PERSON

2026.09.05

70歳・郷ひろみ「準備に100%で臨まなければ、本番で100点は出せない」【第5回】

何十年間も歌ってきた楽曲であっても、本番前には必ず念入りにリハーサルを欠かさないという郷ひろみ。そこに込められた想いとは? 連載「郷辞苑 第5回」 【その他の記事はこちら】


70歳・郷ひろみ「準備に100%で臨まなければ、本番で100点は出せない」【第5回】

自信は持っても過信はしない

来年、2027年に僕はデビュー55周年を迎える。(2026年)8月1日に発売された新曲、『I’m Neo G』を含めてシングルは112枚、アルバムは54枚出していて、持ち歌は軽く1000曲を超える。とくに『お嫁サンバ』や『2億4千万の瞳』、『GOLDFINGER'99』などは、ファンの方々のリクエストもあって、今もライブやテレビの歌番組で歌う機会が多い。これまでどれくらい歌ってきたか、自分でもわからないくらいだ。

これらの楽曲を歌う時、「何度も歌ってきたんだから、ぶっつけ本番でも問題はないはず」「リハーサルはやらなくても大丈夫でしょ」と言われることもある。それも一理あるかもしれない。でも、周りがどう思おうと、僕にはそんな考えは毛頭ない。今まで何千回と歌ってきた楽曲でも、本番前のリハーサルは充分に、自身が納得するまでやるのだ。どのくらい充分かというと、基本、歌も踊りも、その時自分の持っている100%の力をすべて出し切るのだ。

100%の準備をして初めてステージで100点満点のパフォーマンスを狙える位置に達する、というのが僕の考え。60%の力でリハーサルすれば、本番は良くても60点。残りの40点を“ぶっつけ本番”で取るのは不可能だ。逆に、リハーサルから全力で取り組むことでアドレナリンが出れば、本番で110点、120点を取れる可能性があるかもしれないと思っている。

ビジネスパーソンが、大事なプレゼンの前に資料を念入りに読み込み、クライアントにどう訴えかけるかを熟考するなど、準備に力を注ぐのと同じだ。

正直に言うと、若い頃は、「本番で100%の力を出すために、リハーサルは抑え気味にしておこう」とか、「何度も歌っているのだから問題ない」と、力を出し惜しみして痛い目にあったことも、足をすくわれたこともある。

人間、慣れた時が一番恐いのだ。これは、僕の経験からわかっている。

つまり、そうした経験を通して、準備を万全にしなければ本番で力を発揮できないことを学んだ。

「これだけやったのだから大丈夫」と思える、行動に裏づけられた自信は持っても、過信してはいけないのだ。

「マイナス1点」が成長の原動力になる

リハーサルに全力を尽くしても、毎回100点を取るのは難しい。「これだけやったのだから万全だ」と思ってお客様やテレビカメラの前に出ても、どこかでつまずき、100点は取れない。必ずマイナスがある。その点数は誰がつけるのかというと、お客様の判断ももちろん大切にしているが、僕自身のジャッジが基準になっている。客席がどんなに盛り上がり、周囲がその日のステージを称賛してくれようと、自分の中で満足いかないものが少しでもあれば、それは100点満点ではないのだ。

もしかしたら、一生、自分に100点満点を出せないかもしれない。キャリアを重ねるほどに「こんなふうに歌いたい」という理想が高くなっていることもあるが、同時に、あえてマイナス点を出すという評価を自身に下している気もする。なぜなら、これでOKと満足してしまったら、その瞬間に、人は成長することをやめてしまうから。だから、足りない部分を埋めるために、また努力する。その繰り返しが、僕を成長させてくれるのだと思う。

僕の性格からして、何に関しても満足できない。つまり、自分の粗を探し、欠点を見つけにいくことをしているのだろう。自分の足りない部分を知ることが、一番成長させてくれると思っているから。

100%リハーサルをやれば自分自身、納得がいく。やらない自分よりやった自分がすっきりする。リハーサルで力を出し切って、本番は、ラッキーな時、アンラッキーな時があると思いたいのだ。

結果は良いか悪いかだけ。それぞれの日が、良い、悪い、だけに傾くだけ。ならば、リハーサルは、自分が納得するまでやりたい、のだ。

もし、本番で失敗したら?
挽回すればいい。
諦めたら終わる、と僕は思っている。

郷ひろみ/Hiromi Go
1955年福岡県生まれ。1972年NHK大河ドラマ『新・平家物語』で芸能界デビューを果たし、同年8月に『男の子 女の子』で歌手としても活動を開始。以降、『よろしく哀愁』『お嫁サンバ』『言えないよ』『GOLDFINGER'99』など数多くのヒット曲を世に送り出し、日本を代表するポップシンガーとして活躍。デビュー日となる8月1日、70歳初シングル『I’m Neo G』&武道館全70曲完全収録ライブCDをリリース。10月24日・25日に日本武道館公演
『Hiromi Go Concert Tour 2026 〜ALL MY LOVE〜THE GRAND FINAL at 日本武道館 』を開催する。著書に『ダディ』『黄金の60代』などがある。

TEXT=村上早苗

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