軽井沢に邸宅を持つということは、その希少な自然をも味方にするということ。軽井沢での暮らしは、人生をいかに豊かにするのか──。今回は、起業家KG氏の邸宅を紹介する。【特集 偏愛リゾート軽井沢&熱海】

扉の向こうに広がる、緑と一体になるワンルーム
その邸宅の扉を開けると、リビング、ダイニング、書斎までひと続きになった広大なワンルームが広がっている。リビング側には大きな窓が取りつけられ、風に揺れる木々、苔のしきつめられた庭を望む。庭に置かれた石の鉢で、小鳥が水浴びする姿を愛でることも。
「この家は広すぎないこと、そしてどこにいても家族の気配を感じられることを意識してつくりました」
この邸宅の持ち主、KG氏はそう愛おしそうに話す。経営コンサルタントとして勤務した後、日本の外国人居住者向けプラットフォームサービスを展開するNyuuLyを共同創業し、国内外を飛びまわり、現在も多忙を極める。
書斎は書棚で区切られているだけで、仕事に没頭しながらも、誰がどこにいるのかひと目でわかるようになっている。
「東京の自宅は広さを重視したのですが、子供たちが独立して夫婦ふたりと愛犬との生活になったので、今のライフスタイルに合った場所を軽井沢にはつくりたかったんです」
肩書から解放され好きなものと暮らす
建築にあたり、敷地にある木々を新たに伐採することはいっさいしなかったという。
「軽井沢ってそもそも緑豊かな森が広がった場所ですよね。部屋に光が入らないからと、木を切るなんてしたくなかったんです。暗くてもいい。もともと森ってうっそうとしていて暗い場所なんですから。暗い森の中でしか感じられない温もりってきっとあると思っています」
森がつくりだす緑陰に涼み、木漏れ日を楽しむ。森本来の色彩を邪魔しないよう、壁紙の一部には、黒い漆喰を選んだ。
暗いとはいっても日中は周囲の新緑を映した光が部屋に差しこみ、美しい景色を眺められる。その光で、部屋のあちこちに配置されたアートが、ぼんやりと浮かび上がる。
「軽井沢の家には、世の中に発見される前のアーティストの作品を飾ろうと意識しました。目利きでもありませんし、投資的な意味はまったくありません。ただ心からいいな、と思ったものを楽しみながら選んでます。軽井沢では肩書とかそういうものからは解放されたいじゃないですか」
軽井沢の「酢重ギャラリー」で出合ったものを中心に、森林をモチーフにした版画や、肖像画風のものまで。楽しんで選ぶ、その過程すらすべてが心地いい。
年間の3分の1をここで過ごすゆえ、日々を暮らすためのディテールもとことん追求。玄関には愛犬が足を洗ってそのまま部屋に入れる専用のエリアを設け、2階の寝室に上がる階段は人も愛犬も一歩が踏みだしやすい段差にするなど、細部にもこだわった。この場所で暮らし、仕事をし、さらに今年新しいサービスをローンチしたばかりのKG氏。そのアイデアはこの軽井沢で得たのかと問うと。
「私たちにとって軽井沢は非日常ではありません。生活をして仕事をする場所。朝起きて東京の家や別の街に行くこともありますので、アイデアは軽井沢で閃いたのかもしれないし、そうじゃないかもしれない(笑)。それくらいここは、私の人生にとって基盤であり日常なんです」
肩肘はらず、見栄をはらず。KG氏にとっての心地いい日常の空間が、軽井沢にはある。
My Favorite Place
1.bank.
「暖炉焼で人気の『レストラン ピレネー』のマネージャーが開いたイタリア料理店です」
2.Bonbonniere
「私たちのゴルフコーチの奥様がつくる、定食と本格デザートがとても美味しいんです」
3.カフェ・ル・プティ・ニ3
「コーヒーや紅茶がとびきり美味しくて、ゆったりとした時間が流れる一軒家カフェです」
KG
NyuuLy共同創業者兼CEO。ベイン・アンド・カンパニーに勤務したのち起業。UWC ISAK Japan理事、沖縄科学技術大学院大学評議員会副議長、アジア・ソサエティ・ジャパン共同創設者。
この記事はGOETHE 2026年7月号「総力特集:偏愛リゾート最前線!」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら








