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2026.05.16

エイベックス松浦勝人は“物価高”を感じる? 「最高ランクは正直、もう無理」なモノ

約5年ぶりに再開した、エイベックス会長松浦勝人による連載。現代を生きる数寄者が語る、社会のこと、仕事のこと、遊びのことと。【その他の記事はこちら】

エイベックス松浦勝人は“物価高”を感じる? 「最高ランクは正直、もう無理」なモノ

散財欲を満たすだけに買い、誰かにあげる

花粉症があまりにもひどくて、毎年、春になるとハワイに逃げている。ハワイでは何もしない。ひたすら寝る。ワイキキから30分ぐらいのところに家があるんだけど、街に遊びに行くということもほとんどしない。街に行くとひどい目に遭うからだ。

僕がハワイに来ているということをなぜかみんな知っていて、ブランドものを売っているお店が、僕が好きそうな商品をそろえて待っている。そこまでされると、まったく行かないというわけにはいかないから顔だけ出す。すると、「以前おっしゃっていた品をがんばって確保しました」と言われる。こうなったら、もう、買わないわけにいかない。そしてまた別の商品が出てくる。「いらない、いらない」とがんばるんだけど、結局買ってしまう。気がつくと、後で後悔するほどの散財をしている。

あんまり散財癖がひどいものだから、AIに相談してみた。そうしたら、「ブランド品の購入は月300万円以内に抑えるようにしましょう」と叱られた。でも、散財欲が強くなっている時は「300万円しか使っちゃいけないのかよ!無理無理!」になってしまう。

それだけ買っても、自分で使うものはほとんどなくて、すべて誰かにあげるもの。しかも、誰にあげるとも決まっていない。ただ、散財欲を満たすだけに買って、部屋に並べてある。そして、誰かにプレゼントする機会ができると、在庫一掃セールみたいにドーンとあげてしまう。

相手はものすごく喜んでくれるので、僕もそれがうれしくてずっとそうやってきたけど、最近は、お金を人のためだけじゃなくて、少しは自分のためにも使った方がいいのじゃないかと思うようになった。それで、ハワイにいても、街には極力近寄らないようにしている。

ハワイでの生活に必要な生鮮食料品などは、向こうのスタッフに購入を任せているけど、今年はみな「物価がすごく高くなっている」と言っていた。ニュースなどでも、海外の物価がものすごく高くなっているという話題を目にしたことがある。確かにワイキキのファストフード店をのぞいても、「あれ、こんなに高かったっけ?」と思うことがあった。それでも、僕が自分で買うのは、人にプレゼントするためのバッグとか服とかで、世界どこで買っても同じ値段だろうから、ハワイの物価が高くなったとはあまり感じなかった。

音楽フェスのVVIP席6000万円!?

それよりも、日本の物価がものすごく上がっていることを感じる。10年ほど前、都内でホテル暮らしをしたことがある。2ヵ月か3ヵ月ぐらい住んでいた。当時でもじゅうぶん高かったけど、サービスの質や快適さを考えれば納得がいく価格だった。でも、今、価格が3倍以上になっている。さすがに無理。もうホテル暮らしなんかできない。

日本のホテルはこの数年でものすごく高くなった。理由はよくわからないけど、インバウンド旅行が盛りあがって、アジアの富裕層をターゲットにしているんじゃないかと思う。

2026年12月にタイで音楽フェス「トゥモローランド」が開催される。どのような感じになるのか視察に行こうと思っている。視察に行く時は、いつもいちばんグレードの高いVVIP席を予約して、サービスの質などを観察して、ウルトラジャパンに活かそうと考えている。

ところが、トゥモローランドのVVIP席を予約しようと思ったら、3日間通しで6000万円もすることがわかった。さすがに予約する手が一瞬止まった。ワンランク落としても、1日1500万円ぐらい。3日で4500万円もする。それでも僕は全然いいんだけど、知っているDJもたくさん出演していて、ステージの上からこちらがわかるわけだから「あ、マツウラさん、ランク落とした!」ってなる。そうなると、今度は僕たちが出演を依頼する時に交渉しづらくなるんじゃないかとかいろいろ考えてしまう。

ひとり分の席じゃなくてVVIPスペースだから20人か30人は入れる。でも、日本から30人誰かを連れて行くかといったら、そこまではしないよね。トゥモローランドもアジアの富裕層をターゲットにしているんじゃないかと思う。もう、アジアでも日本でも“日本人”は相手にされていないのかもしれない。

僕はこれまで何をするにしても、いちばんランクの高いものを予約してきた。ホテルでもフェスでも、「最高ランクのやつ、予約しておいて」と頼めばよかった。でも、正直、もう無理だと感じる。僕の収入が特別減っているわけでもないのに、周りの価格がどんどんあがって、もうついていけない。円安のせいなのか、アジアに桁違いの富裕層が大量に登場してきているのか、そこはよくわからないけど「なんでも最高ランクで」というわけにはいかなくなってきた。

もう60歳になっていてよかった、と思う。これが40歳だったら、「あいつ、ランク落とした」と言われるのが嫌で、無理してでも最高ランクを予約してしまうもの。今は最高ランクじゃなくても、自分が楽しめればそれでいいと思えるようになっている。この年齢になって、いろいろなものがデトックスされていっている。

松浦勝人/Masato Matsuura
1964年生まれ。エイベックス会長、音楽プロデューサー。24歳でエイベックス創業、ユーロビートブームの発信源となる。浜崎あゆみ、TRFなどのプロデュースを手がけた。
X:@maxmatsuuratwit
YouTube:@masatomaxmatsuura

TEXT=牧野武文

PHOTOGRAPH=長尾真志

STYLING=安部賢輝

HAIR&MAKE-UP=小林潤子(AVGVST)

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