週3回のトレーニングや毎日服用しているサプリをはじめ、郷ひろみが何十年も継続してきた習慣は多数ある。途中で投げ出すことなく続ける秘訣は、「3」という数字にあった。連載「郷辞苑#4」

筋肉が大きくなるのに3ヵ月かかる
最近、「タイパ」という言葉をよく耳にする。タイムパフォーマンス、つまり短い時間でどれだけ効果や満足度を得られるかを表す概念で、Z世代を中心に広がったそうだ。
「石の上にも3年」や「継続は力なり」という教えと、「気合い」「根性」という言葉と共に育った昭和世代の僕としては、「日本人の価値観の変化はここまで来たのか」と少々驚いている。
短時間で効率よく結果を出せれば、それに越したことはない。しかし、残念ながらすぐに結果が出るものは、そう多くはない気がする。たとえば筋肉。皆さんご承知の通り、どんなにハードなトレーニングをしても、1日で筋肉がつくことはない。専門家によると、筋肉が目に見えて大きくなるには3ヵ月必要だそうだ。
筋肉に限らず、初めてトライすることがある程度の結果として現れるには3ヵ月かかると、僕は思っている(禁煙するなど、やめるという選択をした場合も同じくらい時間がかかるだろう)。僕は健康のためにサプリメントや漢方薬を毎日服用しているが、これらも即効性があるわけではないので、まずは3ヵ月続けるのがマイルールだ。
正直、最初の1ヵ月は効果を実感することはほぼない。でも、3ヵ月も続ければ、「なんだか調子がいいな」とか、「イマイチしっくりこないな」など、自分にあっているかどうかわかるようになる。その結果をもって、以降も継続するか辞めるかを判断している。
継続の秘訣は目標を低く設定すること
ただし、3ヵ月続けるには、いくつかのハードルがある。最初のハードルは3日。「三日坊主」という言葉があるように、勢い込んで始めても、つまり「やるぞ!」と情熱を持っていても、始めて数日もすれば、その意志が薄らいできて、「続ける意味があるのか」と、自分の決心を疑いだしたり、めんどうになって「明日でもいいか」、と先延ばししたりというケースは、往々にしてある。
次のハードルは30日、1ヵ月だ。効果が感じられないと、この時点であきらめてしまう危険性が高い。最初に抱いた決意が少しずつ揺らいできている証拠だ。でも、そこを乗り越えて3ヵ月続けられれば、なんらかの手ごたえを感じられるはずだし、すでに習慣になっていることだろう。
何かを続けることの効果がまったく実感できず、この時点でやめるにしても、3ヵ月継続した上での判断なら後悔はないに違いない。一番もったいないのは、もう少しだけ続けていれば大きな成果が得られたのかもしれなのに、“触り”の部分でやめてしまうことではないだろうか。
3ヵ月続ける秘訣のひとつは、目標を低く設定することだ。
例えばトレーニングにおいては、過度に重たいウエイトは持たないこと。最初から目標を高く設定しない、あらかじめ低く設定する。こんなのでいいんだろうか、と思うぐらいがいい。つまり、やり始めたばかりの頃はモチベーションが高いだろうから、重いウエイトでもクリアできるだろう。でも、かなりの確率で、だんだん辛くなってくる。「明日もまたトレーニングしないといけないのか」と、しんどさを感じ、早々にフェードアウトしてしまいかねない。
話が重複するかもしれないが、まずは、自分が楽にこなせる目標を設定する。初めは、「これでは物足りない」、と思うかもしれないが、楽にこなせるぐらいが丁度いい。なぜなら、最初は熱意も情熱もあるが、それが少しずつトーンダウンしてくる。最初に立てた目標が高すぎると、目標をクリアすることだけに必死になってしまう。だから、たとえモチベーションが下がったとしても、あらかじめ設定した目標が低ければ、低い設定と下がった気持ちがバランスするというものだ。
そして、それに慣れてきたら、徐々にウエイトを増やせばいい。ただし、トレーニングは週3回と決めたら、そのスタンスは崩さないこと。
低い山を乗り越えたら、次はもう少しだけ高さのある山にと、少しずつ目標を上げていけば、いつの日か高い山に到達できると、僕は思う。
勇気とは、怯んだ時に振り絞って前に進む力ではない。力が尽き果てた時に前へ進む力、だ。
Good luck on your life!!
郷ひろみ/Hiromi Go
1955年福岡県生まれ。1972年NHK大河ドラマ『新・平家物語』で芸能界デビューを果たし、同年8月に『男の子 女の子』で歌手としても活動を開始。以降、『よろしく哀愁』『お嫁サンバ』『言えないよ』『GOLDFINGER'99』など数多くのヒット曲を世に送り出し、日本を代表するポップシンガーとして活躍。デビュー日となる8月1日、70歳初シングル『I’m Neo G』&武道館全70曲完全収録ライブCDがリリース。著書に『ダディ』『黄金の60代』などがある。

