CAR

2026.10.29

待望の新型。SUVバカ売れの時代に、なぜパジェロは7年も沈黙したのか?

1982年に登場した初代から数えて5代目となる新型三菱パジェロがお披露目された。開発陣は、三菱自動車のフラグシップモデルをどんな思いで開発したのか。撮影会の現場で話を聞いた。

サイズはランクル“250”とほぼ同じ、価格帯はやや上

三菱パジェロが復活するというニュースを聞いて、期待に胸をふくらませた方も多いだろう。パリダカでの大活躍など、ジープやランドクルーザーといったビッグネームに匹敵するだけのブランド力を誇るパジェロなのに、日本国内向けの生産は2019年に終わっている。実に、7年もの空白期間があったのだ。

まだ試乗車は用意されていないけれど、撮影会が開催され、現地でエンジニアやデザイナーに話を聞くことができた。開発陣は、どのような思いを込めて新しいパジェロを開発したのだろうか。

待望の新型。SUVバカ売れの時代に、なぜパジェロは7年も沈黙したのか?
パジェロらしい頼りがいのあるフォルムと、T字シェイプのヘッドランプを軸にした斬新なフロントマスクを融合したエクステリアデザイン。モノコック構造を採用した先代から一転、本格的なオフローダーに使われるラダーフレーム構造を採用した。

開発陣のコメントの前に、簡単に新型パジェロのモデル概要を紹介したい。

サイズは全長×全幅×全高=4920×1925×1910mm。先代にあたる4代目よりわずかに拡大しており、トヨタ・ランドクルーザー“250”と比べると5mm短く、55mm幅が狭く、15mm背が低い。

ランクル“250”との体格差はほぼ無視できる程度で、3列シートを備えるレイアウトや、本格的なオフロード4駆に使われるラダーフレーム構造を採用している点も共通だから、ガチンコのライバルだと言っていいだろう。

エンジンは排気量2.4ℓの直列4気筒ディーゼルターボのみで、もちろん4輪を駆動する。グレードは大きくふたつにわかれており、ひとつはクロスカントリーSUVらしい使い方を想定したGLSとGSR。もうひとつは上質なライフスタイルを表現するEXEEDとSUPER EXEED。

ふたつのラインではフロントグリルの意匠が異なり、前者は横方向にラインが走り、後者は格子型の模様が刻まれる。ただし、「走る・曲がる・止まる」の基本性能は両者共通とのこと。

待望の新型。SUVバカ売れの時代に、なぜパジェロは7年も沈黙したのか?
写真左がSUVらしい機能を優先したGLS。右が、ライフスタイル志向のSUPER EXEED。フロントグリルの意匠が異なることがわかる。

価格帯は、税込みで619万3000円から795万800円までで、これは500万円台後半のランクル“250”を少し上回る。

ただし撮影会で実車に接したところ、新型パジェロは内外装ともにフィニッシュの質感は高く、ヤマハと共同開発したというサウンドシステム「Dynamic Sound Yamaha Ultimate」が奏でる音も抜群だった。あくまで撮影会なので、「停まっている状態では」という注釈付きではあるけれど、価格相応のクオリティを確保していると感じた。

レトロなデザインにするつもりはまったくなかった

待望の新型。SUVバカ売れの時代に、なぜパジェロは7年も沈黙したのか?
ハイエンド仕様のSUPER EXEEDでは、セミアニリン本革シートを装備。レザーの感触は繊細かつしやなかだった。インテリアが水平基調なのは、オフロード走行中に傾きを感知しやすくするためで、パジェロの伝統。

撮影会では、開発のとりまとめ役、エンジニア、デザイナー、マーケティング担当といったスタッフに質問をする機会があった。新型パジェロへの理解を深めるために、質疑応答の中からいくつかを抜粋したい。

最初の疑問は、なぜラダーフレーム構造を採用したのか、という点だ。

初代パジェロはラダーフレーム構造だったけれど、3代目、4代目はモノコック構造を採用していた。ラダーフレーム構造は悪路走破性や耐久性に優れるという長所と引き換えに、舗装路での安定性や乗り心地ではモノコック構造に劣る。

三菱自動車の開発陣の答は、グローバルに展開する商品なので、最もヘビーデューティな使い方に対応するように考えたとのこと。あわせて、サスペンションや4輪駆動の技術の進化によって、ラダーフレーム構造でも快適な乗り心地や素直なハンドリングを実現できるようになっているという

