スペイン・テネリフェ島で最新849 テスタロッサ スパイダーに試乗。量産フェラーリ最高峰の俊足と、屋根を開けて味わう開放感。約40年の時を経て蘇った現代版“テスタロッサ”、その旨みに迫る。

穏やかなのに力強い。懐の深い新型フェラーリ
日本から約24時間。たどりついたのはスペイン・テネリフェ島だった。市街地から海岸線、火山地帯を縫うワインディングまで。変化に富んだ道を走るほど、この新型フェラーリが、ひとつの性格には収まりきらないことが見えてくる。その名は“849 Testarossa Spider”。
実車は写真で見る以上に格好いい。低く構えた姿には迫力があるが、ことさらに派手さを振りまくわけではない。美しいのが、前後を大胆につなぐサイドシェイプ。往年のフェラーリを思わせながら、張りのある面と鋭いラインが豊かな陰影を描く。
「テスタロッサ」の名に心を躍らせる世代も多いだろう。だが、これは過去を懐かしむためだけの名ではない。「SF90 Spider」の後継にあたるプラグイン・ハイブリッド・スーパースポーツで、V8ツインターボと3基の電気モーターから1050CVを発揮する。数字だけを見れば、神経を尖らせて向き合うクルマに思える。ところが、走りだしは驚くほど穏やかだ。
「eDrive」なら静かに街へ溶けこみ、アクセルを深く踏めば、間髪を入れずV8が目を覚ます。電動からエンジン駆動への移行はダイレクトかつ滑らか。ペダルには適度な節度があり、速度は踏みこみに応じて着実に重なっていく。つづら折りでも姿勢は乱れず、乗り心地も終始上質ときた。ドライバーを急かさない懐の深さがあるのだ。

印象に残ったのは、高揚感以上の安心感
「RACE」モードを選び、ひとたび鞭を入れると、反応は研ぎ澄まされ、背後のV8も存在を鮮明にする。それでもクルマだけが先走ることはない。操作と挙動は自然につながり、速度を上げるほど跳ね馬とのシンクロが深まっていく。速さを見せつけるより、乗り手との一体感を育てる。その落ち着きに、このクルマの品性を感じたしだい。
ハードトップを下ろし、スパイダーに変形。すると、光も風も、テネリフェ島の匂いも、V8のエグゾーストも、すべてが身体へ直接届く。髪が風にほどけることさえ、オープンで走る理由になる。しかも、視界が大きく開けても、ステアリングから伝わる確かさは変わらず、運転への集中も途切れない。まるで馬上で風を受けるような開放感に包まれる。
果たしてこのクルマが似合うのはどんな人物だろうか。それは、速さ一辺倒ではなく、オンとオフ──その時間の使い分けにも質を求めるエグゼクティブだ。街を流せば思考がほどけ、屋根を開ければ感覚が呼び覚まされる。さらにクローズドコースでは、一瞬の判断に集中することで、感性が研ぎ澄まされていく。心身を解放し、次の決断へ向かうために走る。7000万円超の1台を、ただ所有するのではなく、乗りこなす。
約40年の時を経て、再び現れた「テスタロッサ」──日常と非日常、その境目を自在にまたぐほど、跳ね馬の旨みは深まっていく。速さだけでは終わらない。その先にある自由と余裕まで味わわせてくれるからこそ、今、再びこの名なのだ。

フェラーリ 849テスタロッサ スパイダー
伝説の名車──“テスタロッサ”の名が与えられた量産フェラーリ史上最も強力なプラグインHVのスパイダーモデル。1050CVのPHEV機構、4輪駆動、14秒で開閉できるリトラクタブルルーフを備える。公道からサーキットまで、クーペの性能とスパイダーの自由を同じ器に収めた。¥70,270,000~。
<SPECIFICATIONS>
ボディサイズ:全長4718×全幅2304×全高1186mm
ホイールベース:2650mm
車重:1660kg
駆動方式:4WD
エンジン:4ℓV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8速DCT
エンジン最高出力:830CV(610kW)/7500rpm
エンジン最大トルク:842N・m(85.9kgf・m)/6500rpm
システム最高出力:1050CV(772kW)
問い合わせ
フェラーリジャパン www.ferrari.com/ja-JP/auto/849-testarossa-spider





