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2026.06.12

「朝から肉を食べる」「肝臓の働きが一番いいのは朝」94歳トライアスリートの元気の素【和田秀樹対談④】

93歳の現役最高齢トライアスリート・稲田弘さんと和田秀樹さん。肉体の壁、医療の壁を超えて走り続けるふたりの“超人”対談。4回目。【対談記事はコチラ

若いころからよく食べる

稲田 最近、本当に体にガタがきているのを感じるようになってね。運動能力もそうだけど、筋肉や骨もガタガタになっているのがわかるんです。例えばランでも、同じ量を走るのがだんだんきつくなってくる。すぐに息が上がって心肺機能が落ちてるなと。そういう現象があるからね。

和田 さすがですね。ご自分の体のことをよくわかっておられる。

稲田 90代になって3年目ですが、運動量は80代のときと比べて結構減っている。だけど食べる量は変わらないから、腹が少し出てきて。こんなの初めてですよ。

和田 見た目、筋骨隆々だけど。

稲田 (笑)。体重が増えてくると、足に負担かかるでしょ。だから余計走りにくくなってる。しかも膝をちょっと痛めてましてね。いろんな悪循環が起こってきちゃって、弱っちゃいますよ。

和田 だけど、ちゃんと食べ続けられるのはやっぱりすごいです。年を取ると代謝は落ちるので、同じ量を食べ続ければ、太ってくるのは当然です。普通は消化・吸収も悪くなり胃も小さくなるので、だんだん食が細り、痩せてくる。稲田さんはその逆。無理して食べるのはお勧めしませんが、食べられるなら、食べたほうがいいです。

稲田 僕は若いころから大食漢でね。高校1年のときには大食い選手権に出たこともあるほどです。2位でしたけどね。

和田 そうなんですか(笑)。

稲田 今でも出されたものはみんな食べちゃう。戦中派ですからね、食べ物は絶対に残さない。必死になって食うわけですよ。もちろん若いときより食べる量は減ってるけど、年齢からすれば食べ過ぎでしょうね。

タンパク質をたっぷり摂る。それが長生きの秘訣

和田 肉もお好きですか。

稲田 はい。とにかく肉ですね。僕らはやっぱりタンパク質を摂らないとダメだから。

和田 そうですね。スポーツされる人はなおさらです。お年寄りが健康を維持するには、タンパク質を摂ることが絶対条件です。この連載で登場する方々は、例外なくお肉が好きです。

稲田 ああ、やっぱり。僕はね、肉も魚も、朝からいろいろ食べてますよ。

和田 いいですね。

稲田 ホタテとかの貝類なんかも入れたりして、朝は結構、タンパク質を摂りますね。

和田 それ、すごく大事です。日本人は朝、タンパク質を摂らない人が多いけど、欧米の人はハムエッグとか食べるでしょ。卵2、3個にソーセージ4、5本みたいな感じで。それは理に適ったことなんです。なぜなら筋肉を維持するにはタンパク質を摂り、分解しなければならないから。それには肝臓の働きが大事なんですが、肝臓の働きが一番いいのは朝なんです。その次が昼、夜は一番悪い。夜飲んだお酒が朝まで残るのは、肝臓の働きが悪くなっているからです。

稲田 なるほど。

和田 だから本当は朝、十分に肉を食べ、昼も牛丼やチャーシュー麺を食べる。夜は肉を減らして胃や肝臓を休ませるのが理想です。と言いながら、僕はどうしても夜はお酒を飲みながら肉もたくさん食べてしまう。よくないのはわかってるんですけどね(笑)。

稲田 (笑)。

伝説の鍋を紹介

稲田 僕はね、朝がめちゃくちゃ多いんですよ。自分でもうんざりするほど。

和田 どんな食事ですか。

稲田 あそこに鍋が置いてあるでしょ。あれを使って2鍋作るんです。1鍋は野菜が中心。もう1鍋は肉が中心です。その2鍋を一度に作って、今日半分食べて、残りを翌日に食べるんです。

