2024年5月、ポルシェ911のレストア事業を手がけるシンガー・ヴィークル・デザインと、輸入車ディーラー事業などを行うコーンズ・モータースがパートナーシップを締結した。世界中のエンスージアストが注視するシンガーとはいかなるブランドなのか、その成り立ちを紹介する。

ヒストリックカー界の革命児
ポルシェ911のレストアで注目されるシンガーというブランド名は、創業者のロブ・ディキンソンがキャサリン・ホイールというオルタナ系ロックバンドのボーカリストだったことに由来する。アイアン・メイデンのボーカル担当のブルース・ディッキンソンはロブの従兄弟に当たるから、“シンガー”の家系だと言ってもいいかもしれない。
イギリス東部に生まれたロブはクルマも好きで、コベントリー大学でデザインを学んだ後、デザイナーとしてロータスに入社する。しかしミュージシャンの夢を諦められず、1990年にキャサリン・ホイールは音楽シーンにデビューする。
バンドで活躍していた1996年、ロブは’87年型のポルシェ911を手に入れた。その魅力に取り憑かれた彼はバンド解散後、2000年代にアメリカ西海岸に渡ってソロ活動を続けるかたわら、ポルシェのレストアにも熱中するようになった。
そして2009年、カリフォルニアにシンガー・ヴィークル・デザインを設立、モントレー・カー・ウィークに出展したポルシェ911が評判となり、レストアの依頼が殺到した。現在はイギリスにも拠点を置き、高まる需要に応える体制を整えている。
シンガーは、自社が手がける車両を「Porsche 911 Reimagined by Singer」と呼ぶ。つまりシンガーによって再構築されたポルシェ911だ。ベースとなるのは1989年から1994年まで生産された、964型と呼ばれる第3世代のポルシェ911。すべての部品を取り外した後、カーボンパーツが組みこまれ、エンジンや足回りは、オーダーに応じてサーキット仕様にもツーリング仕様にもセッティングできる。
「シートが破れても補修しない」のが常識であるほど、ヒストリックカーの世界はオリジナル至上主義。そこにシンガーは新たな価値観を持ちこんだ。バンド時代の音楽スタイルと同じく、オルタナティブなのだ。
Porsche 911 Reimagined by Singer

問い合わせ
コーンズ・モータース https://singervehicledesign.com/ja