PERSON

2026.11.03

森田剛「イヤなことがあっても、無理やり笑顔をつくれば、吹っ切れていました」

あきらめなければ夢はかなう。耳なじみのある言葉だが、心から賛同できる人がどれだけいることだろう。そもそも、これを堂々と口にできるのは、夢をかなえたごく一握りの人だけだ。そして、思う。夢に“期限”はあるのだろうか。夢をかなえることは、人生においてどれだけ意味があるのだろうか。

森田剛氏

人と比べたり、思いどおりにいかなくて焦ったりというのは誰にでもある

人生の難問を真正面から取り上げたのが、2026年10月30日公開の映画『見上げてごらん』だ。大御所マンガ家のアシスタントを長年務める42歳の土屋輝一を中心に、こじらせ気味な大人たちの悪戦苦闘を描いている。

マンガ家デビューした後輩をディスったり、別居中の人気声優である妻につっかかったりと、大人になれない土屋を演じるのは、森田剛。本誌撮影時に放っていた色気と渋みを封印し、どこか情けない枯れた中年男に見事になり切っている。

「普通は年齢とともに、人に対して許せることが増えていく気がするんですけど、土屋はそうじゃない。面白いキャラクターだなと思います。でも、共感できるところも多い。人と比べたり、思いどおりにいかなくて焦ったりというのは誰にでもあるだろうし、自分自身も経験がありますから。具体的には? 忘れっぽくて切り替えも早いから、思い出せません(笑)。子供の時から、イヤなことがあっても無理やり笑顔をつくれば吹っ切れていましたしね。その感覚は今も大切にしています」

興味があれば挑戦し、ハマらなければやめればいい

夢に翻弄されている土屋に対し、「アシスタントだとしても、生涯かけて夢中になれるマンガを仕事にできているのだから幸せ」と森田は評する。夢が持てない若者が多いことを思えば、そのとおりかもしれない。

「夢というと難しくなっちゃうけど、好きなものと考えれば、思い当たることがあるんじゃないですか。自分も夢は何かと聞かれると答えられないけれど、周りに好きなものが溢れていて、幸せだなと思っています。ものと言っても物質じゃなくて、自分が置かれている場所というか空気感なんですけど」

森田が心地よい状況を手に入れたのは、興味があれば挑戦し、ハマらなければやめるというシンプルな選択の結果だ。それには、本当に好きなこと、大切なものは何か、自分自身に問いかける必要がある。

「かつてはものすごい速さで時間が流れていたし、余裕もなかったから、自分と向き合って会話するってことをずっとやってこなかったんですよ。でも、コロナの時期に時間ができて、やってみたらすごくよかった。だから今も、気が向いた時に自分と会話しています。自分とちゃんと向き合っていれば、間違った方向には行かないだろうし、行ってしまっても戻れるんじゃないかと思うんですよね」

言葉を飾ることなく、いい塩梅に力が抜けていて、自然体。そんな森田に今後の仕事に対する“夢”を問うと、「流されていきたいですね」という答えが返ってきた。自分から「これをやりたい」と手を挙げるわけではないが、どんな役であろうと、オファーがあれば積極的にチャレンジしたいと言う。

「いろんな人に会いたいし、同じことをやっていると自分に飽きちゃうんですよ。それに、若い頃を振り返ると、役をとおして学べることがたくさんあって、思いどおりにいかないことを含め、いろんな経験をしたことが今の自分をつくってくれているのは間違いないですから。そのためにも、オファーされ続ける人でありたいと思います」

森田剛氏
森田剛/ Go Morita
1979年埼玉県生まれ。2005年、劇団☆新感線の『荒神〜Arajinn〜』で舞台初主演を果たし、以降、数々の舞台や映画、ドラマに出演。近年の主な出演作に、舞台『僕らの時代じゃない』『砂の女』、映画『劇場版 アナウンサーたちの戦争』などがある。

映画『見上げてごらん』

マンガ家の万年アシスタントを中心に、仕事に情熱が持てない29歳の編集者、夢に向かって猪突猛進する40歳の新人アシスタントなど、夢に振り回される大人たちの悲哀やおかしみ、愛おしさを、森本晶一と佐藤快磨のダブル監督が細やかに描く。「夢をかなえるってそんなに大事?」という土屋のセリフにドキリとさせられつつも、温かな余韻に包まれる。

出演:森田剛、森川葵、川上友里、阿部寛、松本まりか、武田鉄矢、早瀬憩ほか
監督:森本晶一、佐藤快磨
原案・脚本:森本晶一
2026年10月30日(金)全国順次公開
https://gaga.ne.jp/miagetegoran/

TEXT=村上早苗

PHOTOGRAPH=干田哲平

STYLING=松川総

HAIR&MAKE-UP=AMANO

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