バー業界でもっとも影響力があるとされる「50 Best Bars」。そのなかでアジアを対象とするランキング「Asia’s 50 Best Bars」が、2026年もマカオの「WYNN PALACE MACAU」で開催された。地域が限定される分、新たなトレンドがいち早く反映されることも多く、バーラバーの間でも関心を集めるこのランキング。今年も多くのスターバーが誕生した現地での熱狂と、ランクインを果たした日本のバーを紹介したい。

5日間にわたる熱狂が続いた「WYNN PALACE MACAU」
会場のマカオのIR「WYNN PALACE MACAU」では、授賞セレモニーの4日前からスターバーテンダー達によるイベントが開催され、現地を大いに盛り上げた。期間中、世界から約50のバーとシェフによるゲストイベントやコラボレーションを展開。日本からは「NARISAWA」の成澤由浩シェフや「VIRTÙ」のキース・モッツィなどがプレゼンテーションを行った。連日の熱狂ぶりは、まさにアジア各国で華開くバー文化を象徴するようであった。
祝福のムードが高まるなか、発表を迎えた「Asia’s 50 Best Bar 2026」。アジア22カ国から選出された今年のランキングを振り返りたい。
2026年のリストはニューエントリーが多数

近年、入れ替わりが激しい同ランキングだが、それはアジアのカクテルシーン全体の進化のスピードを物語っている。2026年のリストは、国やエリアがこれまで以上に多岐にわたり、14軒のニューエントリーがあった。現在のトレンドは、“Beyond the Glass”と呼ばれる動きだ。カクテル単体の味わいを超え、その土地ならではの体験やコミュニティ形成、ホスピタリティを重視する傾向が強まっている。
こうしたなか、今年アジアの1位に輝いたのは、中国・広州の「Hope & Sesame」。開業から10年で、念願の“The Best Bar in Asia”を獲得した。
「“Open Sesame(開けゴマ)”のように、人々は常に新しい文化体験を求めています。バーを訪れるときは、その町のアイデンティティを感じたいと思うはずです。その土地では何を飲んでいるか、どんな香りが愛され、どんな文化があるのか。そういったことを体感できる場所でありたいと思っています」(マーシャ・シャオ, Hope & Sesami)

中国各都市の勢いは目覚ましく、広州、深圳、上海、長沙、成都、北京の6都市から計7つのバーがトップ50にランク入り。そのうち3店舗がトップ10に入るなど、圧倒的な存在感を示した。
「今の中国では、ほぼすべての都市にカクテルシーンが存在します。上海周辺はカクテル都市としてすでに有名ですが、北京北部の小さな街にまで、その文化は広がっています。私たちも訪れる価値のあるディスティネーションバーでありたいと考えています」(イーサン・リュー, CMYK)
広大な国土ゆえの味覚の多様性と、自国の文化に誇りを持つ中国。文化を色濃く反映するバー体験が重視される今の時代において、ゲストが求めるものと合致した結果といえるだろう。結束力も強い中国のバーシーンは、今後も世界の注目が集まりそうだ。
結束力の強いバンコクからも多数ランクイン
タイ国内のカクテル文化を世界と繋ぐことを目的に、有名バーテンダーのニックス・アヌマンとコリン・チアにより立ち上げたイベント「Bangkok Bar Show」を2019年から行うなど、業界の教育と質の高い交流を重視してきたタイのバーコミュニティ。その成果は着実に形になっている。2026年は50位以内に最多となる8つのバーがランクインし、その存在感を感じさせた。

「お客様はより国際的になっています。そうしたゲストを迎える際、自分たちが何者で、何を伝えようとしているかを、瞬時に印象付ける体験を提供したいと思っています。そうすることが、「また訪れたい」と思ってもらえることに繋がるからです」(コーシル・カムジャ, Lennon’s)
2026年の「Bangkok Bar Show」は10月23日~25日に開催予定。バンコクの熱いバー文化を体感しに、足を運んでみてはいかがだろうか。
マレーシア、フィリピン、ベトナムにもクラフトカクテルの潮流
今回のリストでは、これまでも注目されてきたシンガポール(「Jigger & Pony」など4店)、ジャカルタからは(「Modern haus」「Cosmo pony」など4店)、そして香港(「GOKAN」など7店)が引き続き評価された一方で、マレーシア、フィリピン、ベトナムといったカクテル新興国の台頭も目立った。
「私たちがクアラルンプールで取り組んでいるのは、カクテル文化の種をまくことです。ここ数年行っている教育的なポップアップイベントでは、普段あまりお酒を飲まない方や興味ない方を対象に、ノンアルコールカクテルなどを通してミクソロジーの魅力を伝えています。まずは興味を持ってもらい、いつでも店に来てもらえるようなきっかけ作りを続けています」(アンジェリーナ・タン, Three X Co)
まだランクイン数は少ないものの、これらの国々で見られる新たな波も見逃せない。
日本からは3店舗。地方のカクテル文化にも関心は高まる
日本からは50位以内に3店舗、そして50位~100位までの“エクステンディドリスト”には8店舗が選出された。ホスピタリティの高さと独自の繊細な技術が融合した日本のバーは、今もなお世界から熱い視線が注がれている。
50位以内にランクインしたのは、「Punch Room Tokyo」(23位/東京)、「VIRTÙ」(26位/東京)、「Bar LIBRE」(39位/東京)の3店舗。
今年、日本で最上位となった「Punch Room Tokyo」は、東京エディション銀座にある“パンチカクテル”をテーマとしたバー。大きな器から取り分けてシェアすることに起源をもつパンチカクテルは、「仲間と分かち合う」という時代の潮流にも通じるものがある。ラウンジスタイルのリラックス感も現代のライフスタイルにマッチし、国内外からの高い人気を得ている。
これまで、4年連続でAsia’s 50 best bars入りをし、2024年には「Michter's Art of Hospitality Award」も受賞する実力店、フォーシーズンズホテル東京大手町「VIRTÙ」は、今年も上位に名を連ねた。バーを率いるのは、ジンバブエ出身・イギリス育ちのキース・モッツィ。ホテルならではの格式の高さがありながら、人々をリラックスさせる卓越したホスピタリティが魅力だ。アールデコの内装、フランスと日本の素材を掛け合わせる独自のカクテルが感性を刺激してくれる。
「Bar LIBRE」(東京)は、クラシックカクテルをベースに、ミクソロジーの技法などモダンなテクニックを取り入れたクラフトカクテルバー。カクテルコンペティションの世界大会優勝など、数々の受賞歴がある清崎雄二郎氏がオーナーを務める。昨年に続きの受賞で、10位ランクを上げて39位にランクインした。日本国内にとどまらず、ニューヨークのバーのプロデュースをはじめ、海外で精力的にゲストシフトを行い、日本と海外を繋ぐ架け橋となっている。
50位から100位までのランキングで初のランクインとなったのは、ザ・リッツ・カールトン東京の「ザ・バー」。また昨年に続き選出された大阪の「Nayuta」、熊本「夜香木」をはじめ、東京以外が半数以上を占め、地方の存在感を示す結果となった。
全体のランキングはサイトより確認できる。アジア各地の文化を反映したリストを手に、各都市のバーを旅してみてほしい。

お酒ライター 児島麻理子
出版社、洋酒会社勤務を経て、酒にまつわる執筆やプロデュースを行い、酒の魅力を発信し続ける。2025年には酒に特化したPR会社TOASTを立ち上げた。年間に訪れる新規バーは100軒以上。世界中の蒸留所も巡っている。



















