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2026.11.02

ゴルフ・料理・ピアノ…趣味に没頭できる、外食の神・西山知義の別邸に潜入

家は、ただ身体を休める場所ではない。ゴルフにサウナ、建築美、そして都市の中に再構築された自然──。好きなものに囲まれ、日常のノイズから解き放たれ、自分の世界へと深く潜っていく。3人の邸宅にあったのは、常に心に「また還りたい」と思わせるほど、人生に欠かせない暮らしのかたちだった──。今回は、ダイニングイノベーショングループ ファウンダーの西山知義邸を紹介する。【特集 自分の世界に浸れる家】

西山知義邸のキッチン
窓から降り注ぐ光が差しこみ、絶景を見がなら料理ができるように、ガスコンロは窓に向けて設置。換気扇を美しい飾り棚で包みこむ。

絶景×ゴルフ。自分を取り戻す家

「やっぱり水上(みなかみ)に、帰ってきたくなったんです」

遠くには谷川連峰、目の前には青々とした芝が広がるゴルフコースを巨大な窓から望む。ここはダイニングイノベーショングループ創業者・西山知義氏が水上高原ゴルフコースに隣接する別荘地に建てた邸宅だ。

西山氏はこれまで、沖縄、軽井沢、京都などさまざまな場所に別邸を建ててきた。なかでも群馬県・みなかみ町は、30代で初めて別邸を持った場所であり、手放した後も特別な場所として思い出のなかにあったという。

「水上は山の中ですから、すぐに話題のレストランへ行けるという立地ではありません。当時は自分たちで料理をして、冬は雪を見ながら温泉に入ってひたすらのんびりしたり。振り返ってみると、この『誰にも会わない自分たちだけの時間』がいかに贅沢なものだったのかに気がついたんです。だからこうしてまた水上の地に戻ってきました」

この邸宅の設計・デザインは、理想とする建築の資料を西山氏自ら揃え、設計者とともにそのイメージを形にしていった。

「まずは目前に広がる雄大な山々やゴルフ場の草原という、この絶景を存分に味わえる場所にしたかった。だから窓は、北欧の住宅でよく見られるような大きなものにしようと。そこから、全体的に北欧を意識したデザインになりました」

冬にはあたり一面が雪に覆われる。その景色に合わせ、床は白っぽい色に仕上げ、窓の外と室内を呼応させた。一方で天井には木材を使用し、温かみを加えている。この邸宅全体の、自然と調和する色使いはまさに、北欧の住まいを思わせる。

やりたいことに集中する「アトリエ」

リビングダイニングは「アトリエ」をイメージして、シェルフやファンなどに無骨なスチール素材を選んだ。飾られている鏡には敢えてエイジング加工を施し、長年使われているアーティストのアトリエのような雰囲気に。置かれているアートも敢えて額に入れず、壁に立てかけてあるため、今まさにこのアトリエで描き上げられたかのような印象も与える。

「ここでは最近始めたピアノを練習したり、キッチンで料理をしてみたり。誰かと何かをするという目的のある滞在ではなく、よりプライベートで自由な時間を過ごす場所なんです」

自由にゴルフを堪能。夕方からふらりとプレイも

西山氏が料理の腕を振るうキッチンダイニングでは、ガスコンロが窓側を向いて設置されているのが特徴的だ。

「この家では、景色と一緒に仲間や家族の顔を見ながら料理をしたかった。通常、ガスコンロは排気の関係で壁側に置かれていることが多いのですが、飾り棚で換気扇の存在感をなくして、インテリアの一部にすることで実現しました」

飲食店の店づくりを極めてきたからこその発想と言える。絶景を眺めながらここで肉を焼き、アクアパッツァや特製パスタをつくる。家族や仲間が自然とこのキッチンに集まってきて会話が弾むという。

うって変わって、寝室は真っ白な空間に。その寝室を抜けると、今度はウッディで広いバスルームが現れる。山の稜線を眺めながら浸かる露天風呂、その隣にはリビング同様、大きな窓に囲まれた目の前のゴルフコースを一望できるジャグジー。大きな丸太の柱とレンガの壁で「山小屋」をコンセプトにしたこの空間には、水風呂やととのいスペースもあり、最奥(さいおう)にはサウナも完備されている。

「ここのお湯は、とろっとしていて、まるで化粧水みたいなんです。出た後も身体が温まっている感じがする。最初に水上に別荘を持っていた時から、この地に湧くお湯が好きでした」

ととのいスペースに寝転べば、大きな窓の向こうに広がる草原と林。このうえない開放感に浸り、心からリフレッシュできる。

さらに、この家の大きな魅力は、窓越しに眺めているゴルフコースが、そのまま自分の遊び場になること。ガレージにはカートを駐車しておいて、家からそのままゴルフへと出かけられるという贅沢がかなう。このゴルフ場を管理する「水上高原ホテル200」のコンシェルジュに伝えれば、コースの空き状況に合わせて、その日のプレイを手配してくれるという。

「9ホール終わったら、『一度家に帰って、ご飯を食べてからまた連絡します』ということも。夕方から、カートでふらりとコースへ出る日もありますよ、こんなに自由にゴルフができるなんてなかなかないでしょう(笑)」

離れた場所から仕事を見つめ直す

世界でレストランブランドを550店舗以上展開するダイニングイノベーショングループ。西山氏が飲食業界に飛びこみ30年、今も「レストランをつくる」ことにワクワクするのだという。

「やっぱり、好きなんでしょうね。新しい業態をつくって、最初の10店舗くらいまで、自分が想定したお客様が来ているか、その人たちがどう感じているかを見て試行錯誤する。その段階が面白くてたまらないんです」

店ごとの口コミを確認し、狙いどおりの評価を得られているか、メニューに足りないものはないかを自ら探る。事業の形が整い、経営管理やマーケティングの比重が高まれば、そこに力を発揮する仲間に任せ、自分は次の挑戦、さらなる新しいレストランづくりへと向かう。

「実際に動いている時って、自分自身を客観的に見られない。だからこうして別荘へ来て、離れた場所から自分のやってきたことを見つめ直すんです」

数々の別邸を持った西山氏が、戻ってきたこの水上。ここは、西山氏が英気を養い、新たなレストランを生みだすきっかけの地に再びなることだろう。

Home Details

01|景色と一体になる

谷川連峰とゴルフ場の広々とした芝を眺められるよう窓は最大限まで大きくし、床やインテリアの色合いも、景色になじむものに。

02|理想的なキッチン

キッチン上の飾り棚には、パスタや調味料が瓶に入って並び、その真下には照明を設置。瓶がこの光を受けてステンドグラスのように輝く。

Data
所在地:群馬県利根郡みなかみ町
敷地面積:3,438㎡
延床面積:345㎡
デザイン:ろじ 成戸顕治
設計:フューチャーリンク建築社
構造:RC構造、地上1階建て

西山知義/Tomoyoshi Nishiyama
ダイニングイノベーショングループ ファウンダー。1966年東京都生まれ。ダイニングイノベーショングループ創業者。1996年に「牛角」1号店を開業。2013年に「日本の食文化を世界に」をテーマにダイニングイノベーションを設立。「焼肉ライク」「やきとり家すみれ」「VANSAN」「七宝麻辣湯」など550店舗以上をグローバルに展開する。

【特集 自分の世界に浸れる家】

この記事はGOETHE 2026年12月号「総力特集:陶酔の没入邸宅」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら

TEXT=安井桃子

PHOTOGRAPH=古谷利幸

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