TRAVEL

2026.10.23

ハノイ発22時の夜行列車。通称“アジアのスイス”、ベトナム北部のリゾート「サパ」へ

夜行列車の寝台個室で眠り、目覚めれば霧の山あい。さらにトラムとゴンドラ、ケーブルカーを乗り継げば、標高3,143mの頂に立てる。そんな旅ができるのが、ベトナム北部の山岳リゾート「サパ」だ。欧米では人気の滞在先だが、日本ではまだ知る人ぞ知る存在だ。

ハノイ発22時、夜行列車で霧の山岳リゾートへ。寝台個室から、標高3,143m「インドシナの屋根」まで

出発までの時間はハノイ散策と「Pizza 4P's」、スパで過ごす

山肌を覆う棚田と霧に包まれる朝、モン族やザオ族といった少数民族の暮らしに出会える山岳リゾート・サパ。

欧米からはトレッキング目的で長期滞在する旅行者も多く、今後は高級ホテルの進出も予定されている注目エリアだ。そんなサパへは、ハノイから夜行列車で向かうのが面白い。

夜行列車の出発は22時。昼便でハノイに到着してから出発までの時間を有意義に使えるのも、このルートならではの楽しみだ。

まずは旧市街へ。サウナのような蒸し暑さのなか、電気自動車のバギーに乗って街並みを眺めながら、フランス統治時代の1886年に建てられたセント・ジョセフ大聖堂へ向かった。ハノイ最古のカトリック教会で、街のランドマークだ。

近くの人気カフェ「CONG CaPhe(コンカフェ)」では、名物のココナッツコーヒーで一休み。ほどよい甘さが、疲れた体に染み渡る。教会のそばには、ベトナムを代表する高級クラフトチョコレートブランド「MAROU(マルゥ)」もあり、お土産に購入した。

出発前の夕食は、ハノイの人気店「Pizza 4P's」へ。日本人の益子陽介氏が2011年にホーチミンで創業し、2023年には麻布台ヒルズにも進出した話題店だ。

この日は自社工房で作られる名物のブッラータと生ハムのピザを中心に、サラダやパスタを堪能。料理と相性抜群の店舗限定オリジナルクラフトビールは、お土産にもぴったりだ。人気店のため予約は必須。公式サイトから早めに押さえておきたい(日本語対応)。

食後は寝台列車に乗る前に、ハノイの西湖(タイホー)近くの「フンセン・ヘルスケア」アンズオン店へ。1992年創業の伝統医学クリニックとウェルネスセンターが融合した施設だ。

ウェルネスセンター「フンセン・ヘルスケア」アンズオン店。
寝台列車に乗る前に立ち寄った「フンセン・ヘルスケア」アンズオン店。

通常コースは男女別の大部屋だが、今回は木樽風呂やジャグジー、サウナが完備されたVIP個室を贅沢に利用。出発までの制限時間があったため短縮版での利用となったが、サウナや垢すりまで受けて約3,000円とコスパも抜群だ。

薬草の爽やかな香りに包まれ、急ぎ足ながらも心地よくリフレッシュできた。寝台列車にはシャワーがないため、乗車前に立ち寄るスポットとしておすすめしたい。

電源もWi-Fiも完備。木のぬくもりを感じる2名用個室

21時45分、ハノイ駅に到着。ホームへ向かう道のりは、『ハリー・ポッター』の9と4分の3番線に迷い込んだようで、旅情が一気に高まる。

夜行列車が待つハノイ駅のホーム。これから始まる旅への期待が高まる。

ハノイからサパの玄関口・ラオカイへ向かう夜行列車は、ベトナム国鉄の車両と、民間の観光会社が独自に改装した寝台車両が、ひとつの編成に連結されている。所有する会社によって、内装もサービスも異なるのが面白い。今回乗車したのは、その一つ「チャパ・エクスプレス」だ。

利用したのは2名用の「スイート・ツイン」。清潔感があり、かわいらしい空間だった。濃い色の木目調の壁に、少数民族の織物や絵画があしらわれ、落ち着いた照明も相まって居心地がいい。

広さはコンパクトだが、機能は申し分ない。ベッドごとの読書灯、電源、無料Wi-Fi、施錠できるドア。水やスナック、耳栓、スリッパといったアメニティも揃う。移動中も仕事のメールを確認できるのは、ビジネスパーソンには心強いところだ。

店先すれすれを走る「トレインストリート」

出発してしばらくすると、列車は「トレインストリート」を通過する。線路のすぐ脇にカフェや民家が並び、その目と鼻の先を列車が走り抜ける、ハノイ観光の名物スポットだ。普段は沿道から見物する側だが、今回は列車の中から通り抜ける側になれた。

窓の外に目をやると、カフェのテーブルや軒先の洗濯物が目と鼻の先まで迫る。ぶつかりそうなほどの距離感に、思わず息をのむ。テラス席の観光客がこちらへスマートフォンを向けており、普段の「撮る側」から「撮られる側」になるのも面白い感覚だ。

夜の通過ということもあり、ランタンやネオンの明かりに彩られた街並みが実に幻想的。沿道から手を振ってくれる人もいて、ベトナムの人々のフレンドリーさに温かい気持ちになった。

揺れても爆睡。朝、窓の外は霧の山あいだった

列車は走行中はなかなか揺れたが、私は朝まで爆睡だった。ふと目覚めてカーテンを開けると、霧がかった田園風景と山あいの風景。朝6時にラオカイ駅へ到着し、そこから乗合バスに揺られて1時間〜1時間半ほど山道を登ると、ついにサパへたどり着く。

朝の澄んだ空気が漂うラオカイ駅。旅の拠点はここからサパへと移る。

到着後の昼食は、地元のレストランでモン族の伝統料理「タンコウ鍋(馬の鍋)」を。馬肉と内臓、骨、血を大鍋でじっくり煮込む一品で、観光客向けに味が調整されているという。馬の内臓は初めてだったが、臭みはなく食べやすかった。

宿泊したのは「PAO'S SAPA」。サパの街の中心までは車で約10分。泊まった部屋からは、美しい棚田の風景が広がり、旅の疲れを忘れさせてくれる。

夜はサパの中心街へ。お目当ては、サパの名物である黒鶏(ガデン/Gà Đen)の鍋だ。希少な食材として知られ、サパに来たら食べたい一品だ。黒鶏の鍋は、キノコやショウガ、リンゴなどと煮込んだ薬膳風のスープで、黒鶏の甘みと香りが際立つ。街の中心ではタクシーが走っていて、Grabで呼べば、すぐに来てくれる。

トラムとゴンドラを乗り継いで、標高3,143mの「インドシナの屋根」へ

サパ滞在中に訪ねたのが、ベトナムで最も最高峰・標高3,143mを誇るファンシーパン山だ。「インドシナの屋根」とも呼ばれる3,000m級の山だが、本格的な登山かと思いきや、トラム、ゴンドラ、ケーブルカーを乗り継げば誰でも気軽に頂上まで行ける。

まずはサパ駅からトラムに乗り、渓谷や山並みを眺めながらムオンホア駅へ。そこからゴンドラに乗り換えると、眼下には棚田が広がり、やがて白い霧の中へと入っていく。標高が上がるにつれて気温もぐっと下がってきた。ゴンドラを降りたあとは、ケーブルカーを2回乗り継いで頂上を目指す。ちなみに体力に自信があれば、階段で登ることもできる。

この日はあいにくの雨で、山頂は濃い霧に包まれていた。しかし諦めかけたそのとき、すーっと風が吹き抜け、目の前に巨大な大仏が姿を現した。まるで雲の上に浮かんでいるかのような、幻想的な光景だった。

“霧の街”とも呼ばれるサパで、その名にふさわしい景色に出会ったあとは、いよいよ旅のハイライトである少数民族の集落へ。黒モン族が暮らすカットカット村をはじめ、赤ザオ族のタフィン村、そして日曜限定のバクハー市場まで――独自の文化と手仕事が息づく、ディープな少数民族の世界へと足を踏み入れる。

取材協力
ベトナム航空 https://www.vietnamairlines.com/jp/ja

TEXT=専徒令圭(ゲーテ編集部)

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