GOETHEとファイナンスプラットフォーム「FINCHI」がタッグを組んだメディア「GOETHE Finance powered by FINCHI」。ビジネス界で圧倒的な実績を持つリーダーたちは、「ファイナンス」をどのように捉え、活用しているのか。その最前線の思考に迫ることで、日本における「ファイナンス」をカルチャーとして定着させていく。今回はジャパネットホールディングス代表取締役社長兼CEOの髙田旭人氏を取材。前編では長崎を舞台にしたスポーツ事業を例に、ファイナンスを武器として挑戦する手法について語った髙田氏。後編ではさらに、ジャパネットならではの経営哲学としての3ステップや、「正しいことを、正しく伝えて売る」という矜持について踏みこんでいく。(前編はコチラ)

「見つける」「磨く」「伝える」M&Aでも貫く信念
長崎スタジアムシティをはじめとする新規事業への投資の一方で、事業領域の拡大やシナジーを狙いとしたM&Aも行ってきた。2018年にはナチュラルミネラルウォーターの製造・販売を行う『コウノウォーター』を、最近では、宿泊予約サービス『ゆこゆこ』や映画専門有料チャンネル『スターチャンネル』の運営会社を完全子会社化した。世間やメディアからは、この事業展開について「多角化」と評されることが多いが、髙田氏自身にその感覚はない。
「外からは多角化に見えるかもしれませんが、私としては、決まった枠組みのなかにいくつかの会社があり、すべてがつながっていて、やるべき事業を丁寧にやっている感覚です」
髙田氏が言う「枠組み」とは、ジャパネットが通販事業で大事にしてきた「見つける・磨く・伝える」の3ステップを指す。
「世の中にあるよいものを見つけ、自らの手で徹底的に磨き上げ、お客様に伝える。この思考プロセスから外れる事業には、基本的に手を出しません。過去に行ったM&Aも、一見すると異業種のようにも思えますが、実は本質的なシナジーが見こめる案件を厳選しているんです。
例えば、2025年に再編した『BS10プレミアム』では、スター・チャンネルのノウハウを活かしてさまざまな映画を放送しています。最近はサブスクで映画を観る人も多いものですが、膨大な作品のなかから自分で良作を探さなければいけません。一方、『BS10プレミアム』では、あらかじめ我々が選りすぐった作品を放送しています。これは、通販事業で行うキュレーションの考え方と同じです」
事業シナジーに加えて、髙田氏がM&Aや他社への投資を行う際に重視していることがある。ひとつは、「価値観や正しさが共有できるか」だ。通販で培った「正しいことを、正しく伝えて売る」という矜持があるからこそ、相手にもそれを求める。
「稚拙な表現かもしれませんが、私は正しい人、いい人と仕事をしたい。特に、お客様を雑に扱うような企業とは、組むべきではないと思っています」
そしてもうひとつは、「直感を信じること」。
「現在、出資しているところについても、私の直感によるところが大きいんです。もちろんそれぞれの経営者を信じていますが、仮にお金が返ってこなくても仕方がない、と割り切っています。出資判断を一つひとつ精査したら、周りからは怒られるかもしれませんね。実際、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)で投資しているSpaceXも今でこそ利益が出ていますが、当初は懐疑的な声もありました」

1979年長崎県生まれ。東京大学卒業後、証券会社を経てジャパネットたかたへ入社。バイヤー、コールセンター、物流など主要部門の責任者を歴任し、2015年にジャパネットホールディングス代表取締役社長に就任。通信販売事業に加え、スポーツ・地域創生事業にも取り組み、現在はホールディングスを含む7社の代表を務める。
磨き、伝えるM&Aと、可能性を見つけるCVC
髙田氏が話すとおり、ジャパネットは新規事業への投資やM&Aに加え、米国のペガサス・テック・ベンチャーズと組み、約300億円規模のCVCを運用している。生成AI領域ではOpenAIやAnthropic、宇宙開発領域ではSpaceXなどへ投資してきた。
「CVCでは、まず財務リターンを重視しています。早い段階から投資していた宇宙やAIの企業が成長し、得られたリターンを次の投資へ回してきました。M&Aが『見つけた後に磨き、伝えるところまで行う』なら、CVCは『未来の可能性を見つける行為』に近い。投資判断は外部へ任せきりにせず、毎月の投資会議には必ず参加していますし、経営者仲間との対話や海外視察など情報収集も欠かしません。
それこそ先日アメリカに行きましたが、朝食に1万円使う人がざらにいる世界なんですよ。そうした空気に触れ、根本的な金額感も含めて『日本は少し目線を上げなければいけない』と改めて危機感を覚えました」
現状は財務リターン優先だが、将来の事業実装も視野に入る。
「ペガサス・テックは、SkyDriveにも投資しています。例えば、空飛ぶクルマが実用化されたら、長崎空港と長崎スタジアムシティを結ぶことができるかもしれない。財務的に成立することが前提ですが、その先で長崎や本業に新しい価値を生みだせたら面白いと思いませんか?」
「ファイナンス」は武器であり、加速装置
自分なりの投資哲学を持ち、実行してきた髙田氏だが、そもそも「ファイナンス」というものをどう捉えているのか。
「私にとってのファイナンスは、『事業を加速させ、リスクをヘッジするもの』です。お金は、手元に置くことも大事ですが、働いてもらうことも大事。必要なら金利を払って借りてでも、成長へ投資します。本業は社員が主体となって進めてくれますが、どこから資金を調達し、どこへ配分するかは経営者にしか決められません。事業収益だけの一本足では、会社にとって大きなリスクにもなり得るので、投資によってヘッジしています。ファイナンスは、経営者だけが使える武器だと思っています」
10年後のジャパネットの姿は、髙田氏本人にもわからない。海外でスポーツ事業を手がけているかもしれない。あるいは、新しいテクノロジーを長崎で実装しているかもしれない。
「重要なのは、未来を決め打ちするのではなく、機会に恵まれた時に、それを摑めるだけの資金、信用、経営資源を持っておくこと。『面白いけど、キャッシュがきついから今はやめよう』という会社ではいたくない。私はせっかちなので、やりたいことがあったら我慢したくないんです。そのために資金的な余力を持っておかないといけないし、ファイナンスもその余力を生むための選択肢のひとつです」
事業を加速させた直近10年の取り組み
――FINCHIは、出資・M&Aを検討する事業会社同士をダイレクトに繋ぐファイナンスプラットフォームです。
問い合わせ
FINCHI問い合わせフォーム






