GOETHEとファイナンスプラットフォーム「FINCHI」がタッグを組んだメディア「GOETHE Finance powered by FINCHI」。ビジネス界で圧倒的な実績を持つリーダーたちは、「ファイナンス」をどのように捉え、活用しているのか。その最前線の思考に迫ることで、日本における「ファイナンス」をカルチャーとして定着させていく。今回は、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』(以下、ソニック)をはじめとする世界的IPを育て、ゲーミングなど新たな成長領域にも挑むセガサミーグループを取材。エンタメ事業の未来のために、何に投資し、何を手放すのか。そして、何がその判断を支えるのか。大胆に見える決断の裏にある投資基準とファイナンスの役割、そして企業価値最大化の先に見据える使命を、代表取締役社長グループCEOの里見治紀氏に聞いた。

遊技機事業が支えるセガサミーの成長投資
2004年にセガとサミーの経営統合で誕生したセガサミーホールディングス(以下、セガサミー)。サミーが展開するパチンコ・パチスロを中心とした「遊技機事業」、ゲームコンテンツから映像、トイにいたるまで多種多様な遊びを提供する「エンタテインメントコンテンツ事業」、そして、カジノ機器の開発・販売やオンラインゲーミングなどを手がける「ゲーミング事業」の3事業をコアに据え、国内外でグループの総合力を生かしながら、互いを補いつつシナジーを高めている。
そのセガサミーを率いるのが、代表取締役社長グループCEOの里見治紀氏だ。
「3つのコア事業により、多様なポートフォリオを形成しています。グループ成長ドライバーとしての『エンタテインメントコンテンツ事業』、投資の原資を安定的に生みだす基盤事業としての『遊技機事業』、中長期的なグループの成長の柱を目指す『ゲーミング事業』です。積極投資や株主還元を支える収益基盤となっているのが遊技機事業で、パチンコ・パチスロは、市場として成長しているわけではありませんが、我々はシェアNo.1ではないので、まだ成長余地があります。そのための競争力を磨きながら、安定的なキャッシュフローを生みだす位置づけです。そのキャッシュで株主還元を行いつつ、セガやアトラスのゲーム開発やIP展開といったエンタテインメントコンテンツ事業や、収益における第三の柱として据えているゲーミング事業への成長投資を進めてきました」
各事業は複数の軸で評価し、常に見直す。具体的には、TAM(※1)やSAM(※2)を見ながら、成長余地を検討し、財務面では資本コストを上回る利益率を重視している。
※1 TAM(Total Addressable Market):事業が獲得できる市場全体の規模・需要
※2 SAM(Serviceable Available Market):TAMに対して自社が獲得可能な市場・需要

1979年東京都生まれ。明治学院大学卒業後、国際証券でIPOコンサルティング、フェニックス・キャピタルで企業再生業務に従事。サミー、セガ、Sega of Americaを経て、2012年UCバークレー校経営大学院(MBA)修了。グループ各社の社長などを歴任し、現在はセガサミーホールディングス代表取締役社長グループCEO。
成長領域へどう投資するか
成長領域のなかで、大きく発展し実績を上げているのがIPだ。同社が進めているのは、コアとなるIPをグローバルブランドへ育て、ゲーム、映画、アニメ、グッズ、イベントなど、多方面へ展開するトランスメディア戦略。なかでもライセンス収入は、2022年3月期の57億円から、2026年3月期には179億円まで拡大している。
「その牽引役が『ソニック』です。もともと、ソニックをキャラクターとして貸し出して商品化してもらうビジネスはありましたが、ハリウッド映画のヒットで一気に戦略が広がりました。1作目、2作目、3作目と連続で興行収入が増えたことで、一般への認知も拡大。それに伴いライセンス組織を強化し、今ではハイブランドから食品までソニックや他IPを含め、世界中で約750社のパートナーと提携を結んでいます」
一方、IPを活用した施設型エンタテインメントでは、ライセンス提供を軸に展開。資本の投じ方を変えているのだ。
「以前は、ドバイの『セガ・リパブリック』や中国の『ジョイポリス』などに、自分たちも資本を投下していました。今は施設への投資リスクを取らず、ライセンサーとして関わっています。グループのIPを活用したエリアをつくりたいという話も、南米や中東、北米などから来ています。そのなかから、しっかりパートナーを選んで検討しています」
2026年9月には、セガとNetflixが複数タイトルの映像化に向けたパートナーシップを結び、名作ゲーム『クレイジータクシー』などの実写映画化や、2027年1月に発売予定の新作ゲーム『STRANGER THAN HEAVEN』の映像化を発表した。
「普通は、成功した原作を映像化しますが、トレーラーを見ただけで『STRANGER THAN HEAVEN』というまだ発売前のゲームの映像化を提案してくれたんです。『まさか!』とびっくりしましたね(笑)。この事例は、IP価値を早期に拡大でき、当社のトランスメディア戦略を加速させる強力な推進力になると実感しています」

海外市場を見据えたゲーミング事業への挑戦
もうひとつの成長領域が、ゲーミング事業だ。里見氏は「もうしばらく投資が必要ですが、Jカーブの底に差しかかっている事業」と語り、将来的な躍進に自信を覗かせる。実際、海外では、カジノやスポーツベッティングは大人のエンタテインメントとして捉えられており、ゲーム会社よりも高い企業価値評価がついている企業も多い。
また、同社は2012年頃から将来の日本版IR(統合型リゾート)を見据えて、宮崎のフェニックス・シーガイア・リゾートの運営、韓国のパラダイスグループとの合弁会社設立およびIR施設「パラダイスシティ」の共同運営、カジノ機器の開発・販売を手がけるセガサミークリエイションの設立、横浜IRへの参画準備など、ゲーミング領域における知見を蓄積してきた。
「横浜市のIR誘致が撤回されたことによって、日本版IRへの参画は取りやめとなりました。しかし、カジノ運営を知り、機器を開発・供給し、各地のライセンス取得に対応してきた。その積み重ねてきた経験やノウハウは大きな財産として残りますから、これを生かさない手はありません。ただし、自社ブランドで利用者を集めるB to C事業には、巨額のマーケティングコストがかかります。だから我々は、カジノ機器やシステムを提供するB to B事業を中心に、リスクを抑えて展開しています」
セガサミー流「IP」価値の広め方
① ゲームを中心にIPを育てる
国内スタジオ発の主力ゲームをグローバルで展開。全世界同時発売やマルチプラットフォーム展開、多言語展開などで、ゲームIPのグローバルでの展開を進める。
②映画に出資 制作にもかかわる
『ソニック』の映画では制作費を出資し、監修の立場だけではなく、制作にも関わっている。映画公開時期に合わせ、映画IPを軸とした商品化などの展開も実施。
③ 世界のパートナーとIPをさらに拡張
レゴやバレンシアガなど、世界中で約750社のパートナーと協業。ゲーム、映像、商品やブランドとのコラボなど、多面的に展開。特に『ソニック』はハリウッド映画化など、ゲームの枠を超えた展開を推進。映画のヒットを追い風にライセンス収入も拡大し、その成功モデルを他のIPにも広げている。
(11月5日公開の後編につづく)
――FINCHIは、出資・M&Aを検討する事業会社同士をダイレクトに繋ぐファイナンスプラットフォームです。
問い合わせ
FINCHI問い合わせフォーム