特に「S-AWC」という車両運動統御システムがポイントで、これはかつてランサー・エボリューション(ランエボ)でWRC(世界ラリー選手権)を席巻した三菱自動車の秘伝の技。これを新たにパジェロに搭載することで、オフロードからオンロードまで、ハイレベルの快適性と操縦安定性を提供できるとのことだ。

ライバルとの比較で考えると、この「S-AWC」によるコーナリングや乗り心地の差別化がひとつのポイントになると思われる。

続いての疑問は、積極的に電動モデルを展開する三菱自動車が、なぜパジェロにはディーゼルエンジンしか設定しないのか、という点だ。

これもグローバル展開することを考えると、インフラが整っていない地域でのユーティリティを考慮する必要があり、航続距離、燃料の調達性、牽引能力などの理由から、まずはディーゼルからスタートしたということらしい。担当エンジニア氏は、「言いにくいことが多い」と苦笑しながらも、電動化は三菱のコア技術であると、将来の電動化に含みを残した。

3つめの疑問は、デザインだ。メルセデス・ベンツのGクラス(ゲレンデヴァーゲン)やジープ・ラングラーといったモデルはこれまでのデザインを踏襲しているし、前出のランクル“250”も丸目のヘッドランプのレトロ顔を選ぶことができる。対して新型パジェロは、全体のフォルムやCピラーなどのディティールに過去のモデルの面影を残すものの、T字シェイプのヘッドランプなど、新しさを前面に出している。

デザインについて、「レトロにしようというアイデアはなかったのか?」という質問に対して、デザイン担当者は、そのつもりはまったくありませんでした、と即答した。

いわく、力強さを表現するプロポーションや見晴らしのいい運転席といったパジェロらしさを大事にしながら、新しいパジェロのスタイルを目指したとのこと。レトロなデザインが必ずしも悪いというわけではないけれど、新しい造形を生み出そうという新型パジェロのチャレンジングな姿勢は好感が持てる。

開発陣の話を聞いて感じるのは、とにかく真面目な姿勢でパジェロに取り組んでいるということだ。冒頭に7年のブランクがあったと記したけれど、SUVが売れまくったこの時期に、ランクルもゲレンデもレンジローバーも生産が追いつかなかったこのタイミングで、4代目パジェロをちゃちゃっと手直しして、パリダカで活躍した時期のレトロなお面を被せて売るという安直な手段もあったはずだ。でも、三菱自動車はそうはしなかった。真面目だとも言えるし、商売っ気がないとも言える。

エンジニアもデザイナーも、パジェロをやりたくて入社した人が多く、デザインもパフォーマンスも一切妥協することなく、新しいパジェロの開発に挑んだという。結果、時間は多少かかったけれど、未舗装路から市街地、高速道路、ワインディングロードまで、どんなシチュエーションでも安心感と快適性を提供できるパジェロが完成したと、開発陣は胸を張った。

「雲の上を走っているように感じていただけると思います」とのことだったので、試乗する機会を楽しみに待ちたい。

待望の新型。SUVバカ売れの時代に、なぜパジェロは7年も沈黙したのか?
三菱パジェロ
全長×全幅×全高:4920×1925×1910mm
ホイールベース:2870mm
エンジン形式:2.4ℓ直列4気筒ディーゼルターボ
エンジン最高出力:150kW/3500rpm
エンジン最大トルク:480Nm/1750〜2500rpm
駆動方式: 4輪駆動
燃費:12.1km/ℓ(WLTCモード)
価格:¥6,193,000〜¥7,950,800(税込)

問い合わせ
三菱自動車お客様相談センター TE l:0120-324-860

サトータケシ/Takeshi Sato
1966年生まれ。自動車文化誌『NAVI』で副編集長を務めた後に独立。現在はフリーランスのライター、編集者として活動している。

TEXT=サトータケシ

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2026年12月号

陶酔の没入邸宅

『ゲーテ』2026年12月号の表紙

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2026年12月号

陶酔の没入邸宅

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ12月号』が2026年10月23日に発売となる。特集「陶酔の没入邸宅」では、圧倒的な自邸や趣味空間、最新レジデンス、厳選インテリアをご紹介。表紙は若井滉斗(Mrs. GREEN APPLE)。独占インタビュー&撮り下ろし10ページもお見逃しなく。

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

GOETHE LOUNGE ゲーテラウンジ

忙しい日々の中で、心を満たす特別な体験を。GOETHE LOUNGEは、上質な時間を求めるあなたのための登録無料の会員制サービス。限定イベント、優待特典、そして選りすぐりの情報を通じて、GOETHEだからこそできる特別なひとときをお届けします。

詳しくみる