Instagram、TikTok、Facebook、Xなど、SNS利用の低年齢化が年々進むなか、子どもの利用は本当によいのか? 4万人以上に脳科学的知見をもとに講演・研究を行ってきた脳科学者・西剛志が、近年明らかになりつつある科学的事実をもとに考察する。

なぜSNSは、これほど人を惹きつけるのか
前回の記事でも触れましたが、10代を超えるとSNSを利用していない人の方が少なくなります。
なぜ、ここまでSNSは広がったのでしょうか。
理由の一つは、脳にとって大きなメリットがあるからです。
大人がSNSを利用すると、交友関係が広がったり、孤独感や疎外感が和らぐ効果が示されています(*1)。
また、複数の情報から一つを選んでクリックすることで、脳内ではドーパミンが分泌され、一時的な快感が生まれます(*2)。
いわゆる「デジタルドーパミン」と呼ばれる現象です。
問題は、この仕組みが、未発達な子どもの脳にどう影響するのかです。
2025年に発表された、子どもを追跡した重要研究
2025年10月、子どものSNS利用に関して、注目すべき研究が発表されました(*3)。
9〜10歳の子ども6,554人を13歳になるまで追跡し、SNS利用状況によって次の3つのグループに分けました。
1.ほとんど利用していない
2.利用は少ないが増加傾向
3.利用が多く、さらに増加傾向
そして3年後、認知能力を調査しました。
その結果、SNS利用が「少ないが増加傾向」または「利用が多く増加傾向」にある子どもは、読解力・語彙力・エピソード記憶・総合テストのスコアが低い傾向を示しました。
処理速度には差が見られなかったものの、認知テスト全体では統計的に有意な差が確認されています。
もちろん、これは因果関係ではなく相関関係です。
しかし、SNS利用頻度が非常に少ない子どもと比べ、認知力が低い傾向にあったという点は、重く受け止める必要があります。
10万人規模の研究が示す「注意力」への影響
同じく2025年、オーストラリアで約10万人を対象にした研究では、TikTokやInstagram Reels、YouTube Shortsなど短時間動画型SNSの利用増加が、認知機能の低下と中程度の相関を示すことが報告されました(*4)。
特に影響が大きかったのは、注意力と抑制制御です。
一方で、論理的思考力への影響は確認されませんでした。
刺激と快感を簡単に得られる環境に長くいると、読書や学習のような努力を要する活動に、脳が痛みを感じやすくなる可能性が考えられます。
SNSがもたらす、もう一つのリスク
SNSの過度な使用は、若年層のうつ傾向やナルシシズム(自己陶酔的なパーソナリティ障害)の増加、問題のあるコンテンツへの接触などとも関連していることが知られています(*5-7)。
また、SNSでは「フィルターバブル」と呼ばれる現象も起こりやすくなります(*8)。
自分好みの情報だけに囲まれ、異なる意見に触れる機会が減ってしまう状態です。
さらに「社会的比較」も重要です。
SNS上で他者と自分を比べるほど、友人関係の満足度や自尊感情、主観的幸福度が低下することが報告されています(*9,10)。
それでもSNSが全て悪ではない理由
もちろん、大人にとってのSNSは、短時間でストレスを軽減したり、1対1や少人数でのコミュニケーションによって孤独感を和らげる側面もあります。
外向性が高い(外側の刺激に快感を感じやすい)人は影響を受けにくい一方、内向的で深く考えやすいタイプは影響を受けやすい可能性もあります(*11)。
ただ、脳が未発達な子どもにとっては、現時点ではリスクが高い可能性があるというのが、研究から見えてきた現実です。
特にSNSで影響を受けやすいのは、「投稿せず、閲覧するだけ」の利用が中心のケースです(*12)。小さな子どもほどこの状態になりやすいため、注意が必要でしょう。
私も子どもがいるので分かりますが、デジタルツールを渡すと夢中になるので親は楽です。しかし、脳は楽をすると退化していきます。そのことを子どもと共有した上で、デジタルツールの正しい使い方を子どもと一緒に考えていくことも大切かもしれません。

脳科学者(工学博士)、分子生物学者。武蔵野学院大学スペシャルアカデミックフェロー。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。2002年に博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子供まで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて4万人以上に講演会を提供。『世界仰天ニュース』『モーニングショー』『カズレーザーと学ぶ。』などをはじめメディア出演も多数。TBS Podcast「脳科学、脳LIFE」レギュラー。著書に20万部のベストセラーとなった『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』、『1万人の才能を引き出してきた脳科学者が教える 「やりたいこと」の見つけ方』『結局、どうしたら伝わるのか? 脳科学が導き出した本当に伝わるコツ』など海外を含めて累計43万部突破。最新刊は『脳科学でわかった仕事のストレスをなくす本』(2025年10月30日発売)。
<参考文献>
1.Schoemann, Alexander M. “How and Why Social Media Affect Subjective Well-Being: Multi-Site Use and Social Comparison as Predictors of Change Across Time.” Journal of Happiness Studies, Springer Science and Business Media LLC, 2020
2.Mouchabac S, Maatoug R, Conejero I, Adrien V, Bonnot O, Millet B, Ferreri F, Bourla A. In Search of Digital Dopamine: How Apps Can Motivate Depressed Patients, a Review and Conceptual Analysis. Brain Sci. 2021 Nov 1;11(11):1454
3.Nagata JM, Wong JH, Kim KE, et al. Social Media Use Trajectories and Cognitive Performance in Adolescents. JAMA. Published online October 13, 2025
4.Source and Image Credits: Nguyen, L., Walters, J., Paul, S., Monreal Ijurco, S., Rainey, G. E., Parekh, N., Blair, G., & Darrah, M.(2025). Feeds, feelings, and focus: A systematic review and meta-analysis examining the cognitive and mental health correlates of short-form video use.Psychological Bulletin, 151(9), 1125-1146.
5.Lopes, Lucas Silva, et al. “Problematic social media use and its relationship with depression or anxiety: a systematic review.” Cyberpsychology, Behavior, and Social Networking 25.11 (2022): 691-702
6.Casale, Silvia, and Vanessa Banchi. “Narcissism and problematic social media use: A systematic literature review.” Addictive behaviors reports 11 (2020): 100252
7.Fibrilla, Firda, Martini Fairus, and Holiratul Raifah. “Exposure to pornography through social media on sexual behavior of high school teenagers in metro city.” IOSR Journal of Nursing and Health Science, 1â8 (2021)
8.Pariser, E. The Filter Bubble: What the Internet Is Hiding from You (Penguin Press, 2011)
9.Festinger, L. (1954). A theory of social comparison processes. Human Relations, 7, 117–140
10.泉水紀彦他 (2022) 大学生におけるSNS利用実態と精神的健康との関連の検討-社会的比較と妬みに着目して, 埼玉学園大学紀要, 人間学部篇, 22, 235-248
11.西剛志著『おとなしい人」の完全成功マニュアル 内向型の強みを活かして人生を切り拓く方法』ダイヤモンド社, 2024
12.Krasnova, H., Widjaja, T., Buxmann, P., Wenninger, H., & Benbasat, I. (2015). Why following friends can hurt you: An exploratory investigation of the effects of envy on social networking sites among college-age users. Information Systems Research, 26(3), 585–605

