ランドクルーザーの新たな基幹車種としてデビューしたのが「250」。モダンなデザインや装備を身に着けながらも、その中身は本格クロスカントリー4WD。しかし、いまやファッションアイテムとして絶大な人気を誇る。街中をドライブし、その使い心地を試してみた。

日本でもっとも長い歴史をもつクルマ
日本でもっとも長い歴史をもつクルマは、実はランドクルーザー。その歴史は1951年、当時の警察予備隊(現在の陸上自衛隊)の入札に向けて作ったクロカン4WD「トヨタジープBJ型」にはじまる。1954年に現在のランドクルーザーへと改称し、現在まで75年間続くトヨタを代表するモデルだ。

ランドクルーザーをランドクルーザーたらしめているのは、ラダーフレームを採用していること。はしご型をしたフレームの上に、別体のボディをのせた構造となっている。メリットはとにかくタフであること。耐荷重性、耐衝撃性、悪路走破性にすぐれる。一方でデメリットは、頑丈ゆえに車両重量が重くなり、燃費も悪くなる。また乗降性も乗り心地も良くない。製造コストも高くなる。

ちなみにいまもラダーフレームを採用し続けるモデルといえば、メルセデス・ベンツGクラスとジープ・ラングラー。いずれもブランドを代表するアイコンであり、日本国内では悪路走破性よりもファッションアイテムとしての評価が高い。そしてランドクルーザーもまた同様に絶大な人気を誇る。
以前、開発者が話していたのは、ランドクルーザーの使命は世界中の過酷な環境で生活する人たちの命を守ることという。その信念のもとに歴代モデルが開発され、“ランクル”はいまや生死を分けるような究極の選択が求められるシーンで壊れない、また壊れても直しやすいとの評価で信頼に値するブランドになった。盗難車ランキングナンバー1というのもその証左だ。
ランクルの新たな中核モデル「250」
そして現在、ランドクルーザーには4つのモデルがある。最新技術を導入するフラッグシップモデルの「300」、以前はプラドと呼ばれていた中核モデルの「250」、コンパクトサイズの「FJ」、そしてもっともクラシックなスタイルでランドクルーザーの普遍的価値を継承する「70」。

今回の試乗車は「250」だった。250シリーズは、300シリーズと同じ強固なGA-Fプラットフォームを採用する。ランドクルーザー初となる電動パワーステアリングを搭載、路面からステアリングへと伝わるキックバックを低減し、低速時の取り回し性を向上させている。またスイッチ操作で、フロントスタビライザーのロック/フリーを切り替え可能なSDM(Stabilizer with Disconnection Mechanism)を採用し、オフロードでの悪路走破性・乗り心地とオンロードの操縦安定性を両立させている。
パワートレインは、2.8リッター直4ターボディーゼルエンジン+8ATの組み合わせと、2.7リッター直4ガソリンエンジン+6 ATの2種類があり、試乗車は人気のディーゼル仕様の最上級グレード「ZX」だった。

エクステリアデザインは、角張った伝統的な要素とモダンさを組み合わせたもの。ボディサイズは全長4925mm、全幅1980mmで、ホイールベース2850mm。このホイールベース値はランドクルーザー“80”シリーズから続く伝統で、悪路走破性と室内空間とを両立する黄金比と言われるものだ。シートは、3列シート7人乗りと2列シート5人乗りの2つのタイプがあり、5:5分割のサードシートはスイッチ操作で電動格納ができる機能も備えている。

インテリアデザインは水平基調なもので、直立したAピラーが斜め前方の死角を減少するなどランクルらしく安全を重視した設計となっている。メーター類はTFT液晶、センターディスプレイは12.3インチサイズのものと、現代的な装備となっている。
電動パワステの採用で取り回し性を向上
車内に乗り込みエンジンを始動する。ディーゼル特有の音は聞こえるがそれでも随分と洗練された印象だ。最大トルク500Nmをエンジン回転数1600~2800rpmという低回転で発生させるので大きく重いクルマを不足なく走らせる。

本格オフローダーであるランドクルーザー70などは、ステアリングはスロー(たくさん切らないと曲がらない)だが、電動パワステの恩恵は大きく舵が切りやすくなっている。また直進安定性も向上しているようだ。
またランクルといえどもADAS(先進運転支援システム)が求められる時代でもあり、衝突被害軽減ブレーキなどをはじめとする最新の予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」を全車に採用。自動車専用道路で渋滞時に運転をサポートしてくれる「トヨタチームメイト」なども備えている。
おそらくはじめてランクルに乗る人がSUVなど普通の乗用車と比べて気になるのは先述したステアリング効き、取り回しのしやすさと乗り心地だろう。前者は電動パワステのおかげでかなり違和感が解消されているが、悪路走行を重視してのラダーフレーム構造ゆえ、さすがに乗り心地は普通の乗用車並みとまではいかない。突き上げや振動がそれなりに伝わってくる。

やはり、ランクルの本領は悪路でこそ発揮される。走行モードが切り替え可能なマルチテレインセレクトは、「オート/ダート/サンド/マッド/ディープスノー/ロック」の6種類を用意。作動中は、車両周囲の状況確認を4つのカメラでサポートする。またセンターコンソールには、「ダウンヒルアシストコントロール/クロールコントロール」スイッチ、さらには、デフロックやトラクションコントロールのオン/オフ、フロントスタビライザーのロック/フリーを操作するボタンを配置。これらを駆使すれば、想像を絶するような悪路だって走破できる。
モダンで洗練されたといえども、脱げばその中身は筋骨隆々である。そのあたりは理解した上で選ぶべきクルマだと結論づけようと考えながら都内を流していたら、若い女性が颯爽とドライブする色違いの250とすれ違った。ファッションアイテムのひとつとして選ぶのも、それはそれでアリだなと、すぐに心変わりしてしまった。


