ベントレーのラインアップにあって、最高のコンバーチブル グランドツアラーである「コンチネンタルGTC」に、最上級グレードの“マリナー”が登場。内外装から走行性能に至るまですべてが上質で快適なその出来栄えに感嘆するばかりだった。

ビスポーク部門、マリナーによる特別仕立て
ベントレーに詳しい方ならご存知かと思うが、マリナー(MULLINER)とは、ベントレーのビスポーク部門のこと。
その歴史は実はベントレーよりも長く、馬車と馬具の製造業を営んでいた16世紀にまで遡る。1870年には、馬車製造会社「MULLINER・ロンドン・リミテッド」を設立。社交界のエリートたちのニーズに応えたオーダーメイドの馬車は高い評判を呼ぶようになる。
20世紀に入った頃、マリナーは馬車製造から自動車のボディとキャビンを製造するコーチビルダーへと転身。1920年代にはまだ創業間もないベントレーのボディ製造を手がけ、これがマリナーとベントレーのパートナーシップの始まりだった。そして現在はベントレーのパーソナルコミッショニング部門として顧客の要望に応えている。

従来のマリナーといえば、世界に1台のモデルをつくるいわゆるオートクチュールだったが、近年はベースモデルをもとに内外装に匠の技を盛り込んだプレタポルテも手がけるようになった。今では顧客の約70%がマリナーのオーダーメイドオプションを選択するという。
微に入り細にわたる匠の技
「ベントレーコンチネンタルGTCマリナー」は、コンチネンタルGTCのラインアップにおける最上級グレードである。

エクステリアでは、ブラックとクロームが組み合わされたマリナー専用のフローティングダイヤモンドデザインのフロントグリルが特徴。ロワーグリルや車両の側面、テールパイプなどふんだんにクロームパーツが用いられる。また専用デザインの22インチホイールには、走行中にタイヤが回転しても常にBのエンブレムが水平を保つセルフレベル調整機能が備わっている。

ドアを開けると光のショーが地面に投影され、最後にベントレーのエンブレムが映し出されるウェルカムライトシークエンス機能をもって出迎えてくれる。
キャビン内は、マリナーが厳選した3色を組み合わせたオーダーメイドの内装デザイン。アクセントカラーのパイピングや、手縫いのシートに施されたマリナー独自の刺繍、そしてダイヤモンドパーフォレーションパターンなど、随所にクラフツマンシップが息づく。コンバーチブルだけにトノーカバーに至るまで職人技による贅沢なステッチが施されている。
メーターなどにはデジタルスクリーンを採用しつつも、丸いクローム仕上げのエアコン吹き出し口など100年におよぶ伝統を守り続けている。センタースクリーンはローテーティングディスプレイになっており、ナビゲーションなどが不要な際には3連のアナログメーターに切り替えることも可能だ。
あふれ出るパワーで滑るように走る
パワートレインは、ハイパフォーマンスグレードであるGTCスピードと共通の「ウルトラ パフォーマンス ハイブリッド」。これは2024年にW12エンジンにとってかわるものとして投入された新世代のもので、600PSを発生する4リッターV8エンジンと、190PSの電動モーター、総電力量25.9kWhのバッテリーを組み合わせたプラグインハイブリッドとなっている。
システム最高出力は782PS、最大トルクは1000Nmとベントレー史上最強のパワーを発揮し、0-100km/h加速3.4秒、最高速度308km/hに到達する。
満充電時の電動走行可能距離は約80km。ゆっくりとアクセルペダルを踏むと、するすると音もなく走り出し、とにかくしなやかで滑らかですべるように走る。
足回りには2チャンバー式にエアサスペンションに新設計のツインバルブダンパー、そして電子制御式アンチロールシステムや全輪操舵(AWS)システムを備えており、高速道路などではフラットかつ抜群のスタビリティを誇り、狭い路地や駐車場などでは取り回ししやすい。
4層構造のルーフを閉じていると、コンバーチブルであることを忘れてしまうほど静かだ。ルーフは50km/h以下であれば走行中でも開閉が可能。リアシートを囲むようにすっきりとルーフは収納され、オープン時のスタイリングも美しい。
ルーフを開け放ち、箱根のワインディングを流していると露天風呂につかっているようなえもいわれぬ心地になった。設計思想として“ウェルビーイング”を掲げているベントレーだが、なるほどと納得させられる出来栄えだった。







