世界中のクルマ好きの間で話題となっているブランドが、空冷ポルシェのレストアを手がけるシンガー・ヴィークル・デザイン。2025年1月に行われた「東京オートサロン2025」のブースにも、多くのファンが集まっていた。
ベースとなるのは964型のポルシェ911
2025年1月10日(金)から12日(日)にかけて千葉県の幕張メッセで開催されたカスタムカーの祭典「東京オートサロン2025」は、前回を2万8333人も上回る25万8406人の入場者で賑わった。
会場でひときわ熱い視線を集めていたのが、コーンズ・モータースが出展したシンガー・ヴィークル・デザイン(以下、シンガー)のブース。ここ数年、ポルシェのファンやスポーツカー愛好家の間で話題になっているブランドだ。2024年5月に、コーンズ・モータースがシンガーとのパートナーシップ締結を発表したことで、この伝説のブランドが日本でも身近な存在になったのだ。
ここでは、シンガーとはいかなるブランドなのかを紹介したい。
2009年にアメリカ・カリフォルニア州で創業したシンガーは、ポルシェ911のレストアを手がけている。シンガーがレストアしたポルシェ911は、「Porsche 911 Reimagined by Singer」と呼ばれる。つまり、シンガーによって再構築されたポルシェ911なのだ。シンガーとはあくまでレストアを行う企業であり、公式に「自動車の製造、販売は行っておりません」とアナウンスしている。
レストアのベース車両となるのは、1989年から94年まで生産された「タイプ964」というコードネームで呼ばれる第3世代のポルシェ911。なぜ964型がベースになるのかというと、第一に個体数が多いという理由が挙げられる。また、964型からオートマチックトランスミッション(ティプトロニック)仕様が設定されたので、それ以前のモデルよりセンタートンネルが広くなっている。このスペースを活用すると、搭載するトランスミッションの自由度が高まるのだ。そしてもうひとつ、第4世代の993型からリアのサスペンションが複雑なマルチリンクになるので、シンプルな964型のほうがチューンしやすいという理由もある。
シンガーがレストアしたポルシェ911には、ナローと呼ばれる初代をモチーフにしたものも、2代目の930型にオマージュを捧げる仕様もあるけれど、こうした理由からベースはすべて964型になっている。
元の状態に戻すのではなく、進化させるレストア
ここまでレストアという言葉を使ったけれど、シンガーのレストアは一般的なヒストリックカーのレストはとは一線を画す。
まずボディからすべてのパーツが外され、いわゆるホワイトボディの状態に戻される。普通のレストアと異なるのは、ボディの補修や塗装をするだけでなく、軽量化やボディ剛性の向上を図るべく、カーボンのパーツを組み込むところだ。展示された写真のモデルの正式名称は「Porsche 911 Reimagined by Singer – DLS Service」というもので、「DLS」とは「Dynamics & Lightweighting Study」の略。つまり元に戻すレストアではなく、さらに進化させるレストアなのだ。
「Porsche 911 Reimagined by Singer」は、サーキット走行専用の武闘派から、ツーリング仕様の温厚なタイプまで、幅広く顧客の希望に応じる。たとえば、「Porsche 911 Reimagined by Singer DLS Turbo」というツインターボの超高性能仕様では、エンジンの最高出力は700hpに達するという。
どんな仕様にレストアするにしても、重要なのは顧客とシンガーとの意思の疎通だ。ここで、高級車に関する豊富なノウハウを持つコーンズ・モータースがパートナーシップを結び、購入、サポート、メインテナンスをサポートするのには大きな意味がある。
コーンズ・モータースがロールス・ロイスとベントレーの正規輸入代理店になったのが1964年だから、高級車とそのオーナーとともに歩んできた60年以上の歴史があるのだ。「コーンズを通すのなら安心」という方も多いだろう。いずれにせよ、圧倒的な人気を誇る空冷ポルシェのレストアを手がけるシンガーが日本でサービスを展開するのは、クルマ好きにとって慶事と言っていいだろう。
問い合わせ
コーンズ・モータース https://singervehicledesign.com/ja/