今や⽣活になくてはならないツールとなったスマートフォン。便利なだけに1⽇中⼿放さない⼈も少なくないが、時間を⼤切にする郷ひろみはスマホとどうつき合っているのか。連載「郷辞苑 第11回」 【その他の記事はこちら】

Duolingoで英語を学習中
僕は好奇⼼旺盛で、新しいものが出るとすぐに試したくなる。
70年代初頭、まだ携帯もなかった時代。僕を迎えにきてくれたマネージャーのクルマの中に髭剃りが置いてあった。助手席に座った僕は、それを取り、携帯代わりに喋っていた。周りで見た人が羨むように。どこにいても電話ができるなんて、⼦どもの頃に、『鉄腕アトム』で見た腕時計に喋っている時代が、まさか本当にやってくるなんて考えもしない頃だ。髭剃りに向かってひたすら喋っていることが、マンガで⾒た未来が近づいてきた気がして、なにか、とてもワクワクしたことを覚えている。
そして、1980年代半ばにショルダーフォンと呼ばれる携帯電話が登場した。その後、携帯電話はどんどん⼩さく、軽くなり、機能も増えていった。
僕はそのたびに新しい携帯電話を⼿に⼊れた。2010年代に⼊ると、携帯電話の主流はガラケーからスマートフォンに移⾏し、今では⼩学⽣ですらスマホを持っていることが多くなった。調べてみたところ、⽇本⼈のスマホ所有率は約8割に達しているそうだ。もはやスマホは⽇本⼈にとって、⼤事なインフラのひとつになっているということだろう。
1980年頃、ワードプロセッサー(ワープロ)が出てきた時も覚えている。ワープロを初めて見た時、何故か僕はNYにいて、こうやって日本語を入力すれば瞬時に日本語に変換されるんだよ。もちろん、アルファベットを打てば3段しか必要なく、文字が変換されるということだよ。「は」を入れたいなら、「h」「a」と2本の指で入力しなければならないよね。ただし、日本語入力したいなら4段使うよね。つまり、タイプライターと同じ機能だよ。
僕はかなり早い時点でスマホを愛⽤していて、その便利さを⽇々実感している。電話はもちろんメールも簡単にチェックできるし、調べたいことがあればその場で検索できるのもありがたい。カメラの性能も素晴らしいので、インスタにアップする写真なども、最近はほとんどスマホで撮影している。
また、1年半ほど前から語学学習アプリ「Duolingo」で英語を学んでいて、連続学習記録は今⽇(2026 年10⽉16⽇)で494日になった。忙しくてなかなかアクセスできない⽇もあるけれど、アプリが“お知らせ”をしてくれるおかげで、うっかり忘れるということなく(…性格的にそれはないと断⾔できるが)、毎⽇続けられている。
ホーム画⾯に表⽰されるアプリは限定する
こんなぐあいにスマホを愛⽤しているが、僕がスマホを⼿にする時間は 1⽇に2、3時間程度だ。
でも、どうやら多くの⼈が、スマホを僕以上に触っているらしい。そんなにスマホを開く時間があるのか不思議に思って聞いてみると、電⾞などでの移動時間やちょっとしたすき間時間を活⽤しているだけでなく、就寝前や帰宅後、休⽇など、スマホを開く時間を“わざわざ設けている”⼈が、驚くほどいた。それも、仕事としてではなく、アプリにアクセスするとつい止められなくなり、⻑時間やり続けてしまうのだとか。
それほど夢中になってしまうアプリの代表格はゲームやSNSで、「やっていると時間を忘れてしまう」という声が多く聞かれた。僕は、ゲームをやらないから(計算問題のアプリは⼊れているが)わからないけれど、ひとつ攻略するとまた次のステップが提⽰されるなど、やり続けたくなる仕掛けが巧妙に配されているのだという。SNS も同様で、ユーザーが関⼼のあるコンテンツがタイムラインで次から次へと流れてくるため、スクロールする⼿を⽌められなくなるらしい。
僕もインスタのアカウントを開設しているから、当然アプリはインストールしているし、毎⽇必ず開いてはいる。けれど、それに⻑時間費やすことは皆無だ。寝る前は携帯をやらないし、パソコンも開かない。だから、本で活字を追うのだ。僕は活字を追うと何故か睡魔が襲ってくる。
それに、仕事で忙しいうえに、1⽇5回の⻭磨きを筆頭にやることが多く、物理的に時間がないのもあるが、時間を⼤切にしているというのが何より⼤きい。1⽇24時間という限られた時間を無駄にしたくないという気持ちが強いのだろう。
もちろん、スマホを開いた時にアプリからの“お知らせ”が表⽰されていたら、気になるのでアクセスしてしまう。だからホーム画⾯に表⽰しているアプリは、電話とメール、カメラ、時計、カレンダー、地図、Safari といった基本機能のほか、Duolingoを含め、お気に⼊りだけと決めている。他にもインストールしているアプリはあるけれど、即座にチェックしなくてもよいものは⽬に⼊らないように設定している。
時間が経つのは恐ろしく早く、⼈はあっという間に年を取る。そして、時間をどう使うかによってその人の将来が決まってしまうかもしれない。年齢を重ねてからでは遅いだろうなと感じることもある。だから、年齢が行く前にやったほうがいいこともある。これは経験から言っているのだ。
スマホはとても便利なツールだけど、このツールを使うのは⼈間であって、ツールに振り回されてしまうのはもったいない。スマホとの付き合い⽅は⼈それぞれだ。でも、もしも「スマホに⽀配されている」と感じていて、現状を変えたいと思っているなら、思いきってホーム画⾯を最⼩限にするという⽅法をおすすめしたい。使わないツールがこんなに多かったのか、と気づくはずだ。
人間、思いきりが必要な時もある。
郷ひろみ/Hiromi Go
1955年福岡県生まれ。1972年NHK大河ドラマ『新・平家物語』で芸能界デビューを果たし、同年8月に『男の子 女の子』で歌手としても活動を開始。以降、『よろしく哀愁』『お嫁サンバ』『言えないよ』『GOLDFINGER'99』など数多くのヒット曲を世に送り出し、日本を代表するポップシンガーとして活躍。デビュー日となる2026年8月1日、70歳初シングル『I’m Neo G』&武道館全70曲完全収録ライブCDをリリース。10月24日・25日に日本武道館公演『Hiromi Go Concert Tour 2026 〜ALL MY LOVE〜THE GRAND FINAL at 日本武道館 』を開催する。著書に『ダディ』『黄金の60代』などがある。

