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2026.10.04

なぜ、100人の称賛より「1人のアンチコメント」が気になる? SNSの悪意から心を守る4つの方法

「この人言いたいことわからない!」「目立ちたいだけでしょ」「くだらない」。SNS全盛の時代、記事やコメントを投稿すると、思いもよらない攻撃を受けることがある。なぜ、悪意あるコメントを受けるのか、そしてどのように対処すれば良いのか? 4万人以上に脳のしくみの講演をしてきた脳科学者・西剛志が解説する。

なぜ、100人の称賛より「1人のアンチコメント」が気になる? SNSの悪意から心を守る4つの方法
Unsplash / Camilo Jimenez ※画像はイメージ

笑顔より「怒った顔」に目がいってしまう理由

突然ですが、次のイラストを見てください。この中に、ネガティブな表情はどこにあるでしょうか?

なぜ、100人の称賛より「1人のアンチコメント」が気になる? SNSの悪意から心を守る4つの方法

2017年の研究でも、私たちは相手の表情を見るとき、笑顔よりもマイナスな表情のほうに目を向ける傾向があることがわかっています(*1)。これは特に「神経症傾向」が高い人によく見られるもので、4歳の子どもから大人まで共通して見られる、とっさの無意識的な反応です。

このマイナスに注目する脳のクセを「ネガティビティ・バイアス」と言います。バイアスとは「偏った考え方」という意味で、私たちがいち早くリスクを感知して回避するための生命の生存戦略の1つと考えられています。

たった1件の悪口で、なぜ気分まで落ち込むのか?

実際に2025年の英国ウォーリック大学のリサーチでは、128人にネガティブ/ニュートラル/ポジティブなSNSコメントを見せたところ、ネガティブコメントを見たグループのみが不安で気分が悪くなりました(*2)。特に若い人にその傾向が顕著に見られたそうです。

厄介なのは、コメントを見たときだけ心が痛むわけではなかったことでした。特に人からの拒絶に痛みを感じる人ほど、嫌なことを何度も繰り返し考えてしまったそうです(*3)。

これを専門用語で「反芻(はんすう)」と呼びます。「嫌なコメントを見る」 → 「傷つく」 → 「どういう意味だったんだろうと考える」 → 「自分を疑いはじめる」という思考を何度も繰り返すことで、心のダメージがより深くなるのです。

SNSコメントは、本当の批判ではないこともある

多くの人は批判されると、相手から拒絶されていると感じます。

ところが、2026年にシカゴ大学が20億件を超えるネット上の会話を調べたリサーチでは興味深い結果が出ています。ネット上の滞在時間が長いほど、発言がネガティブに傾いていくことがわかったのです(*4)。その理由を調べていくと、意外なことに相手が嫌いだからではなく「人と違うことを言って目立ちたい」という考え方が影響していました。長時間ネットの世界にいると、普通の言葉では目立ちません。そのため、刺激的な言葉で注目されたい人もいるのです。

ネットで攻撃する2つの人種

もう1つ注目したいのが、ネット上で悪意があるように見える人は、大きく2つのタイプがあることです。

1つは、相手が傷つくのを楽しむダークな性格の人たち。世界的にダークパーソナリティの研究が行われていますが、ある調査でネット上で誹謗中傷する人としない人を比較したところ、「サイコパス」と呼ばれるダークな性格が、際立って強く関係していました(*5)。このような人にはまず近づかないことです。

2つめは、感情表現が苦手な人でした。2024年の研究では、感情調整が苦手な人ほど、オンライン空間で衝動が抑えられず、激しい発言につながりやすかったそうです(*6)。

つまりネットの攻撃者には、「ダークな人」と「ただ感情表現が苦手な人」の2タイプがいるということです。感情表現が苦手な人から影響を受けている自分を想像すると、少しこっけいに思うかもしれません。

アンチコメントに心を支配されない「4つの距離の置き方」

では、こうしたマイナスのコメントから、私たちの心をどのように守っていけばよいのでしょうか。簡単にできることでおすすめしたいのは、次の4つです。

1. コメントを「評価」ではなく「データ」として見る
「嫌われた」ではなく、「こういう反応をした人が、1人いた」と言い換えるだけで、心理的な距離が生まれる効果が期待できます(*7)。

2. 傷ついた直後に返信しない
怒りや傷ついたストレス状態では、脳が冷静な判断をしにくくなります(*8)。誤った反応をしないよう一呼吸置くというルールを、あらかじめ自分に課してみましょう。