和田 結構、大きな鍋ですね。あのサイズで2鍋作るんじゃ量も相当です。材料や分量は決めてるんですか。

稲田 目分量です。材料はほうれんそう、小松菜、たまねぎ、キャベツ、ブロッコリー、なす、ごぼう、ピーマンなんかをね、冷蔵庫から出してきて、ざくざく切って鍋に入れていきます。だいたい鍋の半分が埋まるくらいまで入れたら、水を入れて火にかける。煮立ったら、味付けにコンソメとかニンニク、サバの味噌煮の缶詰を入れます。

和田 すごい種類ですね。

稲田 はい。それが野菜の鍋ね。もう1鍋は肉の鍋です。豚肉がメインで、鶏肉、冷凍あさりやホタテ、にんじん、にら、しいたけ、エリンギ、舞茸、山芋なんかも入れて、コンソメと味噌で味付けをします。

和田 すごいですね。

稲田 調理中にも合間にリンゴをかじったり、バナナを食べたりします。

和田 すごい(笑)。

稲田 出来上がったら、ミルで挽いた黒ゴマをお皿に入れて、そこに肉を入れる。野菜の鍋はケチャップをかけます。

和田 糖分、炭水化物は?

稲田 野菜や肉と一緒に全粒粉の食パンや玄米を食べます。パンには純粋ハチミツとブルーベリーをかける。豆乳も飲みます。

和田 徹底していますね(笑)。

稲田 肉は豚肉と鶏のむね肉を食べるよう、コーチに言われてるんです。だけど一応、必要な栄養素を摂り入れられるよう、全部自分で考えて食べてます。

和田 朝だけでその量ですからね。でも鯖缶のDHAとか本当によく考えられています。

和田秀樹/Hideki Wada(左)
精神科医・幸齢党党首。1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業後、同大附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、和田秀樹こころと体のクリニック院長に。35年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『80歳の壁を超えた人たち』『幸齢党宣言』など著書多数。

稲田弘/Hiromu Inada (右)
現役トライアスリート。1932年大阪市生まれ。早稲田大学卒業後、NHKに勤務し、社会部記者として活躍。70歳でトライアスロンに初挑戦。2011年に78歳でアイアンマン世界選手権に出場し、2012年、2016年、2018年の3回、年代別世界王者タイトルを獲得。現在も現役選手。著書に『やれば出来る92歳のアイアンマン、世界を駆ける』。

20数年同じ鍋。豊富な材料から栄養素を満遍なく摂る

和田 いつごろからそういうお食事をされてるんですか?

稲田 トライアスロンを始めたときは女房と同じものを食べていました。だけど女房が亡くなりトライアスロン一筋になってからは、いろいろと情報が入ってくるようになりましてね。運動するにはタンパク質も脂肪も必要とか、どの食材には何が含まれてるからいいとかね。

和田 なるほど。

稲田 たまたま水泳を一緒にやってるグループに管理栄養士さんがいましてね。その人から栄養学の基礎のようなことを教わったのが大きかったですね。せっかく食べるなら、必要な栄養素がたくさん入っているほうがいいと。

和田 それを毎日。

稲田 はい。二十何年、基本は毎日同じ鍋(笑)。だけど入れる食材はだんだん増えてるんですよ。これがいい、あれがいいと言われると入れてみる。だからすごい量になっちゃうんですよ。

和田 作るのに時間もかかるでしょう。

稲田 朝食は出来上がるまで1時間以上かかるんですよ。そういう理由もあって、2日分にしてるんですけどね。

朝と夜は同じものを食べる。昼は適当

和田 鍋は朝だけですか。

稲田 いや、朝と夜です。朝と夜は同じものを食べてます。朝はパン、夜は玄米など、主食は変えていますけど。

和田 まさに体をつくる食事ですね。お昼は?

稲田 お昼は外でトレーニングをしているので、コンビニなどで済ませます。おにぎりメインみたいな感じで、昼はあんまりこだわってません。外食もしますよ。うなぎを食べに行ったりね。自転車で行くんですけど。

和田 お近くですか。

稲田 はい。片道60㎞くらいですかね。女房のお墓の近くに美味しいうなぎ屋さんがあるんです。

和田 (笑)。行動が桁違いです。でもうなぎは健康にとてもいいですからね。栄養を摂るだけでなく、適度な自由や楽しみがあるところも素晴らしいと思います。

※5回目に続く

TEXT=山城稔

PHOTOGRAPH=鈴木規仁

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