CAR

2026.03.14

最後の水平対向自然吸気エンジン!? 最新ポルシェ911「GT3」を試乗

ポルシェ911シリーズにおいてレーシングカー直系のモデルが「GT3」。軽量化のために快適装備を省き、そして白眉ともいえる4リッター水平対向6気筒自然吸気エンジンを搭載している。ベースの911が後期型(通称992.2型)へとモデルチェンジしたことに伴い、GT3も最新モデルになった。ターボもハイブリッドも搭載していないピュアな911の気持ちよさを体感した。

自然吸気エンジンと後輪駆動を組み合わせた硬派仕様

現在のポルシェ911のラインアップは、ベースのカレラやカレラSでもターボを採用しており、またカレラGTSやターボモデルでは、さらにハイブリッド機構を備えている。

ボディサイズは全長×全幅×全高/4570×1852×1279mm。ホイールベース/2457mm。車両重量は1460kg。

そうしたなかでサーキットでのパフォーマンスを重視してレーシングカー直系の専用シャシーをもち、できるだけ軽量でピュアな乗り味を実現するために自然吸気の水平対向エンジンを採用し、後輪駆動(2WD)であることにこだわり続けているのが「GT3」だ。

そもそもGT3は1999年、996型(5代目)の時代にレース車両のホモロゲーションモデルとしてデビュー。以降、軽量なレースカー直系のモデルとして進化しており、997、991、992のそれぞれのジェネレーションで前期/後期モデルがつくられ、この最新型は8代目となる。

いま内燃エンジン車、特に自然吸気エンジンが直面している課題は年々厳しくなる排ガス規制に対応すること。GT3以外の911はターボ化、ハイブリッド化することで性能をアップしながら規制をクリアしているが、いまや自然吸気エンジンでそれを両立させるのは非常に困難である。

実際のところ最新型の4リッター水平対向6気筒エンジンは、前期型と比較してみると最高出力は510PSと、同じ数値をキープしているが、最大トルクは450Nmと、20Nmダウンとなっている。これは排ガスを浄化するために装備された触媒の影響によるもののようだが、新型にモデルチェンジしてタイムが遅くなるなんてことをポルシェの開発者たちが許すはずもない。

触媒によって生じるパワーロスを、カムシャフトやスロットルバルブ、オイルクーラーなどの最適化によって最低限に抑え、さらにPDKとMTのいずれもトランスミッションの最終減速比を先代モデルよりも8%短縮することで、PDK仕様車は0−100km/h加速3.4秒、MT仕様車は3.9秒と前期型と同タイムを維持している。

あえてアナログな要素が残されているのもGT3の魅力

右が大型リアウイングを標準装備するベースモデル。左がリアウイングのない「ツーリングパッケージ」。

GT3は生産台数が少なく、また世界中に納車を待っているオーナーがいるため、試乗車やプレスカーもほとんど用意されないのが現状だ。そこで今回はいち早く納車されたオーナーの協力により試乗することが叶った。

GT3には、大型リアウイングが標準装備されたベース車と、あえてそのリアウイングを省いたツーリングパッケージというモデルがあるが、今回の試乗車はベース車にオプションのヴァイザッハパッケージを装着したモデルだった。

ちなみにヴァイザッハパッケージとは、フロントリッド、ルーフ、リアウィングをはじめインテリアにもカーボンパーツを多用した軽量仕様でそのオプション価格は約270万円〜。これに加えてさらにマグネシウム鍛造ホイールや軽量スポーツバケットシートといったアイテムを組み合わせることもできる。

エクステリアにおける前期型との違いは、フロントバンパーからデイタイムなどの補助ライトがなくなったこと。ウインカーなども含めてLEDマトリックスヘッドライト内に集約されている。またフロントディフュ−ザー、リップスポイラーの形状が変更されており、アンダーボディのフィンを改良することで空力性能を改善している。リアまわりでもディフューザー、エアインレット、リアリッドのデザインが変更されている。

インテリアではメーターが全面デジタルスクリーンになった。エンジンの始動は他の911モデルではスタート/ストップボタンで行うようになったが、GT3にのみ従来同様のノブをひねるアナログな所作が残された。またトランスミッションは6速MTか7速PDKが選択可能となっている。他の911モデルではカレラTを除いてPDKのみの設定となり、小さなシフトセレクターで操作するのに対して、GT3には昔ながらのMTと見紛うような立派なシフトノブが備わっている。

9000回転まで一気に吹け上がるエンジンに感動

試乗車はPDK仕様だった。911の伝統的な鍵をひねるような操作によってエンジンが目覚めると、シフトをDレンジに入れて走りだす。乗り心地はもっと硬いものを想像していたが意外にしなやかで、低中速域でもサスペンションがしっかりとストロークし跳ねるような挙動はまったくみられない。これなら街乗りも不満なくこなせる。シャシーに関しても高速走行時のダウンフォースの増加やブレーキング時のピッチングを低減、ブレーキ冷却性能の向上が図られるなど、レーシングカーさながらのマニアックな改善が施されている。

高速道路で折をみてスポーツモードに切り替えアクセルペダルに力を込めてみる。いまどきレッドゾーンの9000回転まで一気に吹け上がるエンジンなんてめったに味わえない。これぞ自然吸気の醍醐味だ。排ガス規制だけでなく、騒音規制もクリアしながら、こんな楽しいエンジンをつくりあげていることにさすがはポルシェと唸るほかない。

ポルシェから正式なアナウンスがあったわけではないが、実はこれが最後のGT3になるのではという噂がある。しかし、2025年12月、欧州委員会はこれまで掲げてきた2035年の内燃エンジン車新車販売禁止方針を事実上撤回することを発表した。これまで同様にCO2排出量の削減は条件として課せられるが、カーボンニュートラル燃料の普及など条件が整えばまだまだ内燃エンジンも延命できそうだ。これからも水平対向自然吸気エンジンを搭載するGT3が走り続けられることに期待したい。

TEXT=藤野太一

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