3. 夜中にアンチコメントを見ない
SNSを閲覧する時間も大切です。「マインドアフターミッドナイト」という現象があり、深夜は感情コントロールに関わる脳の働きが弱まり、物事をより否定的に捉えやすくなります(*9)。夜中にコメントを見つけたら、翌朝に持ち越すルールを決めておくのも1つの方法です。

4. レビューは多様性で、正しいとは限らないことを知る
私も多くのメディアに出演してきましたが、以前、一部の辛辣なコメントを見て一瞬悲しくなったことがありました。しかし、冷静にコメントを読んでみると、内容を完全に理解していない人が一部だけを抜き出してコメントしているケースもあったのです。

またアマゾンのレビュー研究からも、実際の商品の評価とは乖離があることもわかっています(*10)。私たちは、一部だけを見て全てを知っているような気持ちになることがありますが、意見は人それぞれです。誰の言葉を基準にするかはストレスを減らす上でとても大切です。

一見すると辛辣に思えるコメントも、全てではないにせよ、目立ちたい欲求が強かったり、感情表現が苦手な人が行う多様性のある意見の集合体です。本人には悪気がないこともありますので、その背景を理解して、言葉を冷静に眺める工夫が、これからの時代は特に必要となるでしょう。

ただ、人を傷つけることに快感を感じるダークな人には注意が必要です。その「性格の暗い側面」については、また別の機会に、脳科学の視点から詳しくお話しできればと思います。

脳科学者・西剛志「勝者の思考」
西剛志/Takeyuki Nishi
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。武蔵野学院大学スペシャルアカデミックフェロー。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。2002年に博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子供まで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて4万人以上に講演会を提供。『世界仰天ニュース』『モーニングショー』『カズレーザーと学ぶ。』などをはじめメディア出演も多数。TBS Podcast「脳科学、脳LIFE」レギュラー。著書に20万部のベストセラーとなった『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』、『1万人の才能を引き出してきた脳科学者が教える 「やりたいこと」の見つけ方』『結局、どうしたら伝わるのか? 脳科学が導き出した本当に伝わるコツ』など海外を含めて累計45万部突破。最新刊は『脳科学×最新研究が解き明かす64のテクニック 「伝える」が「伝わる」に変わるひみつ』。

(*1) Lagattuta KH, Kramer HJ. Try to look on the bright side: Children and adults can (sometimes) override their tendency to prioritize negative faces. J Exp Psychol Gen. 2017 Jan;146(1):89-101
(*2) Ai, Y., von Mühlenen, A. An experimental online study on the impact of negative social media comments on anxiety and mood. Sci Rep 15, 26642 (2025)
(*3) Stewart LC, Sorid SD, Olino TM. Rumination and Rejection Sensitivity: A Meta-Analysis. J Clin Psychol. 2026 Jul;82(7):1016-1029
(*4) Mao H, Leong YC, Jiang Y, Koch A, Brady WJ, Jackson JC. Differentiation drives the erosion of positivity on social media. Proc Natl Acad Sci U S A. 2026 Jun 30;123(26):e2527316123. doi: 10.1073/pnas.2527316123. Epub 2026 Jun 22
(*5) Muir SR, et al. Examining the role of moral, emotional, behavioural, and personality factors in predicting online shaming. PLoS One. 2023 Mar 23;18(3):e0279750
(*6) Syrjämäki AH, Ilves M, Olsson T, Kiskola J, Isokoski P, Rantasila A, Bente G, Surakka V. Online disinhibition mediates the relationship between emotion regulation difficulties and uncivil communication. Sci Rep. 2024 Dec 3;14(1):30019
(*7) Kross, E., & Ayduk, O. (2017). Self-distancing: Theory, research, and current directions. In J. M. Olson (Ed.), Advances in experimental social psychology (pp. 81–136). Elsevier Academic Press.
(*8) Shields GS, et.al. The effects of acute stress on core executive functions: A meta-analysis and comparison with cortisol. Neurosci Biobehav Rev. 2016 Sep;68:651-668
(*9) Dzogang F, Lightman S, Cristianini N. Diurnal variations of psychometric indicators in Twitter content. PLoS One. 2018 Jun 20;13(6):e0197002/ Tubbs AS, Fernandez FX, Grandner MA, Perlis ML, Klerman EB. The Mind After Midnight: Nocturnal Wakefulness, Behavioral Dysregulation, and Psychopathology. Front Netw Physiol. 2022;1:830338
(*10) De Langhe, B., Fernbach, P. M., & Lichtenstein, D. R. (2016). Navigating by the stars: Investigating the actual and perceived validity of online user ratings. Journal of Consumer Research, 42(6), 817–833

TEXT=西剛志

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