CAR

2025.03.29

月額約4万円で「ポルシェ911」に乗れる⁉ 930ターボ国内第一号車をレストアした、注目ベンチャーによる共同所有サービスとは

いまクルマ好きのあいだで、クラシックカーやスポーツカーなど趣味のクルマを複数人で共同オーナーとして所有することでリーズナブルに楽しめる、というサービスを提供するベンチャー企業「RENDEZ-VOUS(ランデブー)」が話題だ。同社があるきっかけからポルシェ930ターボの国内第一号車のレストアを手掛けたという。その経緯を追ってみた。

930ターボ3.0は1975年から1978年の3年しか製造されておらず、しかも最初期の1975年式は生産台数約280台という希少モデル。

4名のオーナーによる共同レストアプロジェクト

“バーンファインド(Barn find)”という言葉をご存知だろうか。長い年月を経て納屋や倉庫から発見された希少なクルマことで、海外などではレストアすることなく、ホコリを被ったそのままの状態でオークションに出品され、数億、数十億という値がつくことも珍しくない。

熊本県のとある民家のガレージで、オーナーを失い20年以上放置されたままになっていたポルシェ911(タイプ930)ターボ3.0が発見された。2020年の初頭、遺族からランデブーにこの車両について相談があったという。

熊本県のガレージにて見つかった状態。ミツワ自動車による930ターボ国内第一号車で、ワンオーナー、フルオリジナル、発見時の走行距離は37331kmというまさにお宝。

車歴を調べてみると、車体番号「9305700051」は、1975年に930ターボとしては51番目に製造された個体であり、当時のポルシェの総輸入元であるミツワ自動車によって販売された国内第一号車だった。930ターボ3.0は1975年から1978年の3年しか製造されておらず、しかも最初期の1975年式は生産台数約280台という希少モデルだ。

相談を受けたランデブーは、「この車両を国内に残したい」「整備、レストアの重要性と意義を伝えたい」「文化的価値のある車両を次世代に受け継いでいきたい」という思いからレストアプロジェクトをスタートする。

このプロジェクトをスタートするにあたって同社では、ホコリを被ったままの状態の車両を自動車イベント「オートモビルカウンシル」に展示。車両価格に加えてレストア費用も分担してもらい、そのプロセスも含めて共に楽しんでくれる共同オーナーを募った。4名の共同オーナーが選ばれ、ひとりあたり約600万円の費用を負担したという。

ガレージで発見された当時のホコリを被ったままの状態で2023年のオートモビルカウンシルに出展。レストア費用も共に負担してくれることを条件に共同オーナーを募った。

ちなみに現在の同社の共同所有サービスはそれとは異なっており月額制だ。実例をあげると、車両価格1300万円の1986年式ポルシェ911(930)3.2カレラを6人で共同所有した場合、保険料、メンテナンス費用、駐車場代込みで月額4万4000円。これで年間48日利用できるというものだ。ちなみに同じクルマを1人で所有した場合、車両価格に加えて保険料(月額3万円)、メンテナンス費用(月額3万円)、駐車場代(月額5万円 ※都心の屋根付きガレージを想定)と、維持費だけでおよそ月額11万円が必要になる。

利用期間は1年間で、少し古いクルマは不安だけれど試してみたい、また1年ごとにいろんなモデルに乗ってみたい、そんなニーズにもぴったりハマる。申し込みは同社のホームページから登録フォームに希望の車種や予算などを入力するかたちだが、想定以上の反響によりウェイティング状態にあるという。今後は横浜市にあるガレージに加えて、神奈川県川崎市の二子新地に2拠点目を開設予定だ。

元ミツワのメカニックにより、99%オリジナルを再現

レストア作業は、静岡県御殿場市にあるガレージ「ポルテック」に依頼。ポルテックは静岡県小山町にあったかつてのミツワ自動車の富士小山デポを事業継承したもので、クラシックポルシェをよく知る元ミツワの整備士たちがいまも在籍している。エンジンなどの機関系は純正部品を使ってレストア。外観はあえてリペイントを行っておらず、旧オーナーが走行した際につけたリアフェンダーの傷や汚れなどもそのままに、当時の姿に見事復元された。

かくして、930ターボの日本第一号車がちょうど50年後に、ほぼ当時のままの姿に復元された。この車両は4人のオーナーが1年間共同所有したのち、日本国内に残すことを前提に売却予定。ちなみにこの4人のオーナーに購入の優先権があるという。現在のクラシックカー市場における空冷エンジンのポルシェ911の人気を鑑みれば、ものすごい査定額になることは想像に難くない。

いずれにせよクラシックカーを愛好するという行為は、文化遺産を後世に引き継ぐということでもある。この貴重なクルマが、国内で大事に受け継がれていくことを期待してやまない。

TEXT=藤野太一

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