美食を探求する四兄弟・秋元康、小山薫堂、中田英寿、見城徹。この一年の間でハートを射止めた、本当は誰にも教えたくないとっておきのお店について熱く語り合う。No Restaurant, No Life. 毎年恒例、ゲーテ・レストラン大賞、「ゲーテイスト2026」が今年も開宴!

見城「会員制レストランとは美食の“共伴者”と口福を分かち合う特別な空間である」
「8年くらい前から徐々に増えている会員制のレストラン。この頃は、焼肉や焼鳥、おでんや中華、鮨でもそうした店が続々とオープンしており、今の世の中はまさに空前の“会員制ブーム”と言えます。『ゲーテ』では折に触れて、会員制や紹介制の店に着目した特集を組んできましたが、それらを単なるステイタスシンボルとして捉えるのではなく、なぜ人は“未知の世界”に興味関心を抱くのかということをスノッブな視点で見つめるのをテーマのひとつとしています。
会員制のレストランはオーナーによってそれぞれ意図が異なると思うのですが、シェフもゲストも“運命共同体”のような気持ちで食を謳歌するというムードがその空間にはあります。時にはいかに食と対峙するかの真っ向勝負のような緊張感が流れることもあり、僕はそうした雰囲気にとても心が動かされます。いろいろなご縁があり、現在は10軒以上の会員制レストランに通っていますが、すべてに共通しているのは何度訪れても心が震えるほど料理が素晴らしいこと。多少、入会金が高くても唯一無二の感動体験ができるのですから、これ以上素晴らしいことはないです」
秋元「思い出と発見が尽きないイタリアンは、常に日本人の心のセンターにある」
「2025年あたりからイタリアンの新店が続々とオープンしていると聞きます。僕が昔から大好きな料理のひとつで、90年代のバブル全盛期から現在まで、さまざまなお店を訪れてきました。西麻布の『アルポルト』や、赤坂の『グラナータ』、銀座の『ラ・ベットラ・ダ・オチアイ』など、日本人の心に寄り添ってきたイタリアンは本当に偉大。思いこみかもしれないけれど、イタリア料理は日本人の舌にもっとも合う西洋料理なんじゃないかなとずっと思っています。
炭水化物好きとしてはパスタに注力しているお店と聞くととても興味をそそられますし、ジェノベーゼやアラビアータとひと口に言ってもお店によってこんなに違うんだという発見があります。イタリアンの真髄は、食べて呑んで、おしゃべりしてまた食べてという明るさにある。そうした賑わいをいつの時代も人は求めるのではないでしょうか」

小山「店をひとりで切り盛りするワンオペは料理人の哲学と生き方が見えるからこそ面白い」
「コロナ以降、特に増えた印象がありますが、僕は昔からワンオペの店が大好きです。なかにはひと筋縄ではいかない個性を持った店もありますが(笑)、そういうクセもワンオペ店の魅力。ひとりでやるということは誰かのせいにできないし、ごまかしがきかない。全責任の所在を自分で持つことに真剣に向き合っている店主が営む店には心惹かれるものがあります。値に見合う料理を提供されていて、ペアリングにしてもその人の答えがそこにある。親しくなると僕も我儘を言いがちですが(笑)、深い付き合いができる店はやはり素敵です」

中田「個性と真心を貫いているドリンク設計にレストランの思想を見る」
「お酒に関わる仕事をしていることもあり、僕は日本のアルコール市場のことを真剣に考えています。世界的に見てもコロナ以降、アルコールの消費量が減り続けているのは間違いないですが、特にこの数年はワインやウイスキーに為替の影響が出ており、それもアルコール離れの一因に。
そうなると困るのはレストランで、お店で扱うドリンクをどうするかという設計を考えることは急務ではないかと思います。具体的には他店とのノンアルコールドリンクの差別化や、バイ・ザ・グラスを充実させることも打開策のひとつ。赤白ロゼ、それに最近はオレンジも好きなので、それをいれて10種くらいグラスワインを揃えているお店は魅力的。日本酒や焼酎も含めてドリンクに注力するお店が増えることを切に願っています」

秋元「“個”の時代を象徴するアラカルトは食べ慣れた大人をなによりもときめかせる」
「最近のレストランの傾向として、アラカルト主体のお店が増えてきているというのはとても喜ばしいです。もちろんコースでそのお店の美学ごと味わうのも素敵ですが、食べることが好きな人たちとあれも食べたい、これも食べたいと言い合う時間は楽しいですよね。
アラカルトには大皿で出された料理を各自で取り分けるというのもありますが、今の“個”の時代を象徴していると思うのは、それぞれが好きなように注文できるお店です。一緒にテーブルを囲んでいる人の好みを知ることができますし、あの料理は美味しそうだな、自分も頼めばよかったと心のなかで思ったり。なかには量を調整してくださるお店もあって、本当に食いしん坊冥利に尽きます」
見城「若手の躍進は太陽のように輝き、ベテランの挑戦はいつでも圧倒的に眩しい」
「日本のレストラン文化が花開いたのは1985年前後。今も昔も変わらずにグランメゾンの志を貫く『アピシウス』、まごうことなきフランス料理の文化をそのまま表現した『トゥールダルジャン 東京』、2025年惜しまれつつ閉店した『コート・ドール』が次々に誕生し、それは素晴らしく華やかな様相でした。そして、その時代から最前線を走り続けているのが、“世界のミクニ”こと、三國清三です。もう何十年も彼の生き様を見てきましたが、やはり70歳を超えても攻めの姿勢を貫く姿には感銘を受けますし、あっぱれだと思います。
中国料理の脇屋(友詞)シェフが一昨年、銀座にビルを一棟建ててカウンターで自身がもてなす店をオープンさせたのも、レストラン好きの心を大いに沸かせる出来事でした。僕は料理とは真心であると思っているので、そうしたベテランの想いがストレートに伝わるチャレンジには胸を打たれます。才能豊かな若手の料理人にも、そうした魂はきっと伝わるはずです」

小山「レストラン業界の裾野を拡げているのは間違いなくフレキシブルな若手の感性だ」
「才能ある若手料理人の発掘と育成をテーマとした『RED-U35』というコンペティションを通して、この道で生きることを決めたたくさんの若者を見てきました。時代が変われば視点や考え方も変化するもので、15年前はいかに技術を磨くかということが料理人にとっての大きな素養と捉える人が多かったのですが、今はそこに自分のルーツを見つめる、自然環境との共生に取り組むなどの視点が加わり、それらをいかに自分らしく表現するかを考える若手の料理人が増えました。
お店で修業をするのではなく独学で料理を体得したというシェフもめずらしくなくなったのは、その気になれば自分で情報を取りにいくことができるという現代の性質もありますが、そこには圧倒的な熱量が存在します。そして、この数年の大きな変化は東京にこだわらない料理人が増えたこと。都市部から離れた自然豊かな土地でインスピレーションを得ながら自分の料理を深く掘り下げる。しなやかな生き方や自由な価値観を持つ若手の活躍が、日本のレストラン業界の発展につながっているのだと思います」
中田「“美食の旅”の真価とは土地の文化や生産者とのふれあいにこそある」
「全国各地の蔵や生産者のもとを定期的に巡るなかで、デスティネーションレストランと呼ばれるお店にうかがう機会も多いですが“デスティネーション”の基盤にあるのは、やはり食材との出合いなのではないかと思います。ただ、地方のレストランに行ってきた、で終わるのではなく、体験を最大化することにこそ、そうした旅の価値がある。料理の美味しさと使われる食材の鮮度は密接に結びついているものなので、そこに関心を持つことで世界はさらに拡がっていきます。
僕は常に価値とは何であるかということを考えます。人によって考え方はさまざまだと思いますが、食を目的に旅をする場合、その土地の空気ごと味わうことで、さらに深い満足感が得られるもの。例えば薫堂さんがプロデュースに携わっている『飛鳥Ⅲ』で、港ごとにいろいろな生産者や漁業の方が乗船してその食材を使った料理を味わえるとなったら、食の愉しみもより増すと思う。地方創生という観点でも、レストランを主軸に地元の生産者を訪ねるという観光モデルが生まれるのが理想だと思います」
ゲーテウェブ内「Goethe Gourmet Guide」の検索機能がバージョンアップ。今回のゲーテイストをはじめ、今まで誌面で紹介してきたレストランが、エリアやジャンルで検索できるようになった。

この記事はGOETHE 2026年10月号「総力特集:レストランなくして人生なし ゲーテイスト2026」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら

