雨が樹々の緑をより際立たせる初秋の軽井沢。その一角の深い森に、何台ものクルマが吸い込まれていく。迎えるのはダイニングイノベーション代表取締役会長、西山知義氏。10月、この地に待望の別荘が完成した。今日はそのお披露目だ。
別荘のイメージは海外のワイナリー
「別荘のイメージは海外のワイナリー。この軽井沢の森を見た時に、毎年訪れるナパやブルゴーニュのワイナリーの雰囲気を思い出したんです」佐島に持つ海の別荘同様、この山の別荘も自分の思いを徹底的に形にしたいと、あらゆるゾーニングを自身で考え、使う素材もすべて指定した。エイジングを感じるワイナリーのように、建物の外壁や内装に使う木材は古材をアメリカから輸入。
「大工さんに『新築なのにこんな古材を張るなんて』と言われました(笑)」
サッシにはビンテージ加工を施したり、ガラス扉の印刷も敢えてかすれさせたりと、新築でありながら、まるでずっとこの地にあったかのような、軽井沢の森に溶け込む美しい姿に。
そのこだわりは、別荘の細部にまで行きわたる。吹き抜けの玄関や広いリビングも壁に古材を使用し、絶妙に配されたアンティークのサインボードやハンティング・トロフィーなどがラスティックな印象に。目を引くアートは、お気に入りのアーティスト・小澤雅志氏の作品。落ち着いたトーンのなかに現代的な絵を飾る、西山氏の美意識はそんなところにも表れている。リビングにはDJブースも設置。棚に飾られたレコードは、中古レコード屋を自ら廻って探したそうだ。「いつもならデジタル音源で聴く音楽も、この別荘にはノイズも聞こえるアナログの音のほうが合っているんです」テラスに出ればそこは、白いクッションをコの字形に配したアウトドアリビング。
すべては人をつなぐためそこに投資の意味がある
「テラスにテーブルとイスじゃ当たり前。屋外なのにリビング? という意外性が楽しいでしょ。アウトドア用暖炉では、キャンプファイアーのように火を囲んでウイスキーやコーヒーも飲めるようにしています」ガラス張りのワインセラーには、5大シャトーやDRCをはじめとしたブルゴーニュの最高級ワインが約500本! 「ワインはみんなで飲んでこそ楽しい」と、この日も訪れたゲストがその味を堪能した。
「例えばペトリュスをひとりでなんて飲まないですよね(笑)『これ飲んじゃうの?』なんて言いながら、みんなに楽しんでもらうためにあるんです。味はもちろん、そのもてなしの心がワインの価格なんだと思います」
来た方に楽しんでもらえるかという西山氏の思い
自分の好きなものをすべて盛り込んだ別荘だが、そのベースには来た方に、どれだけ楽しんでもらえるかという西山氏の思いがある。それは別棟のゲストルームにも。
「人の別荘に招待された時、同じ屋根の下に泊まるのは気が引けるもの。ゲストに気を使わせず、ホテルのようにのびのびと過ごしてもらいたいので、敢えて別棟にしました」
牛角を一大チェーンへ築き上げ、現在は海外に店舗展開を加速する経営手腕だけではなく、その人望の厚さに各界を牽引(けんいん)する経営者陣から"アニキ"と慕われる西山氏。今回、弊社見城が呼びかけ人となり、集結したのはそんな錚々(そうそう)たるメンバーばかりだった。彼らからは「超一流の建築プロデューサーになれる!」「いくらお金をかけても、このセンスの家は建てられない」と絶賛の声が挙がる。
「でも一番嬉しいのは、ここに来た方たちが居心地のよさを感じてくれること」と言う理由は、別荘を建てた意味にある。
「21歳で起業して、とにかく目標に向かって一生懸命突っ走ってきた。でもこのまま走って、ふと気づいたら70歳になっちゃいました、というのはもったいないと考えるようになりました」
投資で得られるのがみんなと分かち合う楽しい時間
ジムも本格的で外にはゴルフネットも50歳を迎えるころから、改めて自分の人生を考え始めたという西山氏。
「人生をもっと積極的に楽しみ、今生きている時間を有効に使いたい。でも大事なのはそれが自分だけではなく、友人や家族など周りの人たちと一緒に楽しむということ。彼らに喜んでもらう、それが自分の生きてる証、存在価値なんじゃないかと思ったんです」
自分が投資するものは、すべて人をつなぐものだったと西山氏は言う。
「例えばこの別荘のような場があれば、みんなで集まり、いつでもこうやって楽しく過ごすことができる。お金は目的ではなくて、あくまでもその材料。その投資で確実に得られるのが"みんなと分かち合う楽しい時間"だと思っています」
西山氏にとって、どんな素晴らしいモノも、ただ所有するだけでは何の意味もない。自分の思いを込めた形を作り上げ、それが人をとことんもてなし、みんなに喜びを生む。そんなかけがえのない時間が流れる、それがこの別荘なのだ。