人と結婚したいのかを書き出して、そういう人と出会えるように動く。その意思を相手に伝える。子どもを持つかどうかも、きちんと話し合っておく。
ふんわりとさせず、自分にとっての幸せを自分軸で定義して、いつまでに何を実現したいのかを言語化する。そして自分自身にプレゼンする。そういうことが必要なんです」

出産は“誰かと決めるもの”ではない。女性が自分で選ぶという現実
30代は仕事に充実感を感じ、責任も増す時期だ。愛沢さんは、だからこそ女性は仕事と同じ熱力で「出産するのか、しないのか」というテーマにも向き合う必要があると語る。
「言い方は悪いかもしれませんが、出産に関して男性は当事者ではありません。実際に妊娠し、出産するのは女性ですから。出産するかしないかは、女性自身が決めることができる。男性の選択を待つのではなく、自分で決める。その意識をしっかり持ったほうがいい。私も結婚をせず子どもを産みましたし、考えると意外と選択の幅は広いんですよ」
愛沢さん自身は、籍を入れずにパートナーとの間に2人の子どもを出産。パートナーとは同居していないが、子どもたちの父親としての役割は彼が担っているという。
「夫婦にもいろんなかたちがありますよね。子どもが生まれても恋人同士みたいな夫婦もいれば、それと逆で子どもが生まれたら父親母親業を仕事みたいにしっかり回す夫婦……。
うちは籍は入れていませんが、子どもにとっては父親と母親。それが私たちのかたちなんです。
夫婦ではない他人の状態で子どもという宝ものを共有しているからか、喧嘩がないんです。夫婦になると『夫だからやって当然』『妻なんだからやるべき』とか甘えが出てくることもあると思うのですが、それがないぶん、距離感はすごくいいかも。
今のところ困ったことといえば、この関係性を説明するのにちょっと時間がかかるくらい(笑)。子どもが大きくなって『結婚ってなに?』と考えるようになったときは、しっかり説明できるようにはしたいですけどね」

1988年神奈川県生まれ。キャバクラ嬢として働き始めたのち、雑誌『小悪魔ageha』の専属モデルとして注目を集める。新世代“歌舞伎町No. 1キャバクラ嬢”として人気を博し、2013年には自身のECファッションブランド「emiriawiz(エミリアウィズ )」を立ち上げる。2015年には新宿に直営店を出店、月間売上2億5000万円以上を叩き出す。2019年にキャバクラ嬢引退後は、美容クリニック「VClinic 」や飲食事業、化粧品ブランド「norm+」などを展開し、現在は5つの事業を手がける経営者として活動する。
仕事も子育ても手放さない。両立ではなく“再設計”という発想
とはいえ、経営者として数々の事業を回すこと、さらにSNS総フォロワー数約180万人のインフルエンサーとして、自分にしかできない仕事も多い毎日。子どもが小さければ仕事はどうしてもセーブせざるを得ないだろうが、意外にも愛沢さんはそうはしないのだという。
「第一子が生まれたときは仕事をだいぶセーブしました。子どもがかわいすぎて離れたくなくて、なんなら仕事はもういいから子どもとゆっくり海外に住みたい、なんて思って。
そのとき会社は創業10年目。マンネリ化しているところもあって業績は伸び悩んでいました。それなのに、私がいつ辞めてもいいモードだったため、スタッフに言われたんです。『社長がこの会社に気持ちがないなら、私も辞めたい』って。そのときに気がついたんですよね。
一緒に会社をつくってきてくれたスタッフたちも私にとっては大事な存在なのに、失望させて、そんなことを言わせてしまったと。そもそも自分がつくった会社もすごく大事なものだったのにと。だから、子どもも仕事も両方守る。そう決めて今は、時間的には仕事に多くを割いています」
週7日、5人体制でシッターが子どもたちのお世話をするという。もちろん、世の中のワーママが簡単に真似できることではない。
けれど、事業を成功させながら子どもを持つことを諦めず、シングルマザーとして、独立したひとりの女性として子育てを続ける。その選択肢を実際に体現していることは、ひとつのロールモデルにもなるはずだ。
「帰ったら子どもはもう寝ていますから、一緒に過ごせるのは朝くらい。だからこそ、休日など一緒にいられる時間は徹底的に濃いものにしようと意識しています。
子どもといる時間は、絶対にスマホは見ませんし、旅行もなるべくたくさん行くようにしているんです」

俗人的こそ強み。自分が生きた分だけ寄り添える人の数が増える
現在、愛沢さんの会社VOYAGEは創業から13年を迎えた。オフィスにはアパレルやコスメのサンプルがあちこちに置かれ、展示会に向けての準備でスタッフたちが走り回っている。
愛沢さんにとって会社とは、もうひとりの子どものようなものなのか、聞いてみると。
「子どもとはちょっと違うのかな。もっと一緒に育っているというか、自分自身に近い、そんな存在かもしれません。
この会社は私自身が顔を出してインフルエンサーとして商品を宣伝していて、広告費がかからないことも強みのひとつ。だからまだまだ自分がやらないといけないことが多くて。世間的には『俗人化していて危うい』と言われることもあります。でもそこを強みにしながら、同時に組織も自走していけるようにする、それが今は大きな目標ですね。
いっときは組織を優先にして私自身の影響力を減らしていこうとも考えていたのですが、キャバ嬢から経営者へ、そして母親へと立場が変わっていって、寄り添える人の数も増えてきました。自分の経験をもって誰かに寄り添いながら、会社も成長していく。そういう唯一無二の会社になっていけたらと思っています」


