CAR

2024.11.12

電動版Gクラス登場。電気で走るメルセデス・ベンツ「ゲレンデ」は、なにが凄いのか?

2024年10月23日、メルセデス・ベンツ G580 with EQ Technologyが発表された。発表会で明かされた、このクルマのカギとなるテクノロジーを紹介したい。

メルセデス・ベンツ G580 with EQ Technology Edition 1
メルセデス・ベンツ G580 with EQ Technology

その場でぐるっと旋回する4輪独立モーターの威力

メルセデス・ベンツ G580 with EQ Technology(以下、G580)は、バッテリーに蓄えた電気だけで走るピュアな電気自動車(BEV)。2023年秋のジャパンモビリティショー2023でお披露目されたコンセプトEQGの市販モデルだと考えていいだろう。

メルセデス・ベンツのGクラスといえば、大排気量のガソリンエンジンや、ドスンという低速トルクを発生するディーゼルエンジンを搭載して豪快に走るというイメージがある。電動版Gクラスの魅力、ストロングポイントはどこにあるのだろうか。

アンヴェールされたG580を前に、メルセデス・ベンツ日本のゲルティンガー剛CEOは、「メルセデス・ベンツの頂点であると同時に、BEVの頂点です」と述べた。そして、「4輪を個別に制御するということは、筋肉をより細かくコントロールできることと同じです」と続けた。

メルセデス・ベンツ G580 with EQ Technology Edition 1
走行中、加速や車速、アクセルペダルの踏み加減などに応じて、V8エンジンの音から着想を得た音を奏でるG-ROARというシステムを搭載。発表会で車外から聞いた音は硬質で、気分が高揚する類のものだった。
メルセデス・ベンツ G580 with EQ Technology Edition 1
スクエアな形状やドアハンドルなど、外観はあえてGクラスの内燃機関モデルから大きく変えないように配慮したとのこと。

続いて登壇したGクラスのプロダクトマネージャーを務めるトニ・メンテル氏が、G580の開発コンセプトで重要なのは以下の3点だと述べた。

  • OFF-ROAD
  • UNLIMITED
  • EST.1979

もっとも重要だとするオフロード性能については、4輪にモーターを配置し、それぞれを個別にコントロールすることでエンジン車と同等か、それ以上の悪路走破性能を実現したという。たとえば、がけ崩れや倒木で進路がふさがれていた場合に、その場で旋回ができる「G-TURN」という機能が備わる。また、4輪のトルクをコントロールすることで、後輪軸を中心に旋回する「G-STEERING」という機能は、回転半径を大幅に縮小するとのことだ。

こうした特性や機能によってGクラスの「UNLIMITED」という持ち味はさらに強まっている。また、渡河水深はディーゼルモデルであるG450 dの700mmを上回る850mmとなっているから、オフロード性能が向上し、制限のない行動範囲を獲得していることは間違いない。

「EST.1979」とは、四半世紀にわたって世界中で愛されてきたGクラスの歴史を継承するということで、特徴的なドアハンドルやフロントフェンダー上部のウィンカーレンズなどは内燃機関モデルと変わらないから、ゲレンデのファンも納得するはずだ。

ディティールだけでなく、屈強なはしご型のフレーム(ラダーフレーム)を用いる基本構造も踏襲し、なおかつ重量物のバッテリーを格納すべく、ラダーフレーム構造はさらに強化されているとのことだ。

メルセデス・ベンツ G580 with EQ Technology Edition 1
伝統のウィンカーレンズは踏襲しているけれど、空気の流れを整えるためにボンネットの形状はエンジン仕様から変更を受けているという。

充電ネットワークにも一石を投じる

G580の発表会では、もうひとつ興味深いアナウンスがあった。メルセデス・ベンツ・ハイパワー・チャージング日本合同会社(以下、MBHPCJ)という新会社を設立して、高出力EV充電ネットワークの構築を進めるというのだ。

EV充電事業のパートナーにはパワーエックスが選ばれ、同社が製造するHyperchargerを出荷するほか、チャージステーションの候補地の選定から運営までを支援するという。

メルセデス・ベンツ G580 with EQ Technology Edition 1
1充電あたりの航続距離は530km(WLTCモード値)。150kWの急速充電器を使った場合、電気残量10%の状態から80%に達するまでの目安は41分。

前出のゲルティンガー剛CEOによれば、現在の日本市場のBEVの比率は2%弱で、メルセデス・ベンツが10%弱。ただし、どこかで必ずBEV シフトが起こるはずで、それまでに「BEVといえばメルセデス・ベンツ」というスキームを築きたいとのことだった。

MBHPCJの充電ステーションの計画は、今後2年間で25拠点、100口とそれほど多くはないけれど、パワーエックスの最新技術を活用して最先端のチャージング網を構築するという。まずは量より質、ということだろう。

Hyperchargerの標準モデルと対応車種を組み合わせた場合は、10分程度の充電で約150kmの航続距離をまかなうという。しかも専用アプリを用いることで、予約から決済、充電までスマートフォンで完結するというから、これまで「充電が面倒だから……」と二の足を踏んでいた層にも響くはずだ。

G580の登場は、単純にひとつの車種に電気自動車が追加されたというだけでない。BEVだからこそクルマのパフォーマンスの可能性を広げられることを示したり、充電インフラの拡充のきっかけとなるなど、広範囲に影響を及ぼすはずだ。

メルセデス・ベンツ G580 with EQ Technology Edition 1
メルセデス・ベンツ G580 with EQ Technology Edition 1
 全長×全幅×全高:4730×1985×1990mm
ホイールベース:2890mm
パワートレイン:4輪独立モーター
システム最高出力:587ps
システム最大トルク:1164Nm
駆動方式:4輪駆動
価格:2635万円〜(税込)

問い合わせ
メルセデス・コール TEL:0120-190-610

サトータケシ/Takeshi Sato
1966年生まれ。自動車文化誌『NAVI』で副編集長を務めた後に独立。現在はフリーランスのライター、編集者として活動している。

TEXT=サトータケシ

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