PERSON

2026.10.24

71歳・郷ひろみはなぜ、他人のごみを拾うのか?【連載第12回】

ゴミが落ちていれば拾い、歯磨きの後は必ず鏡全体を拭く。自他ともに認めるきれい好きな郷ひろみだが、それは「自分のためにやっていること」だと言う。そのココロは? 連載「郷辞苑 第12回」 【その他の記事はこちら】

71歳・郷ひろみはなぜ、他人のごみを拾うのか?【連載第12回】

歯を磨いた後は鏡をていねいに拭く

僕は、自他ともに認めるキレイ好きだ。ゴルフに行けば、ティーグラウンドであろうとグリーン上であろうと(まあ、グリーンにゴミが落ちていることはまずないが)、はたまたフェアウェイ上であろうとゴミが目に入れば必ず拾い、ズボンの右ポケットに入れる(ゴルフティーは左手で刺すので左ポケットにはティーを入れている)。

一度ティーグラウンドを後にしたのに、「やっぱりあれはゴミだったんじゃないか?」と気になって、拾いに戻ったことすらある。誰が強制したわけでも、推奨したわけでもないけれど、僕が習慣にしているからなのであろう。

僕の友達は、何故か僕がゴルフ場でゴミを拾うことを知っていて、僕がゴミを拾うと右手を差し出す。

「私がやります」

「いや、大丈夫」と僕は言って、そのゴミをポケットの中にしまう。

今では真横にきて、「私がやります」と言い、

僕はそのゴミを、観念して渡す。

ゴミを拾うのはゴルフ場に限らず、エレベーターでも、スタジオでも、家の中でも、通りがかった道に落ちていたゴミも、見つけたら必ず拾う。誰かが見ているかどうかは関係ない。ゴミが落ちていれば拾うという行為は、僕にとって、息をするのと同じくらい自然なことなのだ。

僕は毎日5回ほど歯を磨くが、歯を磨いた後は必ず洗面台の鏡を隅から隅まで念入りに拭く。歯磨き粉が飛び散って、鏡のあちらこちらについてしまうためだ。周囲の人には、「ひろみさんが歯を磨いた後の鏡は汚れていませんよ」と言われるから、気にするほどではないのかもしれないけれど、これも僕にとっては歯磨きの一連の流れのひとつ。自宅であろうが、楽屋であろうが、はたまた、ツアー中の宿泊先ホテルであろうが、だ。歯を磨いた後は鏡を拭く。これも習慣になっている。

空間を整えれば、心と頭も整う

そもそも僕は、散らかすということをしない。帰宅したら靴を脱ぎっぱなしにせず、すぐに下駄箱にしまう。たとえ10分後にまた履くとしても、だ。仕事柄ホテルに宿泊することも多いが、チェックアウトの際は、動かしたものは元の場所に戻し、ベッドをある程度整え、使用済みのタオル類などはバスルームの隅にまとめておく。これもゴミ拾い同様、泊まっているのが郷ひろみだと知られていようがいまいが関係なく、自然に行っていることなのだ。

こうした僕の“片づけ癖”について、「後から使う人への思いやりですね」とか「周囲に対する気遣いがある証拠」などと言われることもあるが、誰かのためというわけではない。「ゴミを拾うと徳が積めるらしいですよ」なんて話をする人もいるし、実際そうなのかもしれないけれど、僕自身は考えたことすらない。

では、なぜ僕はゴミを拾い、鏡を拭き、部屋を片付けるのか。それはひとえに、そうしないと、僕自身の気持ちが落ち着かないから。もしも、ゴミに気づいたのに拾わず、見過ごしてしまったら。おそらく僕は、その日一日、「あの時なぜ拾わなかったんだろう」と気になってしかたがないと思う。いわば、僕は自分のためにゴミを拾い、空間を整えているのだ。

空間がきれいに片付いていると、余計なものが目に入らず、気持ちが乱されることがない。集中力もアップするし、冷静に物事と向き合える気もする。そう考えると、空間を整えるということは、心と頭を整える行為に等しいのかもしれない。

もしも最近、「集中できない」「物事をじっくり考えられない」と悩んでいるのなら、まずは出かけて帰ってきたら、自分が履いていた靴を下駄箱にしまうことからやってみてはどうだろう? 些細なことかもしれないが、自分が履いていった靴をしまうぐらいできそうな気がする。

ひいては、それが玄関に余分な靴は出さない。つまり、玄関をきれいにし、空間を整えることに繋がるようになってきたらこっちのものだ。今日履いていった靴をしまうだけなのだが。

こうした小さな行いが、いずれ、何かしらの変化を見出せるかもしれない。

郷ひろみ/Hiromi Go
1955年福岡県生まれ。1972年NHK大河ドラマ『新・平家物語』で芸能界デビューを果たし、同年8月に『男の子 女の子』で歌手としても活動を開始。以降、『よろしく哀愁』『お嫁サンバ』『言えないよ』『GOLDFINGER'99』など数多くのヒット曲を世に送り出し、日本を代表するポップシンガーとして活躍。デビュー日となる2026年8月1日、70歳初シングル『I’m Neo G』&武道館全70曲完全収録ライブCDをリリース。10月24日・25日に日本武道館公演『Hiromi Go Concert Tour 2026 〜ALL MY LOVE〜THE GRAND FINAL at 日本武道館 』を開催する。11月23日からは「Hiromi Go Dinner Show 2026」がスタート。著書に『ダディ』『黄金の60代』などがある。

TEXT=村上早苗

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