力を発揮するためには噛み合わせが大切だと言われている。トップアスリートを代表して、男子マラソンの日本記録保持者であり、長く日本の長距離シーンを牽引し続けている大迫傑選手が、歯の重要性を語った。【特集 歯こそ最強のビジネス戦略】

「パフォーマンスを発揮するためにも自分の価値を最大化するためにも、歯は重要」
結論を先に書くのならば、大迫傑選手はアスリートにとって歯は非常に重要なパーツだと考えている。だからこそ、日本人アスリートとして一世一代の舞台となると思われた東京五輪を見据え、そこからの逆算で2016年に歯列矯正に踏み切ったのだという。
「2020年の東京五輪(実際の開催はコロナ禍で延期され2021年)というのは、アスリートとしてのキャリアのなかで大きな位置づけだったので、そこに向けてあらゆる面でよい状態にしたいというのが歯列矯正を決心したきっかけでした」
歯列矯正が、必ずしも自身のパフォーマンスの向上に直結すると考えていたわけではない。変化によってバランスを崩す可能性も完全には否定できない。それでも、2020年での万全を目指すうえでポジティブな面が大きいと判断した。
「身体のバランスが変わってしまうのではないかという懸念はありましたが、長距離は歯を食いしばってパワーを出すような競技ではないので、そこまで影響は大きくないだろうと。歯を4本抜いてワイヤで矯正をしました。3年程度の過程のなかで少し身体のバランスが崩れたかなと感じた瞬間はありましたけど、矯正の前後を比較すると総合的に身体のバランスはよくなったのかなと思います」
2020年3月の東京マラソンで自身が保持していた当時の男子マラソンの日本記録を更新し、東京五輪代表の座を獲得。そして、その東京五輪では6位入賞を果たした。大迫選手の逆算は、見事にハマったといえるのではないだろうか。

プロランナー。1991年5月23日東京都生まれ。2016年のリオ、2021年の東京、2024年のパリとオリンピックに3度出場。東京五輪では男子マラソンで6位入賞を果たす。2025年のバレンシアマラソンで2時間4分55秒をマークし、男子マラソンの日本記録を更新(男子マラソンの日本記録を更新するのは3度目)。5000mの日本記録保持者でもある。
歯はアスリートの価値にも影響する
2015年からアメリカに拠点を移し、プロランナーとして活動していた大迫選手。東京五輪を見据えての歯列矯正は、アスリートとしての価値を最大化するための試みでもあった。
「スポンサーを獲得しようとした時に、歯並びがよいほうが有利に働くのではないかという考えもありました。クライアント側から見た時のネガティブな要素を減らすというか、選ばれない理由をひとつなくすぐらいの感覚ですが、自分の価値を最大化するという意味でもアスリートにとって歯並びは大切な要素だと思います。とはいえ、これはアスリートに限った話ではなく、例えば営業職の方とかも同じなのかなと」
仮に後輩のアスリートから歯列矯正について相談されたのならば、大迫選手はどう回答するのだろうか。
「基本的にはやったほうがいいんじゃないかと答えると思いますね。大人になってから歯列矯正をする人も増えましたし、マウスピース型のように目立たないでできる選択肢もあるので、悩んでいるのなら、やって損することはないのかなと。時間とお金というコストはかかりますけど、トータルで考えたらプラスの面のほうが明らかに大きいと思いますね」

痛みはアスリートにとってネガティブな要素
歯並びが整ったことで歯のメンテナンスがしやすくなったのも、歯列矯正のメリットだと大迫選手は話す。
「矯正前と比べたら矯正後のほうが虫歯になりにくくなりました。僕自身の意識が変わったことも多少影響しているかもしれませんが、歯磨きがしやすくなったからだと思います」
改めて言うまでもなく、アスリート生活において、虫歯や歯肉炎など歯にまつわるトラブルは極力少ないほうがいい。
「シンプルに痛みがある状態というのはパフォーマンスに悪影響が出ますし、ケガや風邪と同じように歯のトラブルは避けられるなら避けたいですよね。風邪なら薬を飲んで寝ていればよくなりますけど、歯の場合はそういうわけにはいかないので、虫歯になった時のダメージは大きいのかなと思います」
アスリートにとって“痛み”は極力避けるべきもの。そう考えると日々の歯磨きは、ケガを予防するためのストレッチやトレーニング、ケアのためのマッサージやアイシングなどと同等のものなのかもしれない。

日々のケアは電動歯ブラシで
歯磨きは朝・晩の2回が基本。電動歯ブラシとデンタルフロスを使って磨き上げる。
「僕はワイヤ矯正だったので、ケアをしっかりとやらなければいけなくて、その時から電動歯ブラシとデンタルフロスを使うようになりました」
遠征にも必ず持参するという電動歯ブラシ。歯磨きのコストを下げてくれることに、大きなメリットを感じているという。
「細かいことを考えずに、歯にブラシをあてておけばいいっていうのが魅力ですよね。最近の電動歯ブラシはセンサーが優秀で、次に進んでください、強くあてすぎですといったサインが出るので、任せておけばいいというか、面倒だなっていう気持ちにならずに済んでいます」
寝溜めができないのと同じように、歯磨きも週末だけ長く磨けばいいというものではない。毎日のケアとメンテナンスの積み重ねが歯および口内環境の健康につながってくる。だからこそ、大迫選手が言うように、歯磨きに対しての心理的ハードルは低いほうがいい。やはり歯のケアというのは、アスリートにとってストレッチなどのコンディショニングと近い存在なのかもしれない。

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