CAR

2025.03.12

世界中で依頼が殺到。ポルシェ911のレストアで注目される「Singer」とは

2024年5月、ポルシェ911のレストア事業を手がけるシンガー・ヴィークル・デザインと、輸入車ディーラー事業などを行うコーンズ・モータースがパートナーシップを締結した。世界中のエンスージアストが注視するシンガーとはいかなるブランドなのか、その成り立ちを紹介する。

「Porsche 911 Reimagined by Singer」の側面
フォルムは930型を思わせるが、ベースは964型だ。

ヒストリックカー界の革命児

ポルシェ911のレストアで注目されるシンガーというブランド名は、創業者のロブ・ディキンソンがキャサリン・ホイールというオルタナ系ロックバンドのボーカリストだったことに由来する。アイアン・メイデンのボーカル担当のブルース・ディッキンソンはロブの従兄弟に当たるから、“シンガー”の家系だと言ってもいいかもしれない。

イギリス東部に生まれたロブはクルマも好きで、コベントリー大学でデザインを学んだ後、デザイナーとしてロータスに入社する。しかしミュージシャンの夢を諦められず、1990年にキャサリン・ホイールは音楽シーンにデビューする。

バンドで活躍していた1996年、ロブは’87年型のポルシェ911を手に入れた。その魅力に取り憑かれた彼はバンド解散後、2000年代にアメリカ西海岸に渡ってソロ活動を続けるかたわら、ポルシェのレストアにも熱中するようになった。

そして2009年、カリフォルニアにシンガー・ヴィークル・デザインを設立、モントレー・カー・ウィークに出展したポルシェ911が評判となり、レストアの依頼が殺到した。現在はイギリスにも拠点を置き、高まる需要に応える体制を整えている。

シンガーは、自社が手がける車両を「Porsche 911 Reimagined by Singer」と呼ぶ。つまりシンガーによって再構築されたポルシェ911だ。ベースとなるのは1989年から1994年まで生産された、964型と呼ばれる第3世代のポルシェ911。すべての部品を取り外した後、カーボンパーツが組みこまれ、エンジンや足回りは、オーダーに応じてサーキット仕様にもツーリング仕様にもセッティングできる。

「シートが破れても補修しない」のが常識であるほど、ヒストリックカーの世界はオリジナル至上主義。そこにシンガーは新たな価値観を持ちこんだ。バンド時代の音楽スタイルと同じく、オルタナティブなのだ。

Porsche 911 Reimagined by Singer

「Porsche 911 Reimagined by Singer」のプレートロゴ
Porsche 911 Reimagined by Singer -DLS Servicesのエンジンは、オリジナルの964型では排気量が3.6ℓだったものを4ℓにまで拡大した水平対向6気筒ターボ。「WILLIAMS」のプレートが貼られ、F1で知られるウィリアムズが関わっていることを示す。凝った形状のバケットシートは複数の素材を組み合わせたもので、デザインから性能までいっさいの妥協を許さない姿勢がうかがえる。価格要問い合せ。

問い合わせ
コーンズ・モータース https://singervehicledesign.com/ja

TEXT=サトータケシ

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