「自分大好きな人」は「自己肯定感が高い」と思われやすいが、両者は異なるものである可能性がわかってきた。その違いを4万人以上に脳のしくみの講演をしてきた脳科学者・西剛志が解説する。

あなたの周りにいる「自分大好きに見える人」
「こんなすごい場所に行ってきた!」とSNSでアピールする友人。
「自分は正しい!」と主張する同僚。
武勇伝を話すのに夢中な上司。
あなたの周りにも、ときどき”圧”を感じるような自分大好き人間はいないでしょうか。こうした人は、一見すると自己肯定感が高く見えるかもしれません。
しかし、この2つは近年、全く別物であることがわかってきました。
自信満々に見える人には、大きく2つのタイプがあります(*1)。
1.自尊心タイプ(自己肯定感が高い人)
−「私はこれでいい」と感じる、内側からの安定した自信
2.ナルシストタイプ(ナルシシズムが高い人)
−「私は他人より優れている」という、比較から生まれる自信
どちらも”自分を肯定している”ように見えるため、一見するとどちらか区別できません。
しかし、両者を見分ける最もわかりやすい方法があります。
それが、その人から「上から目線」や「優劣の意識」を感じるかどうかです。
自尊心の高い人は、他人と自分を比較しません。そのため嫉妬も少なく、誰に対してもリラックスして比較的フラットに接します。
一方でナルシストタイプの人は、常に他人との比較の中で自分の価値を確認します。優位に立てば高揚し、うまくいかなければ強く主張して相手を攻撃することもあります。
脳科学で見えた「ナルシストの特徴」
最近の研究では、自尊心タイプとナルシストタイプは脳の使い方が異なることがわかってきました。
自尊心に関わる感情は、脳の「内側前頭前野」と「報酬系(腹側線条体)」のネットワークが強く結びつくことで生まれます。
つまり、“自分を肯定することでちゃんと幸福感が得られる状態”です。
しかし2016年の研究では、ナルシスト傾向が強い人では、このネットワークの結びつきが弱いことが報告されています(*2)。
これはつまり、「自分を好きだと言いながら、実は満足感や幸福感を感じにくい脳の状態」である可能性を示しています。
そのため、外側では自信満々に見えても、内側では不安定さを抱え、それを補うように自己アピールが強くなってしまうのです。
その違いは7歳から始まっている
この2つの傾向は、実はかなり早い段階から形成されます。
研究によると、自尊心とナルシスト傾向は7歳頃から発達し始めることがわかっています(*3)。そしてその背景には、親の関わり方の違いがあるようです。
アムステルダム大学のブルメルマンらが565人の子どもを対象に行った研究によると下記の事実がわかりました(*4)。
- 自尊心タイプ → 親の「温かさ」「安心感」「受容」から育つ
- ナルシストタイプ → 親が子どもを「特別扱い」し「過大評価」すると育つ
「あなたは特別」「他の子とは違う」という言葉は、一見ポジティブに聞こえます。
しかし場合によっては、“比較による優越感”を育ててしまい、ナルシストタイプにつながってしまうことがあるのです。
あなたはどっち? 自尊心タイプ/ナルシストタイプ簡単チェック
あなたの職場や、パートナー、子ども、友人や同僚がどっちの自信家タイプなのか判別できる簡単なチェックリストをご紹介します。短時間で判別できますので、参考にしてみてください。

本物の自己肯定感を育てる方法──今日からできる2つの習慣
重要なのは、「自分はどう見られているか」を気にしすぎる状態から抜け出すことです。
私たちは、無意識に他人と比較してしまうことがあります。
そのことにまず気づくことが第一歩です。「今、比べているな」と認識するだけでも、思考のパターンは少しずつ変わっていきます(*5)。
そして、もう1つ大切なことが「自分への言葉を、親友に話すように変える」ことです。自分を責めるような内的な言葉ではなく、親しい友人に話すようなトーンで自分に接する。それだけで、脳の自己認知は変わり、自己肯定感が育ちやすくなることがわかっています(*6)。
本当の自信とは何か
本当の自信とは、他者より優れていることではありません。
比較から生まれる優越感ではなく、「そのままの自分で大丈夫だ」と感じられる安定感です。
若い頃は特にナルシスト傾向が高いですが、50〜60歳にかけて緩やかに落ちていくことも報告されています(*7,8)。
それは一朝一夕で身につくものではありませんが、日々の思考の癖に気づくことから少しずつ育てていきましょう。

脳科学者(工学博士)、分子生物学者。武蔵野学院大学スペシャルアカデミックフェロー。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。2002年に博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子供まで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて4万人以上に講演会を提供。『世界仰天ニュース』『モーニングショー』『カズレーザーと学ぶ。』などをはじめメディア出演も多数。TBS Podcast「脳科学、脳LIFE」レギュラー。著書に20万部のベストセラーとなった『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』、『1万人の才能を引き出してきた脳科学者が教える 「やりたいこと」の見つけ方』『結局、どうしたら伝わるのか? 脳科学が導き出した本当に伝わるコツ』など海外を含めて累計45万部突破。最新刊は『脳科学×最新研究が解き明かす64のテクニック 「伝える」が「伝わる」に変わるひみつ』。
(*1) Brummelman, E., et.al. (2016). Separating Narcissism From Self-Esteem. Current Directions in Psychological Science, 25(1), 8-13
(*2) Chester, D. S., et.al. (2016). Narcissism is associated with weakened frontostriatal connectivity: A DTI study. Social Cognitive and Affective Neuroscience, 11(7), 1036-1040
(*3) Thomaes, S., et.al. (2008). Development and Validation of the Childhood Narcissism Scale. Journal of Personality Assessment, 90(4), 382-391
(*4) Brummelman, E. et.al. (2015). Origins of narcissism in children. Proceedings of the National Academy of Sciences, 112(12), 3659–3662
(*5) Linville, P. W. 1987 Self complexity as a cognitive buffer against stress-related illness and depression. Journal of Personality and Social Psychology, 52(4) , 663-676/ Showers, Carolin J.. “Compartmentalization of positive and negative self-knowledge: keeping bad apples out of the bunch.” Journal of personality and social psychology 62 6 (1992) : 1036-49
(*6) 西剛志著「世界一やさしい自分を変える方法」アスコム(2023年)
(*7) Orth, U., & Robins, R. W. (2014). The Development of Self-Esteem. Current Directions in Psychological Science, 23(5), 381-387
(*8) Wetzel E. et.al. You're still so vain: Changes in narcissism from young adulthood to middle age. J Pers Soc Psychol. 2020 Aug;119(2):479-496